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消炎鎮痛剤の抗うつ作用について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
消炎鎮痛剤の抗うつ作用.jpg
2014年のJAMA Psychiatry誌に掲載された、
抗炎症作用を持つ薬剤でうつ状態が改善するという、
興味深い現象についての論文です。

うつ状態と炎症は決して無関係なものではありません。

感染症の時にはうつ状態が生じたり、
悪化したりすることは良く知られていますし、
インターフェロンのように、
炎症性サイトカインを増加させる、
つまり疑似的に炎症を起こすような薬剤が、
うつ状態を起こすことも知られています。

こうした知見からは、
炎症に伴うサイトカインなどの上昇が、
うつ状態と関連しているという可能性が示唆されます。

仮にそれが事実であるとすると、
炎症を抑えてサイトカインを低下させるような治療により、
うつ状態自体も改善する、
という可能性が示唆されます。

しかし、実際には消炎鎮痛剤や、
インフリキシマブのような炎症シグナルの抑制剤の、
抑うつ状態への効果を見た臨床試験は、
症例数が少ないなど不充分なものが多く、
その結果も一定の有効性があった、というものから、
無効であったというものまで様々です。

そこで今回の研究では、
これまでの臨床試験のデータを、
まとめて解析するメタ解析の手法で、
炎症を抑制する治療の、
うつ状態に対する効果を検証しています。

その結果…

14の臨床研究がリストアップされていて、
そのうちの10の研究は非ステロイド系消炎鎮痛剤が対象となり、
4つの研究ではインフリマキシブのような、
炎症性疾患の治療薬が対象となっています。
トータルな症例数は6262名です。

抗炎症治療により、
うつ状態の指標には一定の改善効果が確認され、
その効果は選択的COX2阻害剤である、
セレコキシブでより高い傾向がありました。

今回解析された臨床データはかなり条件には違いがあるものなので、
これをもって消炎鎮痛剤がうつ病に有効とは、
言い切れないのですが、
うつ状態と炎症との関連があり、
炎症を抑えることによりうつ状態も改善する可能性がある、
という知見は非常に興味深く、
今後の検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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