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小児の喘息発作を起こし易いウイルスは何か? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ライノウイルスとインフルエンザウイルスの喘息への影響.jpg
2018 年のClinical & Experimental Allergy誌に掲載された、
小児の喘息発作を起こし易いウイルスの種類についての論文です。

気管支喘息は慢性のアレルギー性の気道の炎症ですが、
喘息発作自体は特にお子さんの場合には、
通常かぜなどの感染症をきっかけとして起こります。

小児の喘息発作の少なくとも85%は、
何らかのウイルス感染をきっかけとして起こり、
成人でも40から80%はウイルス感染が誘因と報告されています。

このうちでも、
最も喘息発作を誘発しやすいと報告されているのが、
風邪の原因ウイルスであるライノウイルスです。

ただ、これがライノウイルスの特徴によっているのか、
それとも風邪の原因としてライノウイルスが多いだけで、
他の呼吸器感染の原因となるウイルスでも、
同様の性質があるのか、
といった点はこれまでにあまり検証をされていません。

そこで今回の研究では、
ギリシャにおけるインフルエンザ様疾患の疫学データを活用して、
生後6ヶ月から13歳のインフルエンザ様症状で入院した、
1207名の症状と原因ウイルスとの関連を検証し、
主にライノウイルスとインフルエンザウイルスの、
喘息発作に対する影響を比較しています。

その結果、
ライノウイルスに感染すると、
喘息症状の起こる頻度が高く、
その一方でインフルエンザウイルスの感染では、
発熱などの全身症状が多いという特徴が、
全体で見られました。

また、喘息発作の既往のあるお子さんに絞った解析では、
ライノウイルスもインフルエンザウイルスも、
共に喘息発作の原因となりましたが、
ライノウイルス感染が喘息症状は多くても、
それ以外は比較的軽症であったのに対して、
インフルエンザウイルスでは、
喘鳴より発熱やリンパ節腫脹などの全身症状が強く、
重症化が多いという傾向が認められました。

このように同じウイルス感染による喘息症状の悪化と言っても、
ウイルスの種類によって症状の差がある、
という知見は非常に興味深く、
今後より広範なウイルスでの検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 1

bpd1teikichi_satoh

昔々の事ですが、爺がN医科大衛生学公衆衛生学教室に在籍して
いた時に別の部所でライノウイルスを研究していましたが、この論文の様に小児喘息を引き起こすとは知りませんでした。ライノウイルスには、多くの型が有りますが、型によって小児喘息を引き起こすのは違いがあるのでしょうか?
by bpd1teikichi_satoh (2018-02-28 10:17) 

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