「岸 リトラル」(上村聡史演出版) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
レセプトでバタバタしていて、
今日は遅い更新となりました。
診療は今もやっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
レバノン出身でカナダで活躍している劇作家、
ワジディ・ムワワドの作品を上村聡史さんが演出し、
比較的渋いキャストを揃えた公演が、
11日まで世田谷シアタートラムで上演されています。
これは15分の休憩を入れて3時間半という長尺で、
話も暗いですし正直かなりしんどい観劇でした。
作家本人に近い若者が主人公で、
ある日父の死を告げられ、
ゾンビのように実体化した父親と、
これも幻想でしかない守護騎士と一緒に、
内戦で荒廃したレバノンに行き、
そこで父親の埋葬場所を探す旅に出る、
というお話です。
割と日本の小劇場的な手法で書かれた戯曲です。
幻想として登場する映画製作スタッフによって、
主人公の行為が時々「虚構化」されるのですが、
これなど寺山修司の「レミング」にそっくりの趣向です。
幻想の荒野で友達を募って西遊記めいた旅を続けるのも、
鴻上尚史の「ピルグリム」を彷彿とさせますし、
幻想の騎士とのメタ芝居的掛け合いなどは、
野田秀樹の芝居にも近い味わいです。
ただ、それが翻訳劇として上演されると、
台詞は如何にも説明調でくどいですし、
こうした形而上劇は、
イメージがすぐに観客と共有されるような感じがないと、
舞台が弾まないと思います。
どうしても遠い異国の話で距離感が邪魔をしますし、
それで延々と説明的台詞が続くだけの芝居を、
3時間以上見ていろというのは、
かなり無理があるように思います。
セットもそれなりに凝ってはいるのですが、
色彩を含めて全体に如何にもモノトーンで地味ですし、
暗い話を余計に暗くしているように思います。
たとえば「レミング」では、
映画製作スタッフの乱入時には、
色彩や舞台の印象を、
ガラリと変えて見せるような工夫がありました。
今回の舞台はそうした演出上の工夫に乏しく、
舞台面が大きく変貌するような、
ハッとするような瞬間がありません。
ビニールを広げて上に上げ、
照明の雰囲気を変えたりしているのですが、
それを時間を掛けてダラダラ準備したりするので、
とてもハッとするような気分にはなれません。
そんな訳で、
非常に意義深い上演であることは間違いがないのですが、
「演劇勉強会」といった感じで、
こなれた娯楽作には昇華していなかったことは少し残念でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
レセプトでバタバタしていて、
今日は遅い更新となりました。
診療は今もやっています。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
レバノン出身でカナダで活躍している劇作家、
ワジディ・ムワワドの作品を上村聡史さんが演出し、
比較的渋いキャストを揃えた公演が、
11日まで世田谷シアタートラムで上演されています。
これは15分の休憩を入れて3時間半という長尺で、
話も暗いですし正直かなりしんどい観劇でした。
作家本人に近い若者が主人公で、
ある日父の死を告げられ、
ゾンビのように実体化した父親と、
これも幻想でしかない守護騎士と一緒に、
内戦で荒廃したレバノンに行き、
そこで父親の埋葬場所を探す旅に出る、
というお話です。
割と日本の小劇場的な手法で書かれた戯曲です。
幻想として登場する映画製作スタッフによって、
主人公の行為が時々「虚構化」されるのですが、
これなど寺山修司の「レミング」にそっくりの趣向です。
幻想の荒野で友達を募って西遊記めいた旅を続けるのも、
鴻上尚史の「ピルグリム」を彷彿とさせますし、
幻想の騎士とのメタ芝居的掛け合いなどは、
野田秀樹の芝居にも近い味わいです。
ただ、それが翻訳劇として上演されると、
台詞は如何にも説明調でくどいですし、
こうした形而上劇は、
イメージがすぐに観客と共有されるような感じがないと、
舞台が弾まないと思います。
どうしても遠い異国の話で距離感が邪魔をしますし、
それで延々と説明的台詞が続くだけの芝居を、
3時間以上見ていろというのは、
かなり無理があるように思います。
セットもそれなりに凝ってはいるのですが、
色彩を含めて全体に如何にもモノトーンで地味ですし、
暗い話を余計に暗くしているように思います。
たとえば「レミング」では、
映画製作スタッフの乱入時には、
色彩や舞台の印象を、
ガラリと変えて見せるような工夫がありました。
今回の舞台はそうした演出上の工夫に乏しく、
舞台面が大きく変貌するような、
ハッとするような瞬間がありません。
ビニールを広げて上に上げ、
照明の雰囲気を変えたりしているのですが、
それを時間を掛けてダラダラ準備したりするので、
とてもハッとするような気分にはなれません。
そんな訳で、
非常に意義深い上演であることは間違いがないのですが、
「演劇勉強会」といった感じで、
こなれた娯楽作には昇華していなかったことは少し残念でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2018-03-10 14:13
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