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単純性尿路感染症の推奨薬剤の効果比較 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ニトロフラントインとホスミシンの比較.jpg
2018年のJAMA誌に掲載された、
現行の海外のガイドラインの、
単純性尿路感染症の第一選択の薬剤同士を比較して、
その効果を検証した論文です。

多くの抗菌剤が効かない耐性菌の問題などのために、
抗菌剤の使用を減らそうという動きが、
世界的に加速しています。

重篤な感染症ではなくて、
抗菌剤が適応となっている病気というと、
溶連菌感染による急性の扁桃炎と、
単純性尿路感染症(膀胱炎)がその代表です。

女性は尿道が短いなどの構造的な理由があって、
男性よりも膀胱炎を起こし易いので、
女性の膀胱炎に対する抗菌剤の使用は、
短期間であれば必要な処方であると考えられます。
現行の国際的なガイドラインにおいて、
単純性尿路感染症の第一選択の治療薬剤は、
ホスホマイシンとニトロフラントインです。

この2種類の抗菌剤はいずれも古い薬ですが、
効果が通常の尿路感染の病原体などに限定されていて、
耐性菌の誘導を起こし難いと考えられていることから、
こうしたチョイスになっているのです。

ホスホマイシンは日本でも使用可能な薬ですが、
ニトロフラントインは日本未発売の薬です。

抗菌剤はむしろ古い薬の方が有用性が高いのですが、
日本においては製薬会社が新薬を出すと、
同様の効能の古い薬は販売しない流れになるので、
本当に有用性の高い薬の多くが、
日本では流通していない、
というような皮肉な事態となっているのです。

医学は進歩しているので、
新しく出る薬の方がより優れた薬の筈だ、
という誤った進歩史観が、
こうした歪んだ現状を生んでいるように、
個人的には思います。

話を戻します。

国際的ガイドラインで第一選択とされている、
ホスホマイシンとニトロフラントインですが、
より有用性が高いのはどちらの薬剤でしょうか?

いずれも古い薬で、
その臨床データの多くも古いものなので、
その直接比較をしたようなデータは、
実際には殆ど存在していません。

そこで今回の研究では、
スイス、ポーランド、イスラエルにおいて、
18歳以上の妊娠していない女性で、
単純性膀胱炎の患者さんトータル513名をくじ引きで2群に分け、
一方はニトロフラントインを1日300ミリグラム(分3)で5日間、
他方はホスホマイシン3グラムを1回のみ使用し、
その有効性を開始後14日と28日の時点で比較検証しています。

その結果28日の時点で治癒していたのは、
ニトロフラントイン群では244人中70%の171名、
ホスホマイシン群では241人中58%の139名で、
ニトロフラントインの効果が勝っていたことが確認されました。

細菌培養で菌が検出されなくなった治癒率も、
ニトロフラントイン群が74%に対して、
ホスホマイシン群では63%で、
これもニトロフラントインに軍配が上がっています。

有害事象はいずれの薬も消化器症状が少数のみで、
明らかな違いは認められませんでした。

このように今回の直接比較の試験では、
ホスホマイシンよりニトロフラントインの有用性が、
確認されているのですが、
この第一選択の薬剤が日本では、
ネット通販で買うより他に方法がない、
という事態になっているのは、
これはもう臨床医の端くれとしては、
情けない思いしか感じることが出来ないのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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内分泌代謝内科12年目くらい@静岡

ご存知かもしれませんが、この論文で使われているホスホマイシンはfosfomycin tromethamineでバイオアベイラビリティが40%ほど。一方、日本で使われているホスホマイシンCa水和物は12%なので、更に低い効果しか期待できないんだと思います…。
by 内分泌代謝内科12年目くらい@静岡 (2018-08-28 19:02) 

fujiki

内分泌代謝内科12年くらい@静岡さんへ
それは知りませんでした。
貴重な情報ありがとうございます。
また何かありましたらご指摘頂ければ幸いです。
今後ともよろしくお願いします。
by fujiki (2018-08-29 08:41) 

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