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tsumazuki no ishi × 鵺的「死旗」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で、
午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
死旗.jpg
鵺的の高木登さんが台本を書き、
tsumazuki no ishiの寺十吾(じつなしさとる)さんが演出して、
両者の劇団を中心として、
多彩なキャストが顔を揃えた舞台が、
今下北沢のザ・スズナリで上演されています。

これはかなり悪趣味なので、
全ての方にお勧め出来る舞台ではありませんが、
かつての東京グランギニョールを思わせるような、
圧倒的な熱量で繰り広げられるアングラ芝居で、
よくぞ今の時代にここまでやったと、
とてもとても感銘を受けました。

アングラ芝居のお好きな方には、
絶対の贈り物です。

是非劇場に急ぐのじゃ。
見逃しては後悔しますぞ。

以下少しネタバレを含む感想です。

お話は場所も時代も特定しない、
山奥の血の濃い村の話で、
超能力を持つ盲目の長老に支配された、
略奪と強姦とカニバリズムを生業とする地獄のような部落に、
強姦され殺され食べられた女が、
忍びの村の一族であったことから、
復讐に燃える女忍びに率いられた集団と、
血で血を洗う抗争劇が繰り広げられます。

物語は死体を継ぎ合わせて作られた、
残美という人造美女が誕生する辺りから、
伝奇小説的色合いを強め、
山田風太郎的淫乱と暴力の奇想から、
ラストは町田康を思わせる血の精液の雨の中、
世界崩壊と再生の神話に着地します。

鵺的の高木登さんの世界は、
アングラ愛の集大成的な、
悪趣味上等、引用パクリ上等の、
清々しいほどに露悪的で悪趣味で過剰な世界で、
白土三平の「忍者武芸帳」から、
ハマーフィルムの「フランケンシュタイン死美人の復讐」、
山田風太郎の一連の奇想忍法帳、
町田康のパンク侍まで召喚しつつ、
ラストまで1時間40分をまとめ上げた手腕に感心します。

何より素晴らしいのは寺十吾さんの演出で、
寺十さんはアングラ演出では当代最高と思いますが、
今回はその手腕が極限まで発揮された素晴らしいもので、
凡百の演出家であれば扱い兼ねて空中分解するような素材を、
一点の緩みもなく緻密に組み上げ、
最初から醜悪な残虐場面が度肝を抜きますし、
音響やダイナミックな照明、本水などの効果で盛り上げ、
残美の場面では人外の悲しみのようなものまで、
巧みに表現しています。
こうした作品は尻つぼみになるのが通常ですが、
隠し球の夕沈さんを最後に登場させることで、
ラストの再生に繋がる葬列まで、
緩むことなく締め括った力技には、
まことに感銘を受けました。

寺十さんのこれまでのアングラ演出の、
集大成にして最高傑作と言って、
決して言い過ぎではないものだと思います。

キャストは女優陣が素晴らしく、
体当たり演技で賞賛に値する、
熟んだ果実のような川添美和さんが良いですし、
女忍びのとみやまあゆみさんの、
凜としたたたずまい、
残美という人造人間を、
アングラテイストの身体演技で演じきった、
福永マリさんと粒揃いです。

ちょっと残念だったのは、
かつて演劇実験室天井桟敷の一時期の看板であり、
アングラそのものを体現する、
跳躍する異形の肉体であった、
長老役の若松武さんが、
勿論かつての天井桟敷時代の身体演技を、
再現したくはないのでしょうが、
裏声のおとなしめのお芝居に終始していたのが、
かつての若松さんの肉体の大ファンとしては、
少し残念には感じました。
もう少し年齢無視の大暴れを、
しては頂けなかったのでしょうか?
もっと大人げない時代を召喚するような奇態を、
今のかつてを知らない若い観客達に、
見せつけては頂けなかったのでしょうか?
(失礼な表現と不遜な言葉をお許し下さい)
あと鵺的の奥野さんには、
もう少し体当たり演技が欲しかったな、
というようには感じました。
川添さんがあれだけやっているのですから、
もう少し踏ん張っては頂けなかったのでしょうか?
(これも失礼をお許し下さい)

いずれにしても、
「よくぞやったり」の素晴らしいアングラ芝居で、
よもやこれだけの物が今の時代に観られるとは、
想像もしなかった嬉しい誤算でした。

こうしたものがお好きな方には、
絶対のお薦めです。

アングラ万歳!

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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