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「ペンギン・ハイウェイ」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前中は代診の医師が、
午後2時以降は院長の石原が担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
ペンギン・ハイウェイ.jpg
森見登美彦さんの傑作ジュブナイルSF「ペンギン・ハイウェイ」が、
スタジオコロリドの初めての長編アニメーションとして映画化され、
今ロードショー公開されています。

本好きの方は勿論ご承知だと思いますが、
森見登美彦さんの「ペンギン・ハイウェイ」は、
ちょっと奇跡的な大傑作です。

森見さんの小説は「夜は短し歩けよ乙女」のような、
擬古典と言った雰囲気の大学生青春小説が多いのですが、
古典のパロディを、
パロディと言えないほどの完成度で、
仕上げられるという異能の人でもあります。

「ペンギン・ハイウェイ」は、
言ってみれば昔日本SFの黎明期に量産された、
「時をかける少女」や「なぞの転校生」などの、
ジュブナイルSFの世界を復活させたものですが、
極めて見事に現代的にブラッシュアップされていて、
完成度が高く惚れ惚れするような素晴らしい作品に仕上がっています。

話はまあ「マックウィーンの絶対の危機(ブロブ)」みたいなものですから、
今更なあ、という感じのするものなのですが、
生意気でこまっしゃくれた小学4年生を主人公にして、
徹頭徹尾子供視点で物語を完結させることで、
ある種の新鮮みを付加している点が上手いのです。

普通、ジュブナイルSFというと、
後半になって大人の科学者や宇宙人や未来人が出て来て、
そうした大人が解説したり説明するような展開が定番でしょ。
この作品はそうではないんですよね。
主人公が自分の価値感と思考とで事件を解決し、
大人や人間ならざるものは、
真実を知ることもそれを語ることも出来ないのです。
このことによって、
ある意味月並みな真相が、
魔法のように新鮮さをまとうのです。
とても感心しました。

今回のアニメ映画化は、
ヨーロッパ企画の上田誠さんが脚色に当たっています。
上田さんもこうした仕掛けのおある話の、
辻褄を合わせることが得意なので、
なかなか完成度の高い台本になっていたと思います。
ほぼ原作に忠実ですが、
少し変えたりはしょったりした部分があり、
それが整合性を持って合理的に構成されているのです。
これは悪くありませんでした。

ただ、映像のクオリティは、
ジブリ作品や新海誠作品、
細田守作品と比較すると、
正直かなり落ちるもので、
完成度が今ひとつであることと共に、
作家性が弱いように感じました。
ラストは原作とは異なり、
時空の裂け目の向こう側が、
人間社会の破滅した未来であるようですが、
そういうことなら何でもありの想像力全開の世界ですから、
もっとアニメならではの、
スケールの大きな表現が欲しかったと思います。

こんな言い方は失礼かとは思いますが、
今公開中の凡作「未来のミライ」と、
映像とストーリーを入れ替えたら、
素晴らしい作品になったのにな、
とそんなことを考えてしまいました。

ペンギンの集団などもの凄く安っぽいですし、
怪物の描写も酷いですよね。
主人公の恋するお姉さんと、
母親のビジュアルが殆ど違わないのもガッカリでした。

このようにかなり落胆する映画でしたが、
それでも原作をリスペクトする姿勢は随所にあり、
ラストは結構うるっとは来てしまいました。

この原作はもう一度、
ベストの態勢でリメイクして欲しいですね。
あの傑作がこれでは…
ちょっと残念過ぎるのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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