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アルツハイマー病にアスピリンが有効なメカニズム(2018年動物実験) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アスピリンのアルツハイマー病への有効性.jpg
2018年のthe Journal of Neuroscience誌に掲載された、
低用量のアスピリンがアルツハイマー病の治療に有効なのではないか、
という仮説を動物実験で検証した論文です。

まだ、これでアスピリンの有効性が確認された、
というレベルのものではありませんが、
これまでにないメカニズムを提唱したユニークな論文です。

アルツハイマー病では、
アミロイドβという異常な構造の蛋白質が、
脳の神経細胞に沈着し、
それが病因そのものであるかどうかについては、
まだ議論のあるところですが、
アミロイドβの沈着の程度が、
その病状の進行と一致していることは間違いがありません。

そして、研究はされていますが、
現状このアミロイドβの沈着を、
予防したり改善したりする、
確実は治療法はまだ開発されていません。

アルツハイマー病の進行予防に有効であったと、
報告されている薬剤は幾つかあり、
そのうちの1つが低用量のアスピリンです。

低用量のアスピリンには、
血小板のシクロオキシゲナーゼを阻害して、
血小板の働きを弱め、
炎症を抑えて、
心筋梗塞や脳卒中などの再発予防や、
腺癌の転移の予防などに有効であることが確認されています。

このアスピリンがアルツハイマー病のリスクを低下させた、
という複数の報告があり、
一般的にはその抗炎症作用や、
脳梗塞の予防効果などが、
そのリスクの低下に関連していると考えられています。

しかし、上記文献の著者らは、
シクロオキシゲナーゼの阻害とは別のメカニズムで、
低用量のアスピリンがアルツハイマー病に有効ではないか、
という仮説の元にネズミによる動物実験を行っています。

その結果、
アスピリンの刺激により、
脳においてPPARαという転写因子が活性化し、
それがTFEBという遺伝子の発現を介して、
細胞内の老廃物を除去する働きを持つ、
リソゾームの合成を高めることにより、
アミロイドβの除去に働くことが確認されました。

また、
実際に体重1キロ当り2ミリグラムのアスピリンを、
ネズミに継続的に摂取させたところ、
脳神経細胞のアミロイドβが有意に減少したことが確認されました。

これはあくまで動物実験の結果である上に、
臨床的に認知症の症状の改善が確認された訳ではありませんが、
今回低用量のアスピリンにより、
これまで想定されていたのとは別個のメカニズムにより、
認知症の進行予防効果が期待される効果の得られたことは、
大変興味深く、
今後の人間における検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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