SSブログ

アトピー性皮膚炎と心血管疾患リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
アトピー性皮膚炎と心血管疾患リスク.jpg
2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
アトピー性皮膚炎と心血管疾患リスクについての論文です。

アトピー性皮膚炎は、
アレルギー素因(アトピー素因)を元に発症する皮膚の炎症で、
皮膚のバリア機能の低下と、
免疫機能の低下を伴います。
世界的には成人の1割に達するほどその罹患者は多く、
しかも増加を続けているとされています。

アトピー性皮膚炎による全身の皮膚の炎症性変化は、
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の、
発症リスクにもなるのではないか、
という見解があり、
実際にそうしたことを示唆する疫学データも、
これまでに複数報告されています。
ただ、データによってもそのリスクにはばらつきがかなりあり、
アトピー性皮膚炎の重症度などが、
データに反映されていないという批判がありました。

そこで今回の研究では、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
成人のアトピー性皮膚炎の患者さんを、
年齢、性別、全身状態などをマッチさせたコントロールと比較して、
アトピー性皮膚炎の重症度と心血管疾患リスクとの関連を検証しています。

この場合のアトピー性皮膚炎の重症度というのは、
強力なステロイドを長期間処方されているなどの、
診断や入院、処方のデータを元にして分類されています。

387439名のアトピー性皮膚炎の患者さんを、
1528477名のコントロールと比較して解析したところ、
中間値で5.1年の観察期間において、
10から20%の有意な心血管疾患の発症リスクの増加が、
アトピー性皮膚炎の患者さんでは認められました。

この心血管疾患リスクはアトピー性皮膚炎の重症度と関連していて、
重症のアトピー性皮膚炎の患者さんでは、
脳卒中のリスクが1.22倍(95%CI; 1.01から1.48)、
心筋梗塞や不安定狭心症、心房細動、心血管疾患による死亡のリスクは、
いずれも相対リスクで40から50%増加していて、
心不全のリスクは1.69倍(95%CI: 1.38から2.06)と有意に増加していました。
他の心血管疾患のリスクで補正すると、
そのリスクは小さなものにはなりましたが、
矢張り重症のアトピー性皮膚炎については、
有意なリスクの増加が認められていました。

このように、
アトピー性皮膚炎が少なからず心血管疾患と関連している、
というのはほぼ間違いのない事実で、
今後はその治療やコントロール状況が、
そのリスクにどのような影響を与えているのか、
心血管疾患の予防をどう考えるべきなのかに、
その関心は移りつつあるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(8)  コメント(0) 

nice! 8

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。