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利尿剤のメラノーマ発症リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
メラノーマと利尿剤.jpg
2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
サイアザイドという利尿剤による、
メラノーマという皮膚癌の発症リスクの増加についてのレターです。

サイアザイド系利尿剤は、
今使用されている薬としては、
ヒドロクロロチアジドや、
トリクロルメチアジド(商品名フルイトラン)などがあり、
近位尿細管のナトリウムポンプに働いて、
水とナトリウムの排泄を促進することが主な作用の薬です。

最も古い降圧剤であり。
その降圧作用と心血管疾患の予防効果は、
これまでの多くのデータにより確立されています。

ただ、その利尿剤としての性質から、
脱水や尿酸値の上昇、血糖値の上昇など、
複数の副作用や有害事象のある薬でもあります。

それ以外に明確な機序は不明ですが、
有害事象として報告されているのが、
この薬を長期連用した場合の、
皮膚の悪性腫瘍の発症リスクの増加です。

サイアザイド系利尿剤には、
光線過敏という副作用のあることが知られていて、
それにより起こる皮膚の炎症やダメージが、
そのメカニズムの1つではないかと推測されています。

これまでに、
ヒドロクロロチアジドの使用により、
唇の癌やメラノーマ以外の皮膚癌のリスクが、
増加するという報告があります。

今回の研究はデンマークの医療データを活用して、
19273名の新規に診断されたメラノーマ(悪性黒色腫)の事例を、
年齢や性別などをマッチさせた、
癌を発症していない192730名のコントロールと1対10で比較して、
ヒドロクロロチアジドの使用と、
メラノーマの新規発症との関連を検証しています。

その結果、
ヒドロクロロチアジドの累積の使用量が50000mg以上の場合、
未使用と比較してメラノーマの発症リスクは、
1.22倍(95%CI: 1.09 から1.36)有意に増加していました。
ただ、累積の使用量毎に分類して比較しても、
明確に用量が多いほどメラノーマのリスクが高い、
という用量依存性は確認されませんでした。

メラノーマの種類による解析では、
表在拡大型黒色腫と比較して、
結節型黒色腫と悪性黒子型黒色腫において、
ヒドロクロロチアジドとの関連は、
より強い傾向が認められました。

今回の結果は微妙なもので、
サイアザイド系利尿剤がメラノーマのリスクであるとは、
にわかに断定することは出来ませんが、
当該薬剤の治療中には皮膚炎などの発症に気をつけ、
紫外線をなるべく浴びないように、
留意することが重要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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ひでほ

アルダクトンとラシックスのんでいるので検索しちゃいました。ほっ。むかし胃腸薬でしたっけ?プロトポンプ阻害薬?うる覚え。認知に影響とかの可能性とかでやめたんですが、あいかわらずあほだし、胃カメラのんだらびらんがすごくて復活しちゃいました。認知恐怖症っていうやつでしょうか。恐ろしくて恐ろしくて・・・またそういう情報期待です。
by ひでほ (2018-06-13 15:18) 

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