唐十郎「動物園が消える日」(唐組・第60回公演) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日ですが、
医師会の休日健診の当番となっているので、
今クリニックで受診される方を待っているところです。
日曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
唐組の第60回公演に足を運びました。
今回は唐組の第12回公演で若手主体の舞台として初演され、
今から思うとその後の唐組の舞台を決定づけた1本、
「動物園が消える日」の再演です。
これも勿論初演の中野駅を観ているのですが、
当時はあまり良い印象がありませんでした。
テント芝居としてはとても地味で、
舞台は安ホテルのロビーから動きませんし、
中央に意味ありげにエレベーターがあり、
天井の穴のビニールから水が溜まっているのですが、
最後にビニールが破けて水が流れ落ちるだけで、
これと言ったダイナミックな仕掛けもなく、
エレベーターも異世界との扉になることもなく、
そこの後ろだけ開いておしまい、
という感じだったので、
かつての状況劇場の血湧き肉躍る感じを期待していた当時の僕は、
その落差にとてもガッカリしたことを覚えています。
ただ、今こうして久保井研さんの、
初演より間違いなく緻密な演出での舞台を再見すると、
これは状況劇場時代の唐芝居が終わり、
唐組の新しい唐芝居が誕生した瞬間であったのだと、
改めて確認する思いがありました。
安ホテルのロビーに、
閉園したばかりの動物園の関係者が集まり、
行方知れずのカバと閉園を拒絶するさすらいの飼育係を巡って、
複雑で滑稽な愛憎のドラマを繰り広げます。
人物の絡ませ方が複雑で上手いですし、
ゴリラやミニーマウス、水になるカバやイヌワシなど、
実物自体は登場しない動物と人間との絡ませ方も上手く、
初演では唐先生本人が演じた灰牙という人物が、
愛すべき部分もありながら、
完全な厄介者で悪党でもあるという辺りに、
善悪は基本的に明確であったそれまでの唐芝居とは、
一線を画するような世界を展開させています。
ラストは矢張り不満は残ります。
かつての陶酔感のあるものではなく、
数人の人物が語り継ぐようにして、
事件の「それから」を語るというものなので、
テネシー・ウィリアムス的な古めかしさがありますし、
その後にエレベーターの向こうで、
ヒロインの1人が香水をまいているというのも、
それだけでは終われないような気がするからです。
キャストは皆頑張っていて、
初演の当時もかなり苦しいメンバーでしたから、
遜色は決してないという気がしますし、
セットはラストを含めて初演より出来が良く、
何より久保井さんの演出が緻密で見事です。
このような形でかつての唐組の芝居が、
その全き姿を見せてくれたことはとても嬉しく、
これからも楽しみにテントに向かいたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日ですが、
医師会の休日健診の当番となっているので、
今クリニックで受診される方を待っているところです。
日曜日は趣味の話題です。
今日はこちら。
唐組の第60回公演に足を運びました。
今回は唐組の第12回公演で若手主体の舞台として初演され、
今から思うとその後の唐組の舞台を決定づけた1本、
「動物園が消える日」の再演です。
これも勿論初演の中野駅を観ているのですが、
当時はあまり良い印象がありませんでした。
テント芝居としてはとても地味で、
舞台は安ホテルのロビーから動きませんし、
中央に意味ありげにエレベーターがあり、
天井の穴のビニールから水が溜まっているのですが、
最後にビニールが破けて水が流れ落ちるだけで、
これと言ったダイナミックな仕掛けもなく、
エレベーターも異世界との扉になることもなく、
そこの後ろだけ開いておしまい、
という感じだったので、
かつての状況劇場の血湧き肉躍る感じを期待していた当時の僕は、
その落差にとてもガッカリしたことを覚えています。
ただ、今こうして久保井研さんの、
初演より間違いなく緻密な演出での舞台を再見すると、
これは状況劇場時代の唐芝居が終わり、
唐組の新しい唐芝居が誕生した瞬間であったのだと、
改めて確認する思いがありました。
安ホテルのロビーに、
閉園したばかりの動物園の関係者が集まり、
行方知れずのカバと閉園を拒絶するさすらいの飼育係を巡って、
複雑で滑稽な愛憎のドラマを繰り広げます。
人物の絡ませ方が複雑で上手いですし、
ゴリラやミニーマウス、水になるカバやイヌワシなど、
実物自体は登場しない動物と人間との絡ませ方も上手く、
初演では唐先生本人が演じた灰牙という人物が、
愛すべき部分もありながら、
完全な厄介者で悪党でもあるという辺りに、
善悪は基本的に明確であったそれまでの唐芝居とは、
一線を画するような世界を展開させています。
ラストは矢張り不満は残ります。
かつての陶酔感のあるものではなく、
数人の人物が語り継ぐようにして、
事件の「それから」を語るというものなので、
テネシー・ウィリアムス的な古めかしさがありますし、
その後にエレベーターの向こうで、
ヒロインの1人が香水をまいているというのも、
それだけでは終われないような気がするからです。
キャストは皆頑張っていて、
初演の当時もかなり苦しいメンバーでしたから、
遜色は決してないという気がしますし、
セットはラストを含めて初演より出来が良く、
何より久保井さんの演出が緻密で見事です。
このような形でかつての唐組の芝居が、
その全き姿を見せてくれたことはとても嬉しく、
これからも楽しみにテントに向かいたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2017-11-05 08:55
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