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慢性腎臓病における降圧治療の効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日からクリニックは年末年始の休診となります。
ただ、あれやこれやで1日バタバタしそうな感じです。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
慢性腎臓病の降圧療法の効果.jpg
今年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
慢性腎臓病に対する降圧治療の効果を検証したメタ解析の論文です。

慢性腎臓病は心血管疾患のリスクになり、
透析が必要な腎不全へと進行するリスクが高く、
生命予後にも大きな影響を与える病気です。

高血圧も心血管疾患の大きなリスクであり、
そのため慢性腎臓病の進行予防のためにも、
血圧を適正なレベルに保つことが、
重要であると考えられています。

ただ、それでは目標とする血圧をどのレベルにするべきか、
という点については、
未だ結論に至っていません。

KDIGOという国際的な慢性腎臓病のガイドラインでは、
尿中アルブミンが30mg/g cr未満の場合には、
降圧目標は140/90mmHg未満を、
尿中アルブミンが30mg/g cr以上の場合には、
130/80mmHg未満を、
血圧の目標値と定めています。
それとは別個にヨーロッパの降圧ガイドラインでは、
慢性腎臓病の降圧目標値は140/90未満 と定められていて、
特に尿タンパクによる区分けはありません。

2015年に発表されたSPRINT試験では、
慢性腎臓病を含む集団において、
収縮期血圧が140mmHg未満を目指す通常のコントロールと、
120mmHg未満を目指すより厳密なコントロールを比較して、
より厳密なコントロールを行った方が、
心血管疾患のリスクも総死亡のリスクも低下した、
という結果が報告され非常な注目を集めました。

その一方でより厳密な降圧において、
急性の腎障害のリスクは増加しており、
慢性腎臓病の患者さんのみの解析では、
全体と同等の傾向はあるものの有意にはならなかったので、
本当に慢性腎臓病においてもより厳密な降圧が、
患者さんの予後に良い影響を及ぼすかどうかは、
結論が出ていません。

今回の研究はこれまでの介入試験と呼ばれる厳密な方法の臨床試験の結果を、
まとめて解析したメタ解析の研究ですが、
慢性腎臓病の患者さんにおいて、
通常より厳密な降圧治療と通常の治療との比較に、
ターゲットをおいたものとなっています。

対象となる患者さんは慢性腎臓病のステージ3から5で、
これは推計の糸球体濾過量が60mL/min/1.73㎡未満であることが条件です。
30の介入試験で登録された、
15924名の患者さんをまとめて解析した結果として、
ベースラインの収縮期血圧148(±16)mmHgを、
140mmHgを目標として降圧治療をした場合と、
より厳しく132mmHgを目標として降圧治療をした場合とで比較したところ、
厳密な目標を設定した方が、
総死亡のリスクが14.0%(95%CI; 0.76から0.97)有意に低下していました。

このように慢性腎臓病の患者さんのみでの解析でも、
現行のガイドラインより低い目標を設定して降圧した方が、
より患者さんの生命予後には良い影響が認められました。
ただ、これは治療薬剤などによっても変わる可能性があり、
今後メタ解析以外の単独データにおいても、
より精密な検証が必要となるのではないかと思います。

現状は高血圧を合併した慢性腎臓病の患者さんにおいては、
降圧時の腎機能の急速な低下に注意しつつも、
収縮期血圧は130mmHgくらいを目標に設定して、
降圧をはかることが望ましいようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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