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2種類の尿酸降下剤の心血管疾患リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
プロベネシッドとアロプリノールの予後の差.jpg
2018年のJournal of the American College of Cardiology誌に掲載された、
古くから使用されている2種類の尿酸降下剤の、
心血管疾患の発症リスクの差についての論文です。

血液中の尿酸値が高いと、
関節に沈着した尿酸の結晶が、
一種の自己炎症のメカニズムで関節炎を起こします。

これが痛風発作です。

痛風発作を起こした患者さんは、
その再発予防のために、
尿酸の降下剤を継続的に飲むことが、
治療として世界的に推奨されています。

この時に最も現在広く使用されているのが、
尿酸の合成を阻害するタイプの薬で、
アロプリノール(商品名ザイロリックなど)がその代表ですが、
最近新薬も複数発売されています。

もう1種類尿酸の排泄を促進するタイプの薬剤があり、
海外では主にプロベネシッド(商品名ベネシッドなど)が使われ、
日本ではベンズブロマロン(商品名ユリノームなど)が良く使用されています。

このどちらを使うのかは、
尿中の尿酸排泄のレベルなどを見て、
使い分けるという方法が一時日本では行われていましたが、
その指標を用いると殆どが排泄低下型になってしまうので、
海外であまりこうした薬が使用されていない現状を鑑みると、
疑問に感じる部分があります。
また排泄促進剤はその効果が不安定で、
尿酸値の変動が生じやすいという欠点があります。
一方でアロプリノールは稀ですが、
重症薬疹を生じる薬として知られていて、
新薬は今のところそうしたリスクは少ないとされていますが、
まだもう少し時間が経たないとその真偽は分かりません。

尿酸が高いことは、
それ自体が心血管疾患のリスクである、
という報告が最近多く見られるようになりました。

ただ、実際に尿酸降下剤で尿酸を低下させることにより、
心血管疾患のリスクが低下するかどうかは、
報告は散見されるもののまだ明確ではありません。
また、尿酸合成阻害剤と排泄促進剤の、
どちらで下げるかによって、
そのリスクに違いがあるかどうかについても、
知見は限られています。

そこで今回の研究では、
アメリカの健康保険のデータを活用して、
65歳以上の痛風の患者さんで、
プロベネシッドを使用した場合と、
アロプリノールを使用した場合を1対3でマッチングさせ、
その後の心血管疾患リスクを比較しています。

プロベネシッド使用者9722名と、
アロプリノール使用者29166名をマッチングさせて検討した結果、
心筋梗塞もしくは脳卒中の発症率は、
プロベネシッド使用者で年間100名当り2.36件であったのに対して、
アロプリノール使用者は2.83件で、
プロベネシッドの使用はアルプリノールと比較して、
心筋梗塞と脳卒中の発症リスクを、
20%(95%CI: 0.69から0.93)有意に低下させていました。
個別のリスクで見ても、
プロベネシッドの使用はアロプリノールと比較して、
心筋梗塞と脳卒中のリスクを有意に低下させていました。

このように今回の検証では意外なことに、
使用頻度の少ない尿酸排泄促進剤において、
心血管疾患のリスクが低下する、
という結果が得られています。

尿酸排泄促進剤には、
副次的に抗炎症作用が認められるという知見もあり、
それが影響しているという推測も論文中ではされていますが、
まだ検証は不充分な点も多く、
今後の検証を待ちたいと思います。

ただ、最近あまり注目されることの少なかった、
尿酸排泄促進剤が、
このような結果を示したことは興味深く、
その再評価のきっかけとなるかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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