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「羊の木」(吉田大八監督) [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
羊の木.jpg
山上たつひこ原作、いがらしみきお作画のカルト的漫画を、
鬼才吉田大八さんが監督した注目の新作映画が、
今ロードショー公開されています。

原作の漫画は悪意に満ちた、
トラウマ化必死のかなり凄まじいもので、
とてもこのまま映像化することは出来ないと思える一方、
吉田さんも一筋縄ではいかない監督なので、
一体どう料理するつもりなのだろうと、
期待半分不安半分で映画館に出掛けました。

結果的には原作が使われているのは、
殆ど基本的な設定の部分だけで、
未知の物に対する不安から来る差別感情というやっかいなものを、
俎上に上げているという点は原作と同じですが、
その扱いはかなり異なり、
後半の展開はほぼ映画のオリジナルと言って良いものでした。

原作では悪意の塊のような謎の人物が登場し、
移住した受刑者のみならず、
町の住民自体がその内なる狂気を露にして、
地獄の釜の蓋が開いたような阿鼻叫喚の地獄絵図が描かれるのですが、
映画版ではそうした謎はなく、
住民は全て至って健全で、
結果としてある複雑なサイコパスと、
主人公が戦うという話が後半の軸になっていました。
ただ、正直そのオリジナルの展開に説得力がなく、
たとえばヒロインがある男を好きになるという心理が、
全く説得力を持っていないので、
唐突でモヤモヤしたまま終わってしまいました。

強引にアイドルを主役にして設定を変更する、
という限界が企画にあったことも推測されますが、
原作の設定があまり活かされず、
後半のノワール的な展開も、
中途半端に終わってしまったことはとても残念でした。

ただ、さすが吉田監督という部分もあり、
語り口は巧みで明快な点は良いと思いますし、
ワンカットでひき逃げを目撃させた、
殺人場面の演出も鮮やかでした。

そんな訳であまり上出来とは言えない作品でしたが、
映画の登場人物以上に先の読めない吉田監督のことですから、
また次回作は期待して待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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