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禁煙による体重増加と糖尿病発症リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
禁煙後の体重増加と糖尿病リスク.jpg
2018年のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
禁煙に伴う体重増加のリスクについての論文です。

喫煙者が禁煙をすることが、
その後の心血管疾患リスクや癌のリスクを低下させ、
生命予後にも良い影響を与えることは、
これはもう間違いのない事実です。

ただ、禁煙はその後一時的に食欲を増加させ、
体重増加を高率に来すという現象があります。

肥満は内臓脂肪の増加に繋がり、
糖尿病のリスクも増加させます。

それでは、禁煙後に体重が増加することで、
禁煙の健康上のメリットも、
相殺されてしまうのでしょうか?

この点については2013年のJAMA誌にそれについての研究があり、
それによると、
禁煙によりその後の脳卒中や心筋梗塞のリスクを、
半分程度に減らす効果が期待出来るが、
体重が禁煙後に5キロ以上増加すると、
その効果はほぼ相殺されてしまう、
という結果になっていました。

今回の研究は別個の目的で施行された、
アメリカの3つの疫学データを活用することで、
これまでのデータより大規模かつ長期の経過観察期間における、
禁煙とその後の体重増加、
そして糖尿病や生命予後との関連を検証しています。

対象となっているのは、
糖尿病の発症リスクの解析においては162807名、
生命予後の解析においては170723名で、
喫煙の状態をグループ分けすると共に、
禁煙した対象者においては、
禁煙の期間と、
禁煙後の体重の変化を、
5キロ刻みで比較検証しています。
観察期間は平均で19.6年です。

その結果、
喫煙群と比較して禁煙群では、
その後の2型糖尿病の発症リスクは、
1.22倍(95%CI: 1.12から1.32)有意に増加していました。

これを時間経過から見てみると、
禁煙後5から7年で糖尿病の発症リスクはピークとなり、
その後は低下に転じています。
禁煙後の体重増加の大きさで見てみると、
禁煙後に体重が増加していない群では、
糖尿病のリスクの増加はなく、
体重増加が5キロを超えると顕在化していました。
この点は2013年のデータとほぼ同一の傾向です。

ただ、総死亡のリスクで見ると、
禁煙後の体重増加の程度に関わらず、
喫煙群と比較して禁煙群では総死亡のリスクは有意に低下していて、
心血管疾患による死亡のリスクについても、
同様の傾向が認められました。

このように今回の結果においては、
禁煙後の体重増加は、
禁煙後数年の糖尿病の発症リスクと関連がありましたが、
それは禁煙による生命予後の改善に大きな影響を与えるものではなく、
勿論禁煙後に体重が増加しないように、
生活改善の努力を行うことは重要ですが、
仮に体重増加が認められたとしても、
それで禁煙の生命予後への効果が、
相殺されるということはないと、
そう考えて大きな間違いはないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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