夕日観音(2017年5月再訪) [仏像]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
明日土曜日では午前午後ともいつも通りの診療になります。
先刻、奈良京都から帰って来たところです。
今日はこれまでにも何度かご紹介したことがある、
僕の最も好きな奈良の石仏を見て頂きます。
その仏様のお姿がこちらです。
奈良の北方柳生街道の滝坂道の岩に刻まれた、
夕日観音のお姿です。
これは仏像岩と呼ばれる、
別々の場所に幾つかの石仏の刻まれた街道脇の崖があって、
その岩の最も上の部分に刻まれています。
街道からはかなり上方の見えづらい場所にあるので、
見逃がされる方も多いと思うのですが、
崖をよじ登るとそばで手を合わせることが出来ます。
一番最初に拝んだのは大学生の時で、
とてもとても感銘を受けました。
それから2010年の妻が入院している時に再訪、
妻と一緒に2011年にも訪問し、
翌年の2012年のお盆に再訪した時に手首を骨折して、
それからは行くのをやめていました。
今回が5年ぶりの再訪になります。
観音という名前ですが弥勒仏と考えられています。
一種の立体曼荼羅として、
その頂点に刻んだようにも思えます。
もう少し近づきましょう。
素晴らしいでしょ。
平安末期から鎌倉時代の作と考えられています。
描線やお顔の感じに古様があり、
確実に鎌倉は下ることがないと思います。
様式としてはおそらく鎌倉期の前半期かと推測されます。
古仏の風格があり、格調があり、
そして風化の途上にある儚さが漂っています。
こちらは向かって左側から撮った画像ですが、
右のお顔には補修らしき跡があり、
水の浸食による痛みと岩の変色も見られます。
入江泰吉先生の昔の写真では、
お顔の傷みはなく、
右手の先の描線も綺麗に残っていましたから、
風化は着実に進んでいるようです。
奈良の摩崖仏の私的ベストスリーは、
この夕日観音と和束弥勒摩崖仏、
そして当尾の大門仏谷摩崖仏ですが、
和束は最近整備されて岩の強度も安定していますし、
大門仏谷はかなり前に岩の上にある桜の巨木を切り倒していて、
岩盤は固く安定しているので、
この両者は長く残ると思うのですが、
この夕日観音に関しては、
彫られた岩自体がそれほど固くはないもので、
仏様のすぐ上に老木があり、
そこからひび割れも生じています。
老木が倒れたり、大雨で岩が浸食したりすれば、
全体が剥落する恐れは極めて大きいと思います。
いつまでこのお姿を拝見することが出来るのかが、
極めて不安でもあり、
そこがまた物の哀れを感じさせて、
心を揺さぶるところでもあります。
今回再訪にして本当に良かったと思いますし、
また折に触れて参拝を続けたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
明日土曜日では午前午後ともいつも通りの診療になります。
先刻、奈良京都から帰って来たところです。
今日はこれまでにも何度かご紹介したことがある、
僕の最も好きな奈良の石仏を見て頂きます。
その仏様のお姿がこちらです。
奈良の北方柳生街道の滝坂道の岩に刻まれた、
夕日観音のお姿です。
これは仏像岩と呼ばれる、
別々の場所に幾つかの石仏の刻まれた街道脇の崖があって、
その岩の最も上の部分に刻まれています。
街道からはかなり上方の見えづらい場所にあるので、
見逃がされる方も多いと思うのですが、
崖をよじ登るとそばで手を合わせることが出来ます。
一番最初に拝んだのは大学生の時で、
とてもとても感銘を受けました。
それから2010年の妻が入院している時に再訪、
妻と一緒に2011年にも訪問し、
翌年の2012年のお盆に再訪した時に手首を骨折して、
それからは行くのをやめていました。
今回が5年ぶりの再訪になります。
観音という名前ですが弥勒仏と考えられています。
一種の立体曼荼羅として、
その頂点に刻んだようにも思えます。
もう少し近づきましょう。
素晴らしいでしょ。
平安末期から鎌倉時代の作と考えられています。
描線やお顔の感じに古様があり、
確実に鎌倉は下ることがないと思います。
様式としてはおそらく鎌倉期の前半期かと推測されます。
古仏の風格があり、格調があり、
そして風化の途上にある儚さが漂っています。
こちらは向かって左側から撮った画像ですが、
右のお顔には補修らしき跡があり、
水の浸食による痛みと岩の変色も見られます。
入江泰吉先生の昔の写真では、
お顔の傷みはなく、
右手の先の描線も綺麗に残っていましたから、
風化は着実に進んでいるようです。
奈良の摩崖仏の私的ベストスリーは、
この夕日観音と和束弥勒摩崖仏、
そして当尾の大門仏谷摩崖仏ですが、
和束は最近整備されて岩の強度も安定していますし、
大門仏谷はかなり前に岩の上にある桜の巨木を切り倒していて、
岩盤は固く安定しているので、
この両者は長く残ると思うのですが、
この夕日観音に関しては、
彫られた岩自体がそれほど固くはないもので、
仏様のすぐ上に老木があり、
そこからひび割れも生じています。
老木が倒れたり、大雨で岩が浸食したりすれば、
全体が剥落する恐れは極めて大きいと思います。
いつまでこのお姿を拝見することが出来るのかが、
極めて不安でもあり、
そこがまた物の哀れを感じさせて、
心を揺さぶるところでもあります。
今回再訪にして本当に良かったと思いますし、
また折に触れて参拝を続けたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2017-05-05 20:23
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