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急性蕁麻疹に対するステロイドの上乗せ効果について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
じんましんのステロイドの効果.jpg
2018年のAnnals of Emergency Medicine誌に掲載された、
急性の蕁麻疹症状に対する飲み薬のステロイド(糖質コルチコイド)の、
治療効果についての論文です。

急性のアレルギー症状として、
皮膚の一部もしくは広範囲が、
赤く腫れて膨らみ、
猛烈にかゆみを感じる急性蕁麻疹は、
通常命に関わるような病気ではありませんが、
大変不快でつらい症状です。
蕁麻疹は一定の時間が過ぎれば自然に改善しますが、
繰り返すこともしばしばありますし、
自然に治るからと言って、
何も薬も使わずに症状に耐えることは、
かなり苦痛であることは確かです。

上記の論文は救急医学領域のものですが、
救急を受診する皮膚に病気のある患者さんのうち、
7から35%は急性蕁麻疹であった、
という統計が紹介されています。

つまり、多くの一般の人にとって、
急性蕁麻疹は一刻を争うつらい症状なのです。

この急性蕁麻疹の治療には、
通常抗ヒスタミン剤という薬が使用されます。
これは風邪薬や花粉症の薬の鼻水止めの成分と同じで、
蕁麻疹の症状の原因である、
ヒスタミンという物質の働きをブロックする薬です。
ヒスタミンが血管のヒスタミン 受容体にヒスタミンがくっつくと、
細い血管が広がり、水が血管の外に染み出して、
むくみを作ります。
ヒスタミンを人間の皮膚に注射すると、
皮膚はたちまちむくんで赤く腫れ、
猛烈な痒みを感じます。
これが要するに、「蕁麻疹」と言われる現象なのです。

2013年の国際的な蕁麻疹のガイドラインによると、
抗ヒスタミン剤の使用以外に、
ステロイド剤(糖質コルチコイド)の服用が、
症状の持続期間と強さの改善に、
有効な可能性がある、という記載があります。

ただ、この記載の根拠となっているのは、
たった2つの臨床研究だけで、
抗ヒスタミン剤にステロイドを上乗せすることにより、
症状はより迅速に改善し、より完全に軽快した、
というように書かれていますが、
厳密な方法である介入試験は1つだけで、
例数も43例と少なく、
使用されている抗ヒスタミン剤は、
今では副作用が強いためあまり使用がされていない、
第一世代の薬が使われています。

従って、今の治療に近い形で、
より例数も増やした検証が、
是非必要であると考えられます。

そこで今回の臨床研究では、
フランスの2か所の救命救急部門を持つ総合病院において、
18歳以上で24時間以内に発症し、
救急外来を受診した急性蕁麻疹の患者さん、
トータル100名を、
患者さんにも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
一方は日本でも良く使用されている、
新しいタイプの抗ヒスタミン剤レボセチリジン(商品名ザイザル)を、
1日5ミリグラムで5日間使用し、
もう一方はそれに加えて、
ステロイドのプレドニンを1日40ミリグラムを、
1日1回で4日間使用して、
その後の改善の差を比較しています。
偽薬を使用して、
どちらか分からないように条件を同じにした、
かなり厳密な方法の臨床研究です。

その結果、
治療開始後2日の時点で、
ザイザルのみの群の76%と、
ステロイドを上乗せした群の62%が、
かゆみ症状がなくなっていました。
これはどちらにも明らかな優劣は付いていません。

再燃が見られたのは、
ザイザルのみ群の24%に対して、
ステロイド上乗せ群で30%で、
これも明らかな優劣は付いていません。

両群で特に問題となるような有害事象は報告されませんでした。

このように今回の検証においては、
急性蕁麻疹の初期治療として、
抗ヒスタミン剤のみを使用しても、
ステロイドをそれに追加しても、
短期的な症状の改善には特に違いは認められませんでした。

これは勿論単純な蕁麻疹のみの症状の場合で、
呼吸困難な喘鳴を伴うような重症の事例においては、
ステロイドの使用が否定された訳ではない、
という点に注意が必要ですが、
単純な蕁麻疹のかゆみや湿疹のみの症状であれば、
それが少し強くても、
ステロイドを最初から使用することの意義は、
あまりないと考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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