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劇団チョコレートケーキ「ドキュメンタリー」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ドキュメンタリー.jpg
社会派の作風で緻密な舞台を上演し続けている、
劇団チョコレートケーキの新作公演が、
本日まで下北沢の楽園で上演されています。

これは11月に「遺産」という公演が予定されていて、
その2つの作品が交互に影響し合う、
という構成になっているようです。

この「ドキュメンタリー」は、
薬害エイズ事件を扱ったもので、
上演時間は85分ほど、
チョコレートケーキの劇団員である、
西尾友樹さん、浅井伸治さん、岡本篤さんによる、
3人芝居のスタイルです。

西尾さんが狂言回し的にフリーのジャーナリストを演じ、
浅井伸治さんがミドリ十字(劇中ではグリーン製薬)のMRを、
岡本篤さんがかつてミドリ十字に関わっていた小児科医を演じます。

メインはその小児科医の懺悔のような告白にあり、
観客と共に残りの2人のキャストは、
その話を聞く、というスタイルのシンプルな会話劇です。

これは僕も医者で、薬害エイズの時は医学部の学生でしたし、
ちょっと弱ったなあ、という感じの作品でした。

あまりに一部の情報に振り廻され過ぎではないかしら。

以下ネタバレを含む感想です。
鑑賞予定の方は鑑賞後にお読み下さい。

これは要するに731部隊の主力メンバーであった医者が、
ミドリ十字という会社を作ったので、
人体実験を平然と行うような体質が、
そこに脈々と生きていて、
それが薬害エイズ事件を生んだのだ、
そうした体質を改めなければ、
日本の医療に明日はない、
というようなお話です。

劇中ではミドリ十字の創業者である内藤良一氏(劇中では内田紘一)の、
部下であった医師を岡本さんが演じ、
その内幕を赤裸々に告白するという趣向になっています。

この医者のモデルになった人物が、
おそらくはいたのだと思われますが、
今の時点ではよく分かりません。
「ミドリ十字と731部隊」という本が参考になっているようなので、
古本で取り寄せることにしました。
ただ、まだ届いていないので未読です。

しかし、高齢の小児科医の戯れ言としても、
その台詞はあまりに酷くて、たとえば、
「小児科の開業医など、ほとんど風邪の子供しか診ないので、
楽な仕事だが、たまに診断に困るような患者がいて、
その時は解剖して内臓を見ればすぐ分かるのに、
という誘惑に駆られる(記憶違いはあるかも知れません)」
というような意味の台詞があり、
唖然とするような感じがありました。

こんなことをもし本気で発言した医者があるとすれば、
それはもう頭がおかしいだけなので、
そんな人の話をまともに聞くこと自体に、
何の意味もない、という気がします。

731部隊と薬害エイズを結びつけることに、
そもそも無理があると思うのです。
人間は急にこの世に出現するような存在ではないのですから、
こうしたことを言えば、
何だって関連のあることになってしまいます。
しかし、そうした考え方はあまりに強引ではないでしょうか。
日本の現代史をそうして単純化することは、
とても危険なことであるように思います。

薬害エイズ事件の時はもう医療には関わっていたので、
この問題についても当時の空気のようなものは知っています。
個人的には厚労省(当時は厚生省)と医師、製薬会社とが、
患者さんの生命に関わる意思決定を、
協力して行うということの難しさ、
非人間的な悪意というようなものではなく、
ことなかれ主義や無責任体質のようなものが、
その大きな部分を占めていたように、
個人的には思います。

今回の作品はあくまで次回作へのプロローグとしての側面が大きく、
731部隊の告発という意味合いが大きいのだと思いますから、
それはそれで良いと思いますが、
また是非別個の取材の元に、
出来れば「普通の」医者の意見なども聞いて頂いて、
「今の医療の問題」を、
ドラマとして取り上げて欲しいと思いました。

多分作り手の方やその情報源に、
少し偏りや誤解があるのだと思いますが、
医者という人種には多くの問題があるとは思いますが、
決してこのドラマに描かれているような性質のものでは、
それはないような気がするからです。

頑張って下さい。
応援しています。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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