心筋梗塞の診断にCPKは不要? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
心筋梗塞の診断のための血液検査についての、
アメリカの専門機関による提言です。
医療コストが増加し続ける中、
アメリカにおいても不要な検査や薬を査定し、
削減しよう、という動きが多方面で起こっているようです。
2016年にHigh Value Practice Academic Allianceという、
多くの専門機関が協力して、
不要な検査などの削減を提言しようという試みが始まりました。
その最初の提言が上記のもので、
急性心筋梗塞などの急性冠症候群の診断のためには、
CPK-MBという従来使用されている検査を、
原則として行なうべきではない、
というかなり過激な内容です。
CPKというのは筋肉細胞由来の酵素で、
その数値の上昇は筋肉細胞の破壊や炎症を意味しています。
CPKのMB分画は心筋細胞に多く分布しているので、
CPK-MBの上昇は心筋梗塞など、
心臓の筋肉の障害の可能性を強く疑わせる検査所見になります。
そして、心筋梗塞の場合、
血管が詰まり障害された範囲が大きいほど、
CPK-MBの数値も高くなるので、
病気の重症度の判定にも有用な検査として、
現在でも広く使用されています。
しかし、CPK-MBは心筋細胞のみから出る訳ではないので、
その数値は心臓の病気以外でも上昇することがあります。
一方で比較的最近測定が可能となった、
トロポニンTという検査は、
心臓の筋原線維を構成する蛋白質で、
心筋細胞が壊死すると血液中で上昇します。
従って、その数値が上昇していれば、
ほぼ間違いなく心臓の細胞が障害されている、
ということが言えるのです。
現在の日本の臨床の現場では、
CPK-MBもトロポニンTも健康保険で測定が可能で、
どちらもそう高額な検査ではないので、
心筋梗塞などの際には、
両者が測定されることが多いと思います。
ただ、上記の提言においては、
心筋梗塞を始めとする急性冠症候群が疑われる場合には、
トロポニンTを測定すれば必要にして充分で、
トロポニンの測定が何等かの原因により困難な場合を除いては、
その測定は推奨されない、
という記載になっています。
そうは言ってもCPK-MBの測定には歴史があり、
経験のある臨床医はその数値によっても、
患者さんの重症度を大体判断出来る、
という利点もありますから、
即座にその測定を中止することが、
必ずしも適切な判断であるとは納得出来ませんが、
今後はこうした不必要と思われるような検査や治療を、
専門機関が提言し削減するような試みが、
日本でも行われるようになるのではないでしょうか?
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は事務作業の予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、
心筋梗塞の診断のための血液検査についての、
アメリカの専門機関による提言です。
医療コストが増加し続ける中、
アメリカにおいても不要な検査や薬を査定し、
削減しよう、という動きが多方面で起こっているようです。
2016年にHigh Value Practice Academic Allianceという、
多くの専門機関が協力して、
不要な検査などの削減を提言しようという試みが始まりました。
その最初の提言が上記のもので、
急性心筋梗塞などの急性冠症候群の診断のためには、
CPK-MBという従来使用されている検査を、
原則として行なうべきではない、
というかなり過激な内容です。
CPKというのは筋肉細胞由来の酵素で、
その数値の上昇は筋肉細胞の破壊や炎症を意味しています。
CPKのMB分画は心筋細胞に多く分布しているので、
CPK-MBの上昇は心筋梗塞など、
心臓の筋肉の障害の可能性を強く疑わせる検査所見になります。
そして、心筋梗塞の場合、
血管が詰まり障害された範囲が大きいほど、
CPK-MBの数値も高くなるので、
病気の重症度の判定にも有用な検査として、
現在でも広く使用されています。
しかし、CPK-MBは心筋細胞のみから出る訳ではないので、
その数値は心臓の病気以外でも上昇することがあります。
一方で比較的最近測定が可能となった、
トロポニンTという検査は、
心臓の筋原線維を構成する蛋白質で、
心筋細胞が壊死すると血液中で上昇します。
従って、その数値が上昇していれば、
ほぼ間違いなく心臓の細胞が障害されている、
ということが言えるのです。
現在の日本の臨床の現場では、
CPK-MBもトロポニンTも健康保険で測定が可能で、
どちらもそう高額な検査ではないので、
心筋梗塞などの際には、
両者が測定されることが多いと思います。
ただ、上記の提言においては、
心筋梗塞を始めとする急性冠症候群が疑われる場合には、
トロポニンTを測定すれば必要にして充分で、
トロポニンの測定が何等かの原因により困難な場合を除いては、
その測定は推奨されない、
という記載になっています。
そうは言ってもCPK-MBの測定には歴史があり、
経験のある臨床医はその数値によっても、
患者さんの重症度を大体判断出来る、
という利点もありますから、
即座にその測定を中止することが、
必ずしも適切な判断であるとは納得出来ませんが、
今後はこうした不必要と思われるような検査や治療を、
専門機関が提言し削減するような試みが、
日本でも行われるようになるのではないでしょうか?
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2017-08-23 08:30
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