コーヒーと急性心筋梗塞リスクについて [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2006年のJAMA誌に掲載された、
コーヒーと急性心筋梗塞との関連を、
カフェインの代謝酵素の個人差で検証した論文です。
今週はちょっと事情があって、
コーヒーと過敏性腸症候群以外の記事は多分ありません。
コーヒーが総死亡のリスクや、
心血管疾患のリスクを減少させるという知見は、
疫学データとしてはほぼ確立された感がありますが、
一昔前まではコーヒーは心血管疾患、
特に虚血性心疾患のリスクを増加させる、
という考え方が一般的でした。
コーヒーに含まれる生理活性物質の代表であるカフェインは、
交感神経の刺激作用があり、
血圧も短期的には上昇させますし、
不整脈の誘発作用などもあって、
心臓には良くないという考え方があったからです。
実際にコーヒーを沢山飲むと急性心筋梗塞のリスクが増加する、
という疫学データも複数存在していました。
ただ、その一方で有意な関連はない、
というデータもまた複数存在していたのです。
コーヒーは心臓に良いのでしょうか、悪いのでしょうか?
コーヒーに含まれているカフェインが問題であるとすると、
体内に入ったカフェインは、
肝臓でCYP1A2という酵素により代謝を受けますが、
その酵素には幾つかのタイプがあって、
活性型の変異があればカフェインの代謝は促進され、
逆に活性の低下した変異があれば、
カフェインの代謝は抑えられて、
それだけカフェインの血液濃度は増加する、
ということになります。
つまり、同じ量のコーヒーを飲んでいても、
それによるカフェイン濃度の増加の程度は、
酵素活性のタイプによって大きく異なるという可能性があるのです。
今回の研究はコスタリカの住民を対象としたものですが、
初回の非致死性急性心筋梗塞を起こした2014例を、
年齢性別などをマッチさせた2014例のコントロールと比較して、
コーヒーの摂取量とCYP1A2のタイプとに分けて解析を行っています。
その結果、
心筋梗塞を起こした事例の54%は、
カフェインの代謝酵素が低活性型で、
低活性型の対象者のみを解析すると、
コーヒーを多く飲むほど心筋梗塞の新規発症リスクは増加していました。
コーヒーの摂取量が1日1杯未満と比較して、
4杯以上飲む人は心筋梗塞のリスクが、
1.64倍(95%CI: 1.14 から2.34)有意に増加していました。
しかし、これを高活性型の変異を持つ対象者のみで解析すると、
そうした有意なリスクの増加は見られませんでした。
つまり、
1日に3から4杯程度のコーヒーでリスクが増加するのは、
カフェイン濃度が増加しやすい低活性型の変異を持つ人に、
限った現象である可能性が高い、
という結果です。
最近では心血管疾患のリスクも、
コーヒーを飲む人の方がむしろ低下する、
という報告が多いのですが、
酵素活性の程度によってはそうでない可能性もあり、
こうした個人差にも、
充分注意を払う必要があることを示した点で、
意義のある結果であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2006年のJAMA誌に掲載された、
コーヒーと急性心筋梗塞との関連を、
カフェインの代謝酵素の個人差で検証した論文です。
今週はちょっと事情があって、
コーヒーと過敏性腸症候群以外の記事は多分ありません。
コーヒーが総死亡のリスクや、
心血管疾患のリスクを減少させるという知見は、
疫学データとしてはほぼ確立された感がありますが、
一昔前まではコーヒーは心血管疾患、
特に虚血性心疾患のリスクを増加させる、
という考え方が一般的でした。
コーヒーに含まれる生理活性物質の代表であるカフェインは、
交感神経の刺激作用があり、
血圧も短期的には上昇させますし、
不整脈の誘発作用などもあって、
心臓には良くないという考え方があったからです。
実際にコーヒーを沢山飲むと急性心筋梗塞のリスクが増加する、
という疫学データも複数存在していました。
ただ、その一方で有意な関連はない、
というデータもまた複数存在していたのです。
コーヒーは心臓に良いのでしょうか、悪いのでしょうか?
コーヒーに含まれているカフェインが問題であるとすると、
体内に入ったカフェインは、
肝臓でCYP1A2という酵素により代謝を受けますが、
その酵素には幾つかのタイプがあって、
活性型の変異があればカフェインの代謝は促進され、
逆に活性の低下した変異があれば、
カフェインの代謝は抑えられて、
それだけカフェインの血液濃度は増加する、
ということになります。
つまり、同じ量のコーヒーを飲んでいても、
それによるカフェイン濃度の増加の程度は、
酵素活性のタイプによって大きく異なるという可能性があるのです。
今回の研究はコスタリカの住民を対象としたものですが、
初回の非致死性急性心筋梗塞を起こした2014例を、
年齢性別などをマッチさせた2014例のコントロールと比較して、
コーヒーの摂取量とCYP1A2のタイプとに分けて解析を行っています。
その結果、
心筋梗塞を起こした事例の54%は、
カフェインの代謝酵素が低活性型で、
低活性型の対象者のみを解析すると、
コーヒーを多く飲むほど心筋梗塞の新規発症リスクは増加していました。
コーヒーの摂取量が1日1杯未満と比較して、
4杯以上飲む人は心筋梗塞のリスクが、
1.64倍(95%CI: 1.14 から2.34)有意に増加していました。
しかし、これを高活性型の変異を持つ対象者のみで解析すると、
そうした有意なリスクの増加は見られませんでした。
つまり、
1日に3から4杯程度のコーヒーでリスクが増加するのは、
カフェイン濃度が増加しやすい低活性型の変異を持つ人に、
限った現象である可能性が高い、
という結果です。
最近では心血管疾患のリスクも、
コーヒーを飲む人の方がむしろ低下する、
という報告が多いのですが、
酵素活性の程度によってはそうでない可能性もあり、
こうした個人差にも、
充分注意を払う必要があることを示した点で、
意義のある結果であるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2018-04-16 07:58
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