抗凝固剤の使用と血尿との関連について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
抗凝固剤の有害事象としての血尿のリスクについての論文です。
アスピリンなどの抗血小板剤や、
ワルファリン、ダビガトランなどの抗凝固剤は、
心血管疾患の予防薬として、
また心房細動による脳梗塞の予防や、
静脈血栓症に伴う肺塞栓症の予防薬として、
幅広く使用され、
その有用性が確認されている薬剤です。
その副作用として最も多いのが、
胃潰瘍や脳出血などの出血系の合併症です。
このうち、
消化管出血や脳出血については、
そのリスクはよく調べられていてデータも多いのですが、
その頻度が少なく比較的軽症に留まる場合が多い、
という判断からか、
あまり触れられることがないのが血尿などの泌尿器科系の出血です。
ただ、実際には血尿が止まらずに入院に至るというケースもあり、
抗凝固剤を中止せざるを得ないケースも、
実際には相当数あると思われます。
今回の研究はカナダのオンタリオ州において、
66歳以上の全人口を対象とした非常に大規模なもので、
2518064名が対象となり、
そのうちの808897名が何等かの抗血小板剤か抗凝固剤を使用していました。
これは1回でもそうした処方が出た人はカウントされています。
観察期間の中央値は7.3年です。
全く抗血小板剤や抗凝固剤を使用していない場合の、
血尿に伴う救急受診と入院、
そして泌尿器科的処置を併せた頻度は、
年間1000人当たり80.17件であったのに対して、
こうした薬を一回でも使用している場合には、
年間1000人当たり123.95件と有意に増加していました。
未使用の場合と比較して、
アスピリンなどの抗血小板剤のリスクは、
1.31倍(95%CI; 1.29から1.33)、
ワルファリンやダビガトランなどの抗凝固剤のリスクは、
1.55倍(95%CI; 1.52から1.59)、
両者を併用した倍は格段に高く、
10.48倍(95%CI; 8.16から13.45)となっていました。
こうした薬剤未使用の場合と比較して、
1種類でも使用していると、
その後半年に膀胱癌と診断されるリスクは、
1.85倍(95%CI: 1.79から1.92)有意に高くなっていました。
このように、
抗血小板剤や抗凝固剤の使用により、
他の出血系のリスクと同様、
血尿による入院などのリスクが増加することは間違いがなく、
それは特に2種類以上の薬の併用で顕著となっています。
膀胱癌の増加は、
薬が癌を誘発したのではなく、
血尿よりその二次検査が行われるので、
そのために見かけ上診断が増加したものと想定されます。
比較的軽症例が多いので、
やや軽視されがちですが、
抗血小板剤や抗凝固剤が、
泌尿器科系の出血リスクを増すことも間違いはなく、
そうした薬の使用時には、
血尿の有無にも注意を払う必要があるのだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
抗凝固剤の有害事象としての血尿のリスクについての論文です。
アスピリンなどの抗血小板剤や、
ワルファリン、ダビガトランなどの抗凝固剤は、
心血管疾患の予防薬として、
また心房細動による脳梗塞の予防や、
静脈血栓症に伴う肺塞栓症の予防薬として、
幅広く使用され、
その有用性が確認されている薬剤です。
その副作用として最も多いのが、
胃潰瘍や脳出血などの出血系の合併症です。
このうち、
消化管出血や脳出血については、
そのリスクはよく調べられていてデータも多いのですが、
その頻度が少なく比較的軽症に留まる場合が多い、
という判断からか、
あまり触れられることがないのが血尿などの泌尿器科系の出血です。
ただ、実際には血尿が止まらずに入院に至るというケースもあり、
抗凝固剤を中止せざるを得ないケースも、
実際には相当数あると思われます。
今回の研究はカナダのオンタリオ州において、
66歳以上の全人口を対象とした非常に大規模なもので、
2518064名が対象となり、
そのうちの808897名が何等かの抗血小板剤か抗凝固剤を使用していました。
これは1回でもそうした処方が出た人はカウントされています。
観察期間の中央値は7.3年です。
全く抗血小板剤や抗凝固剤を使用していない場合の、
血尿に伴う救急受診と入院、
そして泌尿器科的処置を併せた頻度は、
年間1000人当たり80.17件であったのに対して、
こうした薬を一回でも使用している場合には、
年間1000人当たり123.95件と有意に増加していました。
未使用の場合と比較して、
アスピリンなどの抗血小板剤のリスクは、
1.31倍(95%CI; 1.29から1.33)、
ワルファリンやダビガトランなどの抗凝固剤のリスクは、
1.55倍(95%CI; 1.52から1.59)、
両者を併用した倍は格段に高く、
10.48倍(95%CI; 8.16から13.45)となっていました。
こうした薬剤未使用の場合と比較して、
1種類でも使用していると、
その後半年に膀胱癌と診断されるリスクは、
1.85倍(95%CI: 1.79から1.92)有意に高くなっていました。
このように、
抗血小板剤や抗凝固剤の使用により、
他の出血系のリスクと同様、
血尿による入院などのリスクが増加することは間違いがなく、
それは特に2種類以上の薬の併用で顕著となっています。
膀胱癌の増加は、
薬が癌を誘発したのではなく、
血尿よりその二次検査が行われるので、
そのために見かけ上診断が増加したものと想定されます。
比較的軽症例が多いので、
やや軽視されがちですが、
抗血小板剤や抗凝固剤が、
泌尿器科系の出血リスクを増すことも間違いはなく、
そうした薬の使用時には、
血尿の有無にも注意を払う必要があるのだと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2017-10-12 08:47
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