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大腸癌の治癒切除後のフォローアップ間隔と予後 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
大腸癌の手術後の経過観察の頻度.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
大腸癌の治癒切除後のフォローアップの頻度についての論文です。

大腸癌の患者さんの3分の2は、
癌が固有筋層を超える進行癌ではあるものの、
遠隔転移はないⅡ期もしくはⅢ期の癌です。

Ⅱ期もしくはⅢ期の大腸癌の多くは、
治癒切除が可能ですが、
切除後の再発も稀ではないため、
定期的な検査などによるフォローアップが行われます。

ただ、
そのフォローアップをどの程度の間隔で、
どのような検査を組み合わせて行うことが、
最も有効であるのか、
というような点については、
国や地域によっても考え方は様々で、
世界的にスタンダードな方法が、
決められているという訳ではありません。

そこで今回の研究では、
1から2年に一度というフォローアップと、
半年に一度というより頻回の経過観察とを比較して、
その予後に与える影響を比較検証しています。

対象はスウェーデン、デンマーク、ウルグアイの24の専門施設で、
Ⅱ期もしくはⅢ期の大腸癌で治癒切除を受けた、
2509名の患者さんで、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は術後6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、36ヶ月で、
腫瘍マーカーのCEAと胸腹部のCT検査を施行し、
もう一方は同様の検査を、
12ヶ月と36ヶ月でのみ行います。
そして、術後5年の時点での両者の予後を比較するのです。

その結果、
患者さんの5年の時点の死亡率は、
2回のみの検査で14.1%、5回の検査で13.0%で、
有意は差は認められませんでした。
大腸癌による死亡リスクでみても、
2回のみの検査で11.4%、5回の検査で10.6%と、
これも統計的な差は認められませんでした。
その間の大腸癌の再発率は、
2回のみの検査群で19.4%、5回の検査群で21.6%と、
これも殆ど差はありませんでした。

このように、
治癒切除後であっても、
5年で2割の患者さんは再発している訳ですから、
術後の経過観察の必要性は間違いがないのですが、
通常の検査を間隔を詰めて行っても、
結果としては再発率や生命予後には、
差は認められませんでした。

この問題は必ずしも統計的な差のみで、
決定出来るような事項ではないと思いますが、
検査の内容など、
今後より多角的な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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