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サウナの心血管疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
サウナの心血管疾患予防効果.jpg
2015年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
サウナの健康への影響を検証した論文です。

サウナが健康に良いのか悪いのかという話は、
クリニックの外来でもしばしば聞かれることです。

無理をし過ぎないサウナの習慣は、
大量の汗を掻いて代謝を活発にするので、
自律神経を刺激して心臓の働きにも、
良い影響を与える効果が期待されます。
リラクゼーションの効果もあることは間違いがありません。

ただ、その一方で急激な脱水に、
一時的にはなりますから、
血圧が低下したり、
心臓に負担を掛けるという側面も想定されます。

比較的最近の研究報告では、
概ね適度なサウナの習慣は、
健康への良い影響があるとするものが多くなっています。

今回ご紹介する論文はその代表的なものの1つで、
サウナが心血管疾患と総死亡に与える影響を検証したものです。

こうした研究の大規模なものは、
主にフィンランドで行われています。
フィンランドはサウナの発祥地で、
サウナという言葉自体フィンランド語由来だそうです。

今回の研究もフィンランドでの、
心血管疾患に関する大規模な疫学データを活用したもので、
年齢が登録時に42から60歳の一般住民2315名(男性のみ)を、
観察期間の中間値で20.7年という長期の経過観察を行って、
サウナの習慣はその頻度と、
心血管疾患のリスクや生命予後との関連を検証しています。

これは一般住民を無作為に抽出したデータで、
心血管疾患で治療をされているような人も混ざっています。
具体的には21.3%が降圧剤による治療を受けていて、
5.1%は糖尿病を持ち、
虚血性心疾患の既往も23.9%が持っています。

観察期間中に心臓の突然死で死亡したのは190名、
虚血性心疾患で死亡したのが281名、
心血管疾患全体での死亡が407名、
全ての原因による死亡の総計が929名でした。

喫煙や年齢、病気などの関連する因子を補正した結果として、
週1回のサウナ習慣を基準として時に、
総死亡のリスクは週2から3回のサウナ習慣で24%(95%CI; 0.66 から0.88)、
週4から7回のサウナ習慣で40%(95%CI; 0.46から0.80)、
それぞれ有意に低下していました。

心血管疾患による死亡も同様に、
週2から3回のサウナ習慣で27%(95%CI; 0.59から0.89)、
週4から7回のサウナ習慣で50%(95%CI; 0.33 から0.77)、
それぞれ有意に低下していました。

1回のサウナ時間とリスクとの関連を見てみると、
11分未満の場合と比較して、19分以上であった場合には、
心臓突然死のリスクが52%(95%CI; 0.31から0.75)有意に低下していました。
ただ、総死亡のリスクには差はありませんでした。

そして、特に病気の患者さんにおいて、
サウナによる生命予後のリスクが、
増加するということもありませんでした。

このように上記研究での結果としては、
虚血性心疾患などの病気の患者さんを含む対象において、
サウナの回数が多く時間も長い方が、
その後の長期の生命予後や心血管疾患の予後に、
良い影響を与える可能性が示唆されました。

その理由として上記文献の考察では、
サウナの温熱効果が血管内皮機能を高めるという知見と、
自律神経への影響や心臓の耐容能の増加作用などが記載されています。

ただ、そうは言っても心臓には負担を掛けることもあり、
一時的には脱水にもなるサウナが、
全く無害であるとも言い切れません。

特に起立性低血圧(俗に言う立ちくらみ)のあるような人では、
サウナから出た直後に起こる血圧の低下が、
転倒や意識消失などのリスクになるという指摘があり、
特に飲酒との関連がそのリスクを高めると分析されています。

フィンランドのサウナは、
平均温度が79度のドライサウナで、
それがそれ以外の方式や、
より高温のサウナにおいても同じであるという保証はありません。

こうしたデータは常にそうした側面がありますが、
フィンランドではサウナ文化が浸透していて、
体調の良い人や健康的な人ほどサウナを多く使用することが想定され、
関連する要素を補正したとは言っても、
そのバイアスは大きいというようにも思えます。

従って、サウナを習慣とする方が長生き出来るとか、
病気の人でも心配はないと、
上記のようなデータから言い切ることは危険だと思いますが、
心血管系や自律神経への適度な刺激が、
その後の心血管系の健康に良い影響を与える可能性は高く、
今後どのような人によりサウナのメリットがあり、
どのような人ではリスクが高いのか、
そうしたより詳細な検証が必要であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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