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谷賢一「1961年:夜に昇る太陽」(福島三部作・第一部) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は土曜日で午前午後とも、
石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
1961夜に昇る太陽.jpg
劇団DULL-COLORED POPが、
2年間の緻密な取材を元に、
福島原発事故に至った福島県双葉町の歴史を、
福島三部作として描くシリーズの第一作が、
今こまばアゴラ劇場で上演されています。

これはなかなか気合いの入った作品で、
内容の細部には首肯しかねる部分もあるのですが、
トータルにはとても感心しましたし、
ラストには胸の熱くなるような思いを受け取りました。

双葉町の町長を勤めることになる一家の物語で、
今回上演された第一作は、
双葉町の議会で原発の誘致が決定された、
1961年の出来事が描かれ、
今後上演される第二作は1986年が、
そして第三作では2011年が描かれる予定とのことです。

始まりでは福島に向かう列車の車中で、
東電の誘致担当者の男が、
科学者を志す里帰り途中の東大生と、
故郷と日本の未来についての対話をします。
それがスムースに物語に繋がり象徴的な意味を持つ辺り、
構成が極めて巧みです。

その後は子役を、
その父親や大人になった本人が、
人形劇で二役で演じるという、
児童劇風の趣向が導入されます。

ここは好みが分かれるところで、
演出にメリハリが付いて面白い反面、
もっと抑制的な演出でリアルであっても、
良かったのではないかとも思えます。

子役を芝居で登場させると、
通常は大人が演じますから、
かなり違和感のある感じにはなります。
この演出はそれを回避しているのです。
また、ずっと主役の1人である子供を演じていた黒子が、
ラストでその人物の大人になった姿を、
2011年に演じるというような趣向を見ると、
なるほどという感じはあるのですが、
その一方で人形を投げて笑わしたり、
2役の切り替えをそのまま見せて、
慌てるのをギャグにしたりするのは、
大して面白くもありませんし、
いささかやり過ぎで、
舞台自体の格を下げてしまったと感じました。

物語は東京の大学に行って、
地元と決別するために戻って来た一家の長男を主軸に展開し、
そこではからずも、
原発の誘致における、
決定的な瞬間に立ち会うことになります。
東電の担当者を演じた青年団の古屋隆太さんの見事な演技もあって、
この場面は凄みと迫力がありました。
ただ、締め括りに一家の長老が大学生に向い、
「お前は反対しなかった」
と3回異常に力んで繰り返すのは、
いくら何でもくど過ぎる、
とは感じました。

この台詞がとても重要であることは分かりますが、
真面目に舞台を観ている観客であれば、
それは1回言われれば分かります。
それを執拗に繰り返すのは、
よりテーマを強調しているようで、
却って逆効果ではないかと感じました。
終わりの2回を正面を向き、
観客に対して繰り返すのも、
「お前は何様だよ」
とちょっと感じてしまうのです。
観客に訴えたい熱意は分かりますが、
こうした部分こそ抑制的にした方が、
より観客の心に届くのではないでしょうか?

総じて、
場面のおしりが長く、
対話の台詞がどれも長すぎるのが、
このお芝居の一番の欠点で、
言いたいことが沢山あるのは分かるのですが、
それを敢えて8割くらいにして、
おしりの2割をカットした方が、
観客により感銘を与える作品に、
なったのではないかと思います。
その言外の2割を想像する方が、
最初から全部言われるより、
より心に響き、
忘れがたく心に刻まれるのではないでしょうか?

いずれにしても力感溢れる快作で、
小劇場的な演出と演技の過剰さは、
やや空回りしている感はあるものの、
その緻密な取材にも頭が下がりますし、
純粋に感動する1本となっていました。
そして、何より改めて福島の悲劇について、
一体誰が何処で何を間違ったのかと、
深く考えさせる作品となっていました。

これからの2部、3部も本当に楽しみです。

頑張って下さい。応援しています。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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