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2型糖尿病の新分類(クラスター解析による試案) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
糖尿病の新分類.jpg
今年のLancet Diabetes & Endcrinology誌に掲載された、
糖尿病を5つに分類するという試案についての論文です。

これは一般のニュースなどでも取り上げられていますが、
あまり具体的な内容が説明されていないのは、
クラスター解析という方法によるもので、
あまり分かりやすいものではなく、
すぐに臨床に応用出来る、
という感じのものでもないからです。

糖尿病の分類としては1型糖尿病と2型糖尿病という2つが、
古典的に行われて来ました。

1型糖尿病というのは、
年齢が若く発症して最初からインスリンの欠乏が高度で、
最初からインスリン治療の適応となります。
全てではありませんが、
膵臓のインスリン分泌細胞を攻撃する自己抗体である、
抗GAD抗体が陽性となっていて、
自己免疫的な機序により発症するとされています。

2型糖尿病は実際的には糖尿病の患者さんの大部分を占め、
肥満が先行して大人になってから発症し、
インスリン分泌の低下は病初期には軽度で、
インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が、
その発症に大きな役割を果たしています。
通常抗GAD抗体は陰性です。

最近抗GAD抗体が陽性で、
最初は典型的な2型糖尿病のように、
大人になってから徐々に進行しますが、
その後インスリン分泌が低下して、
1型糖尿病と同様の病態となる、
成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)という病態が提唱されていて、
日本ではこれを海外で言われるより早く、
緩徐進行型インスリン依存性糖尿病(SPIDDM)と独自に呼んでいて、
その診断基準は微妙に違っています。
日本の専門の先生は、
独自の基準でこちらが正統、
のような主張を一時期されていましたが、
今では(SPIDDM / LADA)というような表記が多く、
欧米では上記の文献でもそうですが、
LADA以外の表記はされていません。
いつも良くある感じの経緯ですね。

さて、このLADAは1型糖尿病の亜型と考えるのが通常ですが、
糖尿病の大部分を占める2型糖尿病を、
全て1つの病気としてとらえるべきか、
という点にも議論があります。

たとえば、高齢者で初めて発症するようなタイプの、
緩やかに進行するような糖尿病は、
おそらく厳密な治療の必要性は、
低いのではないかと臨床医は誰でも思うところですが、
「高齢者の糖尿病は治療目標を高めに設定する」
というような、年齢のみを指標とした、
あまり科学的とは言えない緩い基準はあっても、
明確にどのような患者さんでは治療目標を緩めるべきなのか、
年齢という因子のみでそれを判断して良いのか、
というような点については、
あまり明確な指針が、
国内外を問わず示されていません。

網膜症のような合併症が、
同様の血糖レベルであっても、
急速に進行するような患者さんと、
そうではない患者さんがいますが、
それを区別するような指標も、
これまで存在していませんでした。

今回の検討は、
糖尿病と診断された時の状態によって、
幾つかの指標を組み合わせてグループ分けをすることにより、
その予後の推測や治療の選択に、
有用な臨床的分類の確立を目指したものです。

対象はスウェーデンにおいて、
糖尿病と新規に診断された8980名の患者さんで、
抗GAD抗体の有無、診断された年齢、体格の指標であるBMI、
血糖コントロールの指標であるHbA1c、
そしてHOMA2という計算法による、
インスリン抵抗性とインスリン分泌能を表わす指標の、
6つの変動する指標を用いて、
クラスター解析という方法で、
5つの群に分類しています。

①重度自己免疫性糖尿病(SAID): これは抗GAD抗体が陽性で比較的若い年齢で発症しているもので、ほぼこれまでの1型糖尿病に近い群です。
②重度インスリン欠乏型糖尿病(SIDD) : これは①に近い状態でありながら、抗GAD抗体が陰性の群です。
③重度インスリン抵抗性糖尿病(SIRD) : これはBMIが高くインスリン抵抗性が著明なタイプです。
④軽度肥満関連糖尿病(MOD) : これは比較的若く診断され、肥満はあるもののインスリン抵抗性は軽度で血糖上昇も軽度のものです。
⑤軽度加齢関連糖尿病(MARD): これは高齢発症で血糖上昇も軽度のものです。

この5群の分類において、
④と⑤よりも③は腎臓病を合併しやすく、
網膜症は②で最も多い、
という群間の違いが確認されました。

この群の分類は統計的なものなので、
すぐに臨床に応用可能、ということではありませんが、
本当に積極的で厳密な治療が必要な糖尿病と、
そうではない糖尿病を分類する試みとして非常に興味深く、
実際糖尿病の臨床の専門家は、
これに近い分類を頭に描きながら、
薬の選択などに活用していると思うのですが、
今後はより一般化した形で、
一般の臨床医に活用出来るような、
実用的な分類となることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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