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アルドステロン濃度と糖尿病リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームや保育園の診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アルドステロンと糖尿病.png
2018年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、
高血圧と関連のあるホルモンであるアルドステロンの濃度と、
糖尿病との関連についての論文です。

アルドステロンは血圧を維持し、
身体の水分と塩分を保持するために、
重要な働きをしているホルモンですが、
その調節の乱れや分泌の過剰は、
身体に水分や塩分を貯留させ、
高血圧症の原因となります。

その代表的な病気は、
副腎の腺腫や過形成から、
アルドステロンが調節なく分泌される、
原発性アルドステロン症です。

さて、このアルドステロンには、
実験的にインスリン分泌を抑制したり、
インスリンの効きを悪くするような作用が、
あることが知られています。

このことからは、
アルドステロンが高いと糖尿病の発症リスクが増加する、
という可能性が示唆されます。

ただ、実際に臨床的にそうした結果が得られているかと言うと、
報告によってもその結果には違いがあり、
今のところ明確な結論には至っていません。

今回の研究では、
アメリカの動脈硬化に関する大規模な疫学データを活用して、
1570名の糖尿病のない一般住民を10年以上観察し、
糖尿病の新規発症リスクと、
血中アルドステロン濃度との関連を検証しています。
対象者はヒスパニック系、中国系、黒人、非ヒスパニック系白人と、
人種毎に解析しているのが今回の特徴です。

その結果、
血液のアルドステロン濃度が高いほど、
糖尿病の発症リスクは増加していて、
インスリン抵抗性の増加と、
インスリン分泌の低下も認められました。

ログによる解析が主体なので説明が難しいのですが、
アルドステロンが平均で80pg/mL程度と比較して、
平均で200pg/mL程度の群では、
糖尿病の発症リスクは2倍以上となっていました。
また、この関連には明確な人種差があり、
最もリスクが高いのが中国系で、
次が黒人という順になっていました。

これまでの同様のデータがあまり明確な結果を示せなかったのは、
人種差の要素を考慮していなかったためと考えられました。

この人種差の原因は明確ではありませんが、
アルドステロンの合成酵素の差や、
塩分感受性の差などが想定されています。

このように糖尿病の発症とアルドステロン濃度との間には、
一定の関連はありそうで、
今後アルドステロンを抑制することの、
糖代謝への影響を含めて、
更なる知見の蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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