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カフェインの摂取と慢性腎臓病の予後との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
カフェインと慢性腎臓病.jpg
2018年のNephrol Dial Transplant誌に掲載された、
カフェインの摂取が、
慢性腎臓病の予後に与える影響についての論文です。

2012年のNew England…の疫学論文以降、
コーヒーを適度に飲むことに健康上のメリットがあり、
各種の疾患や死亡リスクを減少させるという知見は、
ほぼ確立されたという感があります。

コーヒーに含まれているカフェインは、
短期的には血圧を上昇させますが、
慢性の投与ではむしろ血圧を降下させ、
他に含まれるクロロゲン酸などの生理活性物質には、
抗酸化作用は抗炎症作用のあることが確認され、
それが心血管疾患の予防に繋がると想定されています。

慢性腎臓病は生命予後に大きな影響を与える内臓疾患で、
その成因は高血圧や動脈硬化など、
心血管疾患ともリンクする部分がありますが、
心血管疾患の予防のための戦略が、
必ずしも慢性腎臓病の予防には繋がらない、
という複雑な側面もあります。

以前ご紹介した2018年の韓国の疫学データでは、
それほど明瞭ではないものの、
コーヒーを飲む人の方が慢性腎臓病になりにくい、
という結果が報告されています。

ただ、実際に腎機能が低下している慢性腎臓病の患者さんでも、
コーヒーがその予後に良い影響を与えるかどうかと、
コーヒーの効果がその主な生理活性物質であるカフェインによるものか、
もしくはそれ以外の成分によるものなのか、
というような点については、
まだデータは乏しいのが実際です。

そこで今回の研究では、
アメリカの大規模疫学データを活用して、
慢性腎臓病の患者さんの生命予後に与える、
カフェインの摂取量の影響を検証しています。

対象となっているのは、
推計の糸球体濾過量が15から60mL/min/1.73㎡の、
軽度から中等症の慢性腎臓病で腎機能低下のある1283名で、
食事調査からカフェインの摂取量を計算し、
それを1日28.2mg未満と28.2から103.0mg、
103.01から213.5mg、213.5mgより高用量の4群に分けて、
中央値で60か月の観察期間における、
患者さんの生命予後との関連を検証しています。

その結果、
カフェインの摂取量が最も少ない群と比較して、
2番目の群では総死亡のリスクが26%(95%CI: 0.60から0.91)、
3番目の群では26%(95%CI: 0.62から0.89)、
最も多い群では22%(95%CI: 0.62から0.98)、
それぞれ有意に低下していました。
つまり、カフェインを摂っていた方が生命予後が改善した、
という結果です。
ただ、カフェインの摂取量が多いほど、
それだけ予後が良かった、という結果にはなっていないので、
その評価はちょっと微妙です。

このように従来はあまり良くないとされていた、
腎機能低下時におけるカフェインの摂取も、
中等度の腎機能低下までのレベルで、
コーヒー1日2杯程度の量であれば、
むしろ予後改善に結び付く可能性がある、
という今回の知見は、
その有効性の評価は今後の課題としても、
コーヒー好きにはまた1つ、
嬉しい話題が増えた、とは言えそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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