インフルエンザは空気感染するのか? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のPNAS誌に掲載された、
インフルエンザウイルスの感染の仕方についての論文です。
インフルエンザウイルスは、
飛沫感染もしくは接触感染で感染すると、
一般的には考えられています。
接触感染というのは、
ウイルスが付着した物を介する感染で、
飛沫感染というのは、
感染した患者さんが、
咳やくしゃみをして、
飛び散った飛沫が、
鼻や口から入り込むことによる感染です。
この飛沫感染に似た言葉に空気感染があります。
飛沫感染と空気感染というのは何が違うのでしょうか?
飛沫というのは水分を多く含んだ粒子で、
これは咳やくしゃみ以外では飛び散りません。
飛沫より小さく、水分の少ない粒子が飛沫核で、
これは通常の呼吸でも空気中に漂い、
長く浮遊しているという性質があります。
大きさで言うと、
直径が5μmより大きいのが飛沫で、
それより小さいのが飛沫核です。
もし飛沫核に乗って漂う性質のあるウイルスであれば、
それは患者さんが普通に呼吸しているだけでも、
その近く数メートルくらいに寄っただけで、
感染する可能性がある、ということになります。
これが空気感染です。
つまり、飛沫感染より空気感染をする病原体の方が、
より感染が広がりやすいのです。
麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)は、
空気感染をすることが知られています。
一方でインフルエンザウイルスは、
飛沫感染が主で空気感染はあまりしないと考えられています。
ただ、その根拠はそれほど実証的に確認されたものではなく、
最近では空気感染がインフルエンザでも起こるのではないか、
という見解もしばしば見られるようになりました。
今回の研究はアメリカにおいて、
インフルエンザの感染者142名を対象として、
発症から1から3日目に呼気のサンプルと、
鼻粘膜から採取された検体から、
インフルエンザの感染様式を検証しています。
インフルエンザ感染が確定している患者さんにおいては、
鼻粘膜の検体と空気中の飛沫および飛沫核で、
ウイルス遺伝子が検出され、
飛沫核の39%と鼻粘膜の検体の89%で、
ウイルスが培養可能でした。
ウイルス遺伝子量は、
鼻粘膜が最も多く、
次が飛沫核の検体で、
最も少ないのが飛沫の検体でした。
飛沫と飛沫核のウイルス遺伝子量は、
体格(BMI)が大きいほど多く、
咳を沢山しているほど多く、
発症からの時間が経っているほど少なくなっていました。
鼻粘膜の検体のウイルス遺伝子量が多いほど、
上気道炎症状の多くなっていましたが、
飛沫や飛沫核のウイルス遺伝子量と、
鼻粘膜のウイルス遺伝子量との間には、
明確な関連は見られませんでした。
くしゃみはインフルエンザ感染では少なく、
くしゃみと咳がなくても、
飛沫や飛沫核にはウイルス遺伝子が確認され、
その感染力も確認されました。
このようにインフルエンザ感染においては、
飛沫感染のみならず空気感染も起こり得ることが、
今回の実験でほぼ確認されました。
ただ、実際に周辺の人間への感染については、
今回の実験で確認をされている、という訳ではないので、
その点についてはまだ今後の検証を待つ必要がありますが、
インフルエンザは空気感染をすることもある、
というようには考えて、
予防の対策を講じる必要があることは、
ほぼ間違いがないようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
2018年のPNAS誌に掲載された、
インフルエンザウイルスの感染の仕方についての論文です。
インフルエンザウイルスは、
飛沫感染もしくは接触感染で感染すると、
一般的には考えられています。
接触感染というのは、
ウイルスが付着した物を介する感染で、
飛沫感染というのは、
感染した患者さんが、
咳やくしゃみをして、
飛び散った飛沫が、
鼻や口から入り込むことによる感染です。
この飛沫感染に似た言葉に空気感染があります。
飛沫感染と空気感染というのは何が違うのでしょうか?
飛沫というのは水分を多く含んだ粒子で、
これは咳やくしゃみ以外では飛び散りません。
飛沫より小さく、水分の少ない粒子が飛沫核で、
これは通常の呼吸でも空気中に漂い、
長く浮遊しているという性質があります。
大きさで言うと、
直径が5μmより大きいのが飛沫で、
それより小さいのが飛沫核です。
もし飛沫核に乗って漂う性質のあるウイルスであれば、
それは患者さんが普通に呼吸しているだけでも、
その近く数メートルくらいに寄っただけで、
感染する可能性がある、ということになります。
これが空気感染です。
つまり、飛沫感染より空気感染をする病原体の方が、
より感染が広がりやすいのです。
麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)は、
空気感染をすることが知られています。
一方でインフルエンザウイルスは、
飛沫感染が主で空気感染はあまりしないと考えられています。
ただ、その根拠はそれほど実証的に確認されたものではなく、
最近では空気感染がインフルエンザでも起こるのではないか、
という見解もしばしば見られるようになりました。
今回の研究はアメリカにおいて、
インフルエンザの感染者142名を対象として、
発症から1から3日目に呼気のサンプルと、
鼻粘膜から採取された検体から、
インフルエンザの感染様式を検証しています。
インフルエンザ感染が確定している患者さんにおいては、
鼻粘膜の検体と空気中の飛沫および飛沫核で、
ウイルス遺伝子が検出され、
飛沫核の39%と鼻粘膜の検体の89%で、
ウイルスが培養可能でした。
ウイルス遺伝子量は、
鼻粘膜が最も多く、
次が飛沫核の検体で、
最も少ないのが飛沫の検体でした。
飛沫と飛沫核のウイルス遺伝子量は、
体格(BMI)が大きいほど多く、
咳を沢山しているほど多く、
発症からの時間が経っているほど少なくなっていました。
鼻粘膜の検体のウイルス遺伝子量が多いほど、
上気道炎症状の多くなっていましたが、
飛沫や飛沫核のウイルス遺伝子量と、
鼻粘膜のウイルス遺伝子量との間には、
明確な関連は見られませんでした。
くしゃみはインフルエンザ感染では少なく、
くしゃみと咳がなくても、
飛沫や飛沫核にはウイルス遺伝子が確認され、
その感染力も確認されました。
このようにインフルエンザ感染においては、
飛沫感染のみならず空気感染も起こり得ることが、
今回の実験でほぼ確認されました。
ただ、実際に周辺の人間への感染については、
今回の実験で確認をされている、という訳ではないので、
その点についてはまだ今後の検証を待つ必要がありますが、
インフルエンザは空気感染をすることもある、
というようには考えて、
予防の対策を講じる必要があることは、
ほぼ間違いがないようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2018-03-05 08:01
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