「エル」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当します。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
オランダの鬼才ポール・バーホーベンが、
フランスでメガホンを撮り、
名女優のイバベル・ユベールが主役を演じた、
エロチック・サスペンスの「エル」が、
今ロードショー公開中です。
バーホーベンと言えば、
「ロボコップ」は公開当時は衝撃的で斬新で、
「マッド・マックス」と共に、
近未来バイオレンスの歴史を塗り替えた傑作でしたし、
「氷の微笑」は全編「思わせぶり」しかない、
という一種独特のある意味滅茶苦茶なサスペンスで、
公開当時は大宣伝もあって、
物凄くワクワクして劇場に足を運び、
狐につままれたような気分で劇場を後にしてことを、
今もありありと覚えています。
また「スターシップ・トゥルーパーズ」も、
CGを駆使した怪物の群れとの激闘が凄まじく、
未だにあれを超えるSFモンスターアクション映画はないと、
誰もが否定出来ないジャンル物の大傑作でした。
ただ、バーホーベンの特徴は、
その変態性にこそあって、
おそらく本人も絶対変態だと思うのですが、
登場するのは主人公を含めて、
性根が歪み、異常な性的嗜好を持った変態ばかりで、
その変態性が好きな人には抜群の魅力です。
そんな彼も70代の後半となって、
もういい加減枯れて来たのではないかと想像され、
実際に割と平凡な作品が多くなっていたのですが、
今回の新作はところがどうして、
変態節さく裂の怪作で、
これが白鳥の歌にならなければ良いと、
密かに不安に思うほど、
元気一杯変態度抜群の作品でした。
基本的にはかつての「氷の微笑」に似ているところがあって、
エッチで変態的なサスペンスなのですが、
後半はこれまでにない異次元に突入する、
ある意味「氷の微笑」を超えるサスペンスになっていました。
また、作り手も過去作を意識していて、
音楽や女の挑発的な媚態などは、
「氷の微笑」を明らかになぞっていました。
内容はイザベル・ユベール演じる主人公の中年女性が、
自宅でいきなりスキーマスクを被った謎の男に、
レイプされるという衝撃的な場面から始まります。
その主人公というのが、
オタク向けのエロチックで残酷なRPGを作っている、
ゲーム会社のCEOなのですが、
父親が20年前に数十人を惨殺した殺人鬼で、
自身もその時のトラウマを持ち、
母親は若いムキムキの男性の虜になっている性欲の奴隷で、
自身も女性パートナーとレズの関係にありながら、
その夫とも不倫の関係を持ち、
更には隣のイケメンの妻がいるトレーダーにも惹かれている、
という変態ぶりです。
主人公はレイプをされてから、
得体の知れない妄想に悩まされ、
精神の均衡を失ってゆくので、
ははあ、これはサイコスリラーのパターンで、
トラウマのある主人公が、
自分も殺人鬼になってゆく、
というような話なのね、
と予想するのですが、
その予想は大きく外れ、
レイプ犯の正体が判明した辺りから、
変態達の暴走は止まることはなく、
予測不可能な方向へと転がり始めます。
これはもうバーホーベンにしか描けない、
変態性の世界で、
好き好きはあるので受け付けない方もいらっしゃると思いますが、
僕はこうしたものは大好物なので、
途中からはもうのめり込むようにして観ていました。
特に後半の盛り上がりは素晴らしく、
ラストの帳尻の合わせ方もケチの付けようはありません。
キャストは主人公以外も非常に充実していて、
如何にもフランス映画という、
コクのある競演を見せてくれます。
惜しむらくは映像で、
全編ぼんやりとしたソフトフォーカスで画質も荒く、
何かレンタル屋に置かれた古いビデオを見ているようでした。
これがそもそも原版の画質なのか、
それとも日本で公開されているバージョンに問題があるのかは、
良く分かりませんでした。
何にせよ今年一番の変な映画であることは間違いがなく、
こうした変態映画の好きな人には、
抜群の贈り物で、
バーホーベンの映画のファンであれば、
失望することはないと断言しても良いと思います。
下品で変態で胃もたれするような濃厚さですが、
とてもとても面白いです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後とも石原が外来を担当します。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
オランダの鬼才ポール・バーホーベンが、
フランスでメガホンを撮り、
名女優のイバベル・ユベールが主役を演じた、
エロチック・サスペンスの「エル」が、
今ロードショー公開中です。
バーホーベンと言えば、
「ロボコップ」は公開当時は衝撃的で斬新で、
「マッド・マックス」と共に、
近未来バイオレンスの歴史を塗り替えた傑作でしたし、
「氷の微笑」は全編「思わせぶり」しかない、
という一種独特のある意味滅茶苦茶なサスペンスで、
公開当時は大宣伝もあって、
物凄くワクワクして劇場に足を運び、
狐につままれたような気分で劇場を後にしてことを、
今もありありと覚えています。
また「スターシップ・トゥルーパーズ」も、
CGを駆使した怪物の群れとの激闘が凄まじく、
未だにあれを超えるSFモンスターアクション映画はないと、
誰もが否定出来ないジャンル物の大傑作でした。
ただ、バーホーベンの特徴は、
その変態性にこそあって、
おそらく本人も絶対変態だと思うのですが、
登場するのは主人公を含めて、
性根が歪み、異常な性的嗜好を持った変態ばかりで、
その変態性が好きな人には抜群の魅力です。
そんな彼も70代の後半となって、
もういい加減枯れて来たのではないかと想像され、
実際に割と平凡な作品が多くなっていたのですが、
今回の新作はところがどうして、
変態節さく裂の怪作で、
これが白鳥の歌にならなければ良いと、
密かに不安に思うほど、
元気一杯変態度抜群の作品でした。
基本的にはかつての「氷の微笑」に似ているところがあって、
エッチで変態的なサスペンスなのですが、
後半はこれまでにない異次元に突入する、
ある意味「氷の微笑」を超えるサスペンスになっていました。
また、作り手も過去作を意識していて、
音楽や女の挑発的な媚態などは、
「氷の微笑」を明らかになぞっていました。
内容はイザベル・ユベール演じる主人公の中年女性が、
自宅でいきなりスキーマスクを被った謎の男に、
レイプされるという衝撃的な場面から始まります。
その主人公というのが、
オタク向けのエロチックで残酷なRPGを作っている、
ゲーム会社のCEOなのですが、
父親が20年前に数十人を惨殺した殺人鬼で、
自身もその時のトラウマを持ち、
母親は若いムキムキの男性の虜になっている性欲の奴隷で、
自身も女性パートナーとレズの関係にありながら、
その夫とも不倫の関係を持ち、
更には隣のイケメンの妻がいるトレーダーにも惹かれている、
という変態ぶりです。
主人公はレイプをされてから、
得体の知れない妄想に悩まされ、
精神の均衡を失ってゆくので、
ははあ、これはサイコスリラーのパターンで、
トラウマのある主人公が、
自分も殺人鬼になってゆく、
というような話なのね、
と予想するのですが、
その予想は大きく外れ、
レイプ犯の正体が判明した辺りから、
変態達の暴走は止まることはなく、
予測不可能な方向へと転がり始めます。
これはもうバーホーベンにしか描けない、
変態性の世界で、
好き好きはあるので受け付けない方もいらっしゃると思いますが、
僕はこうしたものは大好物なので、
途中からはもうのめり込むようにして観ていました。
特に後半の盛り上がりは素晴らしく、
ラストの帳尻の合わせ方もケチの付けようはありません。
キャストは主人公以外も非常に充実していて、
如何にもフランス映画という、
コクのある競演を見せてくれます。
惜しむらくは映像で、
全編ぼんやりとしたソフトフォーカスで画質も荒く、
何かレンタル屋に置かれた古いビデオを見ているようでした。
これがそもそも原版の画質なのか、
それとも日本で公開されているバージョンに問題があるのかは、
良く分かりませんでした。
何にせよ今年一番の変な映画であることは間違いがなく、
こうした変態映画の好きな人には、
抜群の贈り物で、
バーホーベンの映画のファンであれば、
失望することはないと断言しても良いと思います。
下品で変態で胃もたれするような濃厚さですが、
とてもとても面白いです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2017-09-09 08:11
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コメント(1)
世の中がおかしくなってきていて慣れっこになってきたのか?少々の変態ではおどろかなくなってきました。どのくらい変態なのか観てみたいなと先生の解説から感じました。
by ひでほ (2017-09-09 15:26)