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高齢者の原発性アルドステロン症の特徴 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
高齢者の原発性アルドステロン症の特徴.jpg
2018年のthe Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌に掲載された、
診断の時点で65歳を超えていた高齢の原発性アルドステロン症の、
特徴についての日本の研究者による論文です。

これはJPAS(Japan Primary Aldosteronism Study)と呼ばれる、
日本の原発性アルドステロン症についての、
多施設共同研究の結果の1つとして発表されているものです。

原発性アルドステロン症というのは、
副腎の腺腫もしくは過形成によって、
水や塩分を身体に保持する役割のある、
アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されて、
それにより血圧が上昇し、
血液のカリウム濃度が低下するという病気です。

以前は稀な病気と考えられていましたが、
最近では高血圧の患者さんに、
簡単なスクリーニングの血液検査が、
各種のガイドラインで推奨されるようになり、
実際には多くの患者さんがいることが分かって来ました。

原発性アルドステロン症の治療は、
片側の腺腫であれば手術による治療が、
両側の過形成であればアルドステロン拮抗薬などの薬物療法が、
通常は行われています。

原発性アルドステロン症についての問題の1つは、
高齢者とそうでない場合とで、
病気の性質や治療後の予後に差がないのかどうか、
ということです。

高齢者では腎機能が低下している場合が多く、
それが治療の予後に影響を与える可能性がありますが、
そうした点についてはこれまで、
あまりまとまった検証が行われていませんでした。

そこで今回の研究では、
この病気の患者を65歳以上の高齢者と、
65歳未満とに分け、臨床的な違いを比較検証しています。

対象となっているのは、
日本全国の28の専門施設で、
原発性アルドステロン症と診断された1902名で、
それを診断時の年齢で65歳以上の411名と、
65歳未満の1691名に分け、
その臨床的な特徴と、
治療の予後を比較しています。

原発性アルドステロン症の原因が、
片側の腺腫であるか両側の過形成であるかの比率は、
高齢群でも若年群でも違いはありませんでした。
片側の副腎摘出術後、
アルドステロン値などが正常化する生化学的治癒率は、
65歳未満が74%に対して65歳以上が68%で、
有意な差はありませんでした。
一方で手術後血圧が正常化して降圧剤などの治療が不要となる、
臨床的な治癒率は、
65歳未満が36%に対して65歳以上では18%で、
これは有意な差をもって高齢者で低くなっていました。

また、手術後に新たに腎機能低下(ステージ3b以上)を発症する頻度は、
65歳未満が12%に対して65歳以上が27%、
手術後に新たに高カリウム血症を発症する頻度は、
65歳未満が5%に対して65歳以上が15%で、
いずれも高齢者で多くなっていました。

つまり、
高齢者で診断される原発性アルドステロン症は、
片側の腺腫と診断された手術がなされても、
血圧が正常化して投薬が不要となる確率は低く、
その一方で術後の腎機能低下や高カリウム血症などの、
有害事象が発症するリスクは高い、
ということになります。

従って今回の結果からは、
高齢者の原発性アルドステロン症の手術治療は、
若年者より慎重にその適応を判断する必要があると、
そう考えるのが適切であるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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