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ナイロン100℃「ちょっと、まってください」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

今日は日曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
ちょっと、まってください.jpg
現代最も影響力のある演劇人の1人であるケラさんの、
ホームグラウンドのナイロン100℃での3年ぶりの新作公演が、
今下北沢の本多劇場で上演されています。

例によって休憩を挟んで3時間を超える長尺で、
今回は別役実さんの過去の劇作に対する、
オマージュのような舞台になっています。

これまでにも別役さんの作品の引用があったり、
設定を借りたりするような舞台はあったのですが、
今回に関しては「雨が空から降れば」のような、
かつての劇中歌も歌っていますし、
作品全体が別役作品の変奏曲のような趣向になっています。

別役さんの初期作の「赤い鳥のいる風景」のようなイメージで、
童話めいた架空の町の設定の中に、
金持ちとしての暮らしをしている一家と、
表裏一体の浮浪者の一家が描かれ、
その2つを結ぶ存在として、
マギーさん演じる詐欺師がいます。
金持ちは実は詐欺師に騙されて、
法外な借金を続けているだけなので、
実態は赤字だらけで資産などはありません。
それを持ち逃げしようとした詐欺師は、
しかし、結局自分からは逃げ切れずに殺されてしまい、
市民運動と対立組織による不毛な対立が町を二分しているうちに、
町は破滅へと進んで行きます。

これはケラさんとしては、
今言いたいことを込めたと言うか、
時々漏らしているような、
今の日本への不満のようなものを、
珍しくストレートに表現した作品、
という言い方が出来そうです。

市民運動の不毛なやりとりや、
実は借金のみで生活している富豪など、
日本の状況そのものの風刺であることは明らかですし、
「ちょっと、まってください」という題名自体が、
今の世の中に対するケラさんの意思表示そのものなのだと思います。

手練れ揃いの役者さんの演技は滋味があって面白く、
2つの場面を幾何学的に構成したセットも、
エッシャーの絵画を見るような趣きで、
とても精緻に出来ています。
プロジェクションマッピングの精度の高さも、
ナイロン100℃ならではです。

正直この内容でこの上演時間の長さは、
かなりきつくしんどい思いがしますし、
別役さんの引用ばかりの芝居というのも、
これなら別役さんのオリジナルを観たい、
と言う気分にどうしてもなってしまいます。

ただ、今回はこれで単発の試みだと思いますので、
これはこれで楽しめましたし、
また次は新たな挑戦を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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