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チェルフィッチュ「三月の5日間」リクリエーション [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診ですが、
レセプト作業が積み残されているので、
これからクリニックで仕事の予定です。

今日は日曜日なので趣味の話題です。
今日は2本あります。

まずはこちら。
3月の5日間.jpg
2003年のイラク戦争開戦時の東京での5日間を舞台とした、
2004年初演のチェルフィッシュの代表作「三月の5日間」が、
若手キャストのリクリエーションとして復活し、
今横浜のKAAT神奈川芸術劇場で上演されています。

僕は基本的にはチェルフィッチュは苦手で、
通常「だらしない」と表現されるような動きを、
執拗に繰り返しながら、
視線も定めずに熱量のない会話を、
これも執拗に繰り返すようなところが、
アングラ好きの世代としては、
どうも受け付けないところがあるのです。

ただ、最近は拒否反応は大分なくなりましたし、
その後の演劇に与えた影響力の大きさは、
間違いのないところだと思います。

この「三月の5日間」のオリジナルは、
映像で見ただけです。
イラク戦争が開始された三月の5日間を、
そのままラブホテルで連泊で過ごしたカップルと、
そこに至るまでのコンパに同席した男女が、
戦争反対のデモに参加していたエピソードなどを、
意識の流れというのか、
人間の心の思いつくまま、という感じに、
時間軸はバラバラにして、
個々のキャラクターの感情の赴くままに、
点描的に描いたもので、
政治的ではない無為な若者を、
批判しているように取れるところもあるのが、
「大人」に評価されるところなのではないかと思います。

2002年の松尾スズキさんの「業音」という芝居では、
ラブホテルで退廃の極みにあった男女が、
テレビでアメリカ同時多発テロの映像を見て、
訳も分からず暴走への衝動に駆られるという場面がありましたが、
個人的には同じ発想なのかな、
と感じましたし、
それなら僕は松尾さんの作品の方が好きだな、
というようには思うのですが、
「三月の5日間」もシンプルなスタイルとしては悪くなく、
分かりやすい点とその表現の独特さのバランスの良さが、
人気のあるポイントのようにも思います。

今回の作品は現在に合わせて大幅にリクリエーションする、
ということだったので、
今の時代にスライドさせるということなのかしら、
とちょっと危惧を感じたのですが、
実際にはキャストを若手に入れ替えて、
それに合わせて台詞も変えているのですが、
2003年の三月の5日間の出来事であることは同じで、
作品世界自体はほぼ同じ上演でした。

これはどうも駄目でした。

キャストにあまり魅力がなくて、
「この人を見ていたい」と思う瞬間がありませんし、
落ち着きがなく戯画化された動作が、
あまりその人の身体に溶け合っていない、
という気がしました。
特に意図的に目線を外して宙に漂わせるような感じが、
わざとらしい感じがしてどうも受け付けないのです。

2004年の時点では遠い世界の戦争と、
若者の自堕落な生活との対比や、
傍観者的な立場や自分の視点を外から眺めるような感じが、
それなりの意味を持ったのだと思うのですが、
戦争と生活との関係が大きく変わり、
もう傍観者的ではいられなくなった今という時代に、
この視点はあまりに生ぬるいな、
というようにも感じました。

ただ、作・演出の岡田利規さんも、
この作品に描かれた社会と人間との距離感と、
今の世界の距離感とが大きく異なっていることは、
百も承知であるはずで、
今回のリクリエーションはその距離感を図るための習作的なもので、
今後「今の時代」と向かい合う新作のクリエーションを、
見据えての作品なのだと思います。

今後の新作に期待をしたいと思います。

小劇場演劇に限定して言えば、
演劇はその時代と分かちがたく結びついているものなので、
時代を切り離しての再演は、
基本的には距離感を図る程度の意味しか、
持たないものなのだと実感しました。

それでは2本目に続きます。
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