三谷幸喜「江戸は燃えているか」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
三谷幸喜さんの作・演出で、
中村獅童さん、松岡昌宏さんがダブル主演の時代物が、
今新橋演舞場で上演されています。
これは勝海舟と西郷隆盛が話し合い、
江戸城の無血開城を決めたという、
有名な幕末の史実を元にしたもので、
中村獅童さんが勝海舟を、
藤本隆宏さんが西郷隆盛を演じ、
松岡さんは勝家に出入りしているイケメンの庭師、
という設定で、
腰の据わらない勝海舟の態度に業を煮やした、
松岡茉優さん演じる勝の娘が、
松岡さんの庭師を勝海舟の偽物にでっち上げて、
西郷隆盛と談判させる、というお話になっています。
1幕75分、2幕80分の2幕劇ですが、
舞台は勝海舟の家の縁側に固定されていて、
1幕は勝海舟の偽物が活躍し、
2幕は西郷隆盛の偽物が活躍する、
という三谷さんらしいシンメトリックな構成になっています。
基本的にはすれ違いと誤解からの喜劇で、
「君となら」に近い三谷さんの得意のパターンの家族劇です。
ただ、ラストは中村獅童さんの長台詞で締めくくられ、
真山青果さんの新歌舞伎めいたスタイルになっています。
おそらく元になっているのは「将軍江戸を去る」で、
そこでは戦争を回避するために、
山岡鉄太郎が将軍慶喜を説得するのですが、
それと同じような呼吸で、
「戦争は絶対してはいけない」と、
勝海舟が西郷隆盛を説得するのです。
三谷幸喜が新橋演舞場で、
真山青果をやる、と言う辺りに、
今回のお芝居の妙味があります。
通常シリアスな役柄に描かれる山岡鉄太郎を、
今回は飯尾和樹さんが演じ、
セリフもまともに言えないいい加減な山岡を見せる、
という辺りに、
三谷さんらしいある種の「悪意」のようなものを、
感じることが出来ます。
ただ、ラストに至るまでの展開は、
典型的な家族のシチュエーションコメディで、
今回の舞台はパルコ・プロデュースですが、
休館中のパルコ劇場に最も見合ったスケールの芝居、
という感じがあります。
真山青果っぽくなるラストだけは、
新橋演舞場の大きさが活きていましたが、
それまでの展開はちょっと小屋が大きすぎて、
散漫になるという感じがありました。
2幕は時々意識が飛びましたが、如何にも長すぎると感じます。
本来は1幕劇で2時間くらいで良いお芝居で、
それを演舞場用に、無理に引き延ばしたような感じがあるからです。
これは推測ですが、
元々はもっと小さな劇場向けに、
発想された作品ではなかったでしょうか。
そんな訳で大満足という感じではなかったのですが、
さすが三谷さんという、
観客を無理矢理でも満足させるような、
ある種のあざとさは見事で、
キャストは脇役に至るまで、
その役者さんが演じることで光るように、
極めて巧み肉付けされていますし、
演出もきっちりとした部分と、
獅童さんが大暴れするグダグダの場面との、
落差がまた上手いのです。
僕は松岡茉優さんが大好きなので、
彼女の仕草だけで眼福でした。
こうしたそれほど舞台での演技に長けていない、
映像中心の俳優さんを、
上手く使うのが三谷さんは実に巧みです。
今回も彼女の定番の表情や仕草や台詞を、
そのまま自然に舞台で再現しているのが素晴らしいと思います。
大抵の舞台演出家と称される人は、
「この娘の新しい面を引き出してやる」とばかりに、
無理な舞台演技をさせて失敗してしまうか、
この間の石原さとみさんのように、
大切な声をガラガラにさせてしまうのです。
その点三谷さんは、
役者さんの商品価値が何処にあるか、
観客がその役者さんの何を求めているのかを、
的確に判断してまた舞台で的確に実現する、
という点が素晴らしく、
その点では真のプロフェッショナルだと感じます。
ただ、如何にもあざといですね。
そんな訳で見て損はない舞台ですが、
演舞場の公演としては、
ちょっと疑問も残る作品ではありました。
三谷さんの戯曲としては、
「水準作」という感じかと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
三谷幸喜さんの作・演出で、
中村獅童さん、松岡昌宏さんがダブル主演の時代物が、
今新橋演舞場で上演されています。
これは勝海舟と西郷隆盛が話し合い、
江戸城の無血開城を決めたという、
有名な幕末の史実を元にしたもので、
中村獅童さんが勝海舟を、
藤本隆宏さんが西郷隆盛を演じ、
松岡さんは勝家に出入りしているイケメンの庭師、
という設定で、
腰の据わらない勝海舟の態度に業を煮やした、
松岡茉優さん演じる勝の娘が、
松岡さんの庭師を勝海舟の偽物にでっち上げて、
西郷隆盛と談判させる、というお話になっています。
1幕75分、2幕80分の2幕劇ですが、
舞台は勝海舟の家の縁側に固定されていて、
1幕は勝海舟の偽物が活躍し、
2幕は西郷隆盛の偽物が活躍する、
という三谷さんらしいシンメトリックな構成になっています。
基本的にはすれ違いと誤解からの喜劇で、
「君となら」に近い三谷さんの得意のパターンの家族劇です。
ただ、ラストは中村獅童さんの長台詞で締めくくられ、
真山青果さんの新歌舞伎めいたスタイルになっています。
おそらく元になっているのは「将軍江戸を去る」で、
そこでは戦争を回避するために、
山岡鉄太郎が将軍慶喜を説得するのですが、
それと同じような呼吸で、
「戦争は絶対してはいけない」と、
勝海舟が西郷隆盛を説得するのです。
三谷幸喜が新橋演舞場で、
真山青果をやる、と言う辺りに、
今回のお芝居の妙味があります。
通常シリアスな役柄に描かれる山岡鉄太郎を、
今回は飯尾和樹さんが演じ、
セリフもまともに言えないいい加減な山岡を見せる、
という辺りに、
三谷さんらしいある種の「悪意」のようなものを、
感じることが出来ます。
ただ、ラストに至るまでの展開は、
典型的な家族のシチュエーションコメディで、
今回の舞台はパルコ・プロデュースですが、
休館中のパルコ劇場に最も見合ったスケールの芝居、
という感じがあります。
真山青果っぽくなるラストだけは、
新橋演舞場の大きさが活きていましたが、
それまでの展開はちょっと小屋が大きすぎて、
散漫になるという感じがありました。
2幕は時々意識が飛びましたが、如何にも長すぎると感じます。
本来は1幕劇で2時間くらいで良いお芝居で、
それを演舞場用に、無理に引き延ばしたような感じがあるからです。
これは推測ですが、
元々はもっと小さな劇場向けに、
発想された作品ではなかったでしょうか。
そんな訳で大満足という感じではなかったのですが、
さすが三谷さんという、
観客を無理矢理でも満足させるような、
ある種のあざとさは見事で、
キャストは脇役に至るまで、
その役者さんが演じることで光るように、
極めて巧み肉付けされていますし、
演出もきっちりとした部分と、
獅童さんが大暴れするグダグダの場面との、
落差がまた上手いのです。
僕は松岡茉優さんが大好きなので、
彼女の仕草だけで眼福でした。
こうしたそれほど舞台での演技に長けていない、
映像中心の俳優さんを、
上手く使うのが三谷さんは実に巧みです。
今回も彼女の定番の表情や仕草や台詞を、
そのまま自然に舞台で再現しているのが素晴らしいと思います。
大抵の舞台演出家と称される人は、
「この娘の新しい面を引き出してやる」とばかりに、
無理な舞台演技をさせて失敗してしまうか、
この間の石原さとみさんのように、
大切な声をガラガラにさせてしまうのです。
その点三谷さんは、
役者さんの商品価値が何処にあるか、
観客がその役者さんの何を求めているのかを、
的確に判断してまた舞台で的確に実現する、
という点が素晴らしく、
その点では真のプロフェッショナルだと感じます。
ただ、如何にもあざといですね。
そんな訳で見て損はない舞台ですが、
演舞場の公演としては、
ちょっと疑問も残る作品ではありました。
三谷さんの戯曲としては、
「水準作」という感じかと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2018-03-11 12:04
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