「ラッキー」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
90歳の1人暮らしの男の日常を、
淡々と綴った侘び寂び系の映画、
「ラッキー」を観て来ました。
「パリ・テキサス」が印象深く、
数多くの映画に脇役として出演した、
実際に90歳のハリー・ディーン・スタントンが主役で、
監督はこちらも名脇役として、
多くの映画に出演しているジョン・キャロル・リンチが、
初のメガホンを握っています。
更にはデビット・リンチ監督が、
役者として重要な役を演じている、
というおまけも付いています。
内容はジャームッシュの名作で、
2017年の私的ベストワン映画「パターソン」に良く似た構成で、
何気ない主人公の日常を、
繰り返しジャズのセッションのように描き、
それが微妙にアドリブのような変化を見せて、
印象的なクライマックスに至り、
主人公の心が大きく変化するのですが、
ラストは再び同じ日常の繰り返しに戻る、
という物語です。
「パターソン」に描かれた地方都市も印象的でしたが、
今回は西部劇の舞台のようなアメリカ西部の砂漠で、
朝の自宅の体操と一杯の牛乳から始まって、
行きつけのコーヒーショップ、
牛乳を買う店、行きつけのバーを、
順繰りに巡るだけの日常が繰り返されます。
ただ、人間ですから当然その繰り返しにも終わりがある訳で、
ある事件から主人公はその「終わり」が近いことを感じ、
そこから日常は変わらないながらも、
「人生の最後」への考察が始まるのです。
この辺はテーマ的にはウディ・アレンの、
「ハンナとその姉妹」に似ています。
あの映画でも主人公がひょんなことから、
人生の虚しさに気付いて葛藤を繰り広げるのですが、
ラストはマルクス兄弟の古いコメディを見て、
「生きることを笑おう」というある種の悟りに至ります。
そしてこの「ラッキー」でも、
主人公は色々の葛藤の末に、
「生きることは無だ。だから笑おう」
という結論に至ります。
どうなのかなあ…
個人的には如何にもステレオタイプで薄っぺらな感じがして、
この結論にはあまり乗れませんでした。
何処かのCMみたいでしょう?
悪い映画ではないと思うのです。
構成も緻密に出来ていますし、
主人公はとても魅力的で、
取り巻く個性的な町の人も良いですよね。
映像も美しいですし、キャメラと音効も素敵です。
ずっと仏頂面のおじいさんが最後に笑うんですから、
上手く手来ていますよね。
「赤い部屋」とか、
ちょこっとデビット・リンチ的な世界が、
アクセント程度に添えてあるのも良いのです。
ただ、もう少し周辺にドラマがあっても良いかな、
と個人的には思いました。
途中のパーティーの歌は、
勿論良いと感じる人がいることは分かるのですが、
ちょっと牧歌的過ぎて蛇足に感じましたし、
結局最終ヒントは日本兵と戦った思い出ですか…
ということになると、
少し切ない気分になるのです。
まあ、仕方ないのですけどね。
ディテールは非常にアメリカ的なので、
映画館で1回で全て理解するのは難しいとも感じました。
またテレビ画面で見かえすと、
印象は変わるかも知れません。
そんな訳で個人的にはそれほど乗れなかったのですが、
鑑賞する価値は充分にある、
非常に個性的で美しい映画だと思います。
「パリ・テキサス」の好きな方には、
確かに交互に観るととても味わいが深いのです。
人生の放浪を詩的に感じさせます。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
90歳の1人暮らしの男の日常を、
淡々と綴った侘び寂び系の映画、
「ラッキー」を観て来ました。
「パリ・テキサス」が印象深く、
数多くの映画に脇役として出演した、
実際に90歳のハリー・ディーン・スタントンが主役で、
監督はこちらも名脇役として、
多くの映画に出演しているジョン・キャロル・リンチが、
初のメガホンを握っています。
更にはデビット・リンチ監督が、
役者として重要な役を演じている、
というおまけも付いています。
内容はジャームッシュの名作で、
2017年の私的ベストワン映画「パターソン」に良く似た構成で、
何気ない主人公の日常を、
繰り返しジャズのセッションのように描き、
それが微妙にアドリブのような変化を見せて、
印象的なクライマックスに至り、
主人公の心が大きく変化するのですが、
ラストは再び同じ日常の繰り返しに戻る、
という物語です。
「パターソン」に描かれた地方都市も印象的でしたが、
今回は西部劇の舞台のようなアメリカ西部の砂漠で、
朝の自宅の体操と一杯の牛乳から始まって、
行きつけのコーヒーショップ、
牛乳を買う店、行きつけのバーを、
順繰りに巡るだけの日常が繰り返されます。
ただ、人間ですから当然その繰り返しにも終わりがある訳で、
ある事件から主人公はその「終わり」が近いことを感じ、
そこから日常は変わらないながらも、
「人生の最後」への考察が始まるのです。
この辺はテーマ的にはウディ・アレンの、
「ハンナとその姉妹」に似ています。
あの映画でも主人公がひょんなことから、
人生の虚しさに気付いて葛藤を繰り広げるのですが、
ラストはマルクス兄弟の古いコメディを見て、
「生きることを笑おう」というある種の悟りに至ります。
そしてこの「ラッキー」でも、
主人公は色々の葛藤の末に、
「生きることは無だ。だから笑おう」
という結論に至ります。
どうなのかなあ…
個人的には如何にもステレオタイプで薄っぺらな感じがして、
この結論にはあまり乗れませんでした。
何処かのCMみたいでしょう?
悪い映画ではないと思うのです。
構成も緻密に出来ていますし、
主人公はとても魅力的で、
取り巻く個性的な町の人も良いですよね。
映像も美しいですし、キャメラと音効も素敵です。
ずっと仏頂面のおじいさんが最後に笑うんですから、
上手く手来ていますよね。
「赤い部屋」とか、
ちょこっとデビット・リンチ的な世界が、
アクセント程度に添えてあるのも良いのです。
ただ、もう少し周辺にドラマがあっても良いかな、
と個人的には思いました。
途中のパーティーの歌は、
勿論良いと感じる人がいることは分かるのですが、
ちょっと牧歌的過ぎて蛇足に感じましたし、
結局最終ヒントは日本兵と戦った思い出ですか…
ということになると、
少し切ない気分になるのです。
まあ、仕方ないのですけどね。
ディテールは非常にアメリカ的なので、
映画館で1回で全て理解するのは難しいとも感じました。
またテレビ画面で見かえすと、
印象は変わるかも知れません。
そんな訳で個人的にはそれほど乗れなかったのですが、
鑑賞する価値は充分にある、
非常に個性的で美しい映画だと思います。
「パリ・テキサス」の好きな方には、
確かに交互に観るととても味わいが深いのです。
人生の放浪を詩的に感じさせます。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2018-04-01 09:14
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