清涼飲料水と脳卒中や認知症のリスクとの関連について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のStroke誌に掲載された、
砂糖や人工甘味料を含む清涼飲料水の摂取と、
脳卒中および認知症のリスクとの関連を検証した論文です。
砂糖を多く含むようなジュースを飲むことは、
食後の血糖値を上昇させ、
それがインスリンの効きを悪くして、
動脈硬化を進行させるという疑いが指摘されています。
最近の多くの清涼飲料水で使用されている人工甘味料は、
カロリーはなく甘みを感じるので、
そうしたリスクはないと考えられていましたが、
甘味の受容体を介して膵臓を刺激したり、
腸内細菌叢を変化させて糖質の吸収を増加させる、
というような悪影響を指摘する報告もあります。
これまでに砂糖や人工甘味料を含む清涼飲料水の摂取と、
脳卒中のリスクとの関連が指摘されていますが、
そうした関連はないとする報告もまたあります。
清涼飲料水と脳卒中との関連については、
これまでにあまり詳細な分析が、
されたことはないようです。
更には砂糖を含む清涼飲料水と人工甘味料との違いについても、
その量を含めて直接比較されたことはあまりないようです。
今回の研究はフラミンガム心臓研究という、
有名な大規模疫学データを活用して、
45歳を超える2888名を脳卒中のコホートとして、
60歳を超える1484名を認知症のコホートとして、
アンケートによる砂糖や人工甘味料を含む清涼飲料水の摂取量と病気との、
関連を検証しています。
リスクは10年間の累積発症率として算出され、
年齢、性別、カロリー摂取量、食事内容、運動量、喫煙の有無、
そして認知症のコホートでは教育レベルが、
関連する因子として補正されリスクが比較されています。
その結果…
観察期間中に脳卒中の事例97例(うち虚血性梗塞が82例)、
認知症の事例が81例(うちアルツハイマー型認知症が63例)
発症していました。
ここで人工甘味料を含む清涼飲料水を、
飲む習慣のない人と比較して、
週に0から6回飲む人は、
虚血性梗塞のリスクが2.62倍(95%CI; 1.26から5.45)、
毎日飲む習慣のある人は、
虚血性梗塞のリスクが2.96倍(95%CI; 1.26から6.97)、
認知症のリスクが2.89倍(95%CI; 1.18から7.07)、
それぞれ有意に増加していました。
それ以外の項目には有意差のあるものはありませんでした。
つまり、砂糖含有の清涼飲料水の摂取量と、
認知症と脳卒中との間には有意な関連はなく、
人工甘味料を含む清涼飲料水を、
週に0から6回飲む人も、
認知症のリスクとの関連は認められませんでした。
ここで高血圧や糖尿病といった、
心血管疾患のリスクを更に補正すると、
虚血性梗塞のリスクと人工甘味料との関連は認められましたが、
それ以外の関連は認められなくなりました。
今回のデータは例数や観察期間においては、
これまでにない規模のものなのですが、
結果はそれほどクリアなものとは言えません。
結論的には人工甘味料を含む清涼飲料水のみで、
認知症や脳卒中のリスクが上昇した、
ということになりますが、
認知症のリスクについては用量依存性はなく、
毎日飲む習慣のある人のみにリスクの増加が認められています。
何故もっと悪そうな砂糖を含む清涼飲料水では、
同様の関係が認められないのでしょうか?
明確な説明を付けるのは難しそうで、
むしろ何か関連する因子の影響が、
そうした見かけ上の関係を、
見せているだけなのではないか、
というように思えてなりません。
そんな訳で簡単に清涼飲料水で認知症や脳卒中が増えるとは、
現時点では言えないように思いますが、
人工甘味料のみでリスクが増加するという知見は興味深く、
今後の再検証を期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のStroke誌に掲載された、
砂糖や人工甘味料を含む清涼飲料水の摂取と、
脳卒中および認知症のリスクとの関連を検証した論文です。
砂糖を多く含むようなジュースを飲むことは、
食後の血糖値を上昇させ、
それがインスリンの効きを悪くして、
動脈硬化を進行させるという疑いが指摘されています。
最近の多くの清涼飲料水で使用されている人工甘味料は、
カロリーはなく甘みを感じるので、
そうしたリスクはないと考えられていましたが、
甘味の受容体を介して膵臓を刺激したり、
腸内細菌叢を変化させて糖質の吸収を増加させる、
というような悪影響を指摘する報告もあります。
これまでに砂糖や人工甘味料を含む清涼飲料水の摂取と、
脳卒中のリスクとの関連が指摘されていますが、
そうした関連はないとする報告もまたあります。
清涼飲料水と脳卒中との関連については、
これまでにあまり詳細な分析が、
されたことはないようです。
更には砂糖を含む清涼飲料水と人工甘味料との違いについても、
その量を含めて直接比較されたことはあまりないようです。
今回の研究はフラミンガム心臓研究という、
有名な大規模疫学データを活用して、
45歳を超える2888名を脳卒中のコホートとして、
60歳を超える1484名を認知症のコホートとして、
アンケートによる砂糖や人工甘味料を含む清涼飲料水の摂取量と病気との、
関連を検証しています。
リスクは10年間の累積発症率として算出され、
年齢、性別、カロリー摂取量、食事内容、運動量、喫煙の有無、
そして認知症のコホートでは教育レベルが、
関連する因子として補正されリスクが比較されています。
その結果…
観察期間中に脳卒中の事例97例(うち虚血性梗塞が82例)、
認知症の事例が81例(うちアルツハイマー型認知症が63例)
発症していました。
ここで人工甘味料を含む清涼飲料水を、
飲む習慣のない人と比較して、
週に0から6回飲む人は、
虚血性梗塞のリスクが2.62倍(95%CI; 1.26から5.45)、
毎日飲む習慣のある人は、
虚血性梗塞のリスクが2.96倍(95%CI; 1.26から6.97)、
認知症のリスクが2.89倍(95%CI; 1.18から7.07)、
それぞれ有意に増加していました。
それ以外の項目には有意差のあるものはありませんでした。
つまり、砂糖含有の清涼飲料水の摂取量と、
認知症と脳卒中との間には有意な関連はなく、
人工甘味料を含む清涼飲料水を、
週に0から6回飲む人も、
認知症のリスクとの関連は認められませんでした。
ここで高血圧や糖尿病といった、
心血管疾患のリスクを更に補正すると、
虚血性梗塞のリスクと人工甘味料との関連は認められましたが、
それ以外の関連は認められなくなりました。
今回のデータは例数や観察期間においては、
これまでにない規模のものなのですが、
結果はそれほどクリアなものとは言えません。
結論的には人工甘味料を含む清涼飲料水のみで、
認知症や脳卒中のリスクが上昇した、
ということになりますが、
認知症のリスクについては用量依存性はなく、
毎日飲む習慣のある人のみにリスクの増加が認められています。
何故もっと悪そうな砂糖を含む清涼飲料水では、
同様の関係が認められないのでしょうか?
明確な説明を付けるのは難しそうで、
むしろ何か関連する因子の影響が、
そうした見かけ上の関係を、
見せているだけなのではないか、
というように思えてなりません。
そんな訳で簡単に清涼飲料水で認知症や脳卒中が増えるとは、
現時点では言えないように思いますが、
人工甘味料のみでリスクが増加するという知見は興味深く、
今後の再検証を期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2017-04-25 08:25
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コメント(5)
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情報ありがとうございます。よくわからないけど、あぶなそうなことはしないようにしたいと思いました。毎日のんでいるのはやめようと思います。
by ひでほ (2017-04-25 18:54)
先生,いつも貴重なご示唆をありがとうございます。
20歳の弟は自閉症スペクトラムです。
(言語にも知能にもさしたる問題はないので,アスペルガー症候群に近いのだと思われますが,あの辺りの疾患は診断根拠が複雑怪奇で奥が深く,不勉強な私には弟の明確な診断名は分かりかねます)
一時期は職を転々としていたものの,どうにか定職にもつき,ある程度の自立をしているのですが,毎日清涼飲料水を1L以上飲むので困っています。
前に,精神疾患を有する場合,DMの発症リスクが通常成人の5倍近くになると聞いたこともあり,止めるように,止められないならせめて無糖のものに変えるように説得を,10年近く続けているのですが,どうしても聞き入れてくれません。
たまに,分かったようなふりをするのですが,止めたふりをして隠れて飲むのでどれだけの糖分を飲料で摂取しているのかと思うと胃が痛くなります。
(障害のためか,極度に片付けができないので,隠れて飲んでいるつもりでも空き缶が出てくるのです)
そのうえ,今回の先生のご示唆により,毎日飲んでいる場合脳血管障害のリスクが上昇する可能性もあると知り,頭が痛くなりました。
成人しており,職にもついている弟を経済政策で活動を制限することもできず,どうやって説得していけばいいか,困っております。
精神遅滞はありませんが,課題認識力が非常に,極めて希薄で,視野が超短期的で,中長期的な考え方が難しいようなのです。
(単に,我慢ができないというのとは,若干違うような気がします)
先生が日々のご診療で,食事指導や生活指導をする際,心がけていらっしゃる点はありますでしょうか。
ご多用の折,恐縮ですがご助言賜れますと幸いです。
by 心配性の姉 (2017-04-26 10:59)
ひでほさんへ
いつもお読み頂きありがとうございます。
それほど明確なデータということはなく、
ほどほどであれば問題はないと、
現状はお考え頂いて良いのではないかと思います。
by fujiki (2017-04-27 08:04)
心配性の姉さんへ
弟様ご心配なことと思います。
今回のデータに関しては、
それほどクリアなものではなく、
大きなご心配はされないで頂きたいと思います。
ただ、人工甘味料に変えたから良いとは言えない、
という点は重要ではあると思います。
習慣となっている場合には、
無理押しは逆効果と思いますし、
なかなか難しいところだと思います。
直接的な制限よりも、
咽喉が渇いた時にはカロリーのない飲料の方が、
より効果的であることを説明して、
お水やお茶などを置いておいたり、
自立していらっしゃるとすれば難しいとは思うのですが、
清涼飲料水を飲みにくいような環境や時間を作る、
ということくらいかと思います。
(2つ同じコメントがありましたので、1つは消去させて頂きました)
by fujiki (2017-04-27 08:21)
先生,ご返信賜りありがとうございます。
(コメントが最初,私のPC上で反映されていなかったため,2度投稿してしまいました。
お手数をおかけし,失礼しました。)
おっしゃるとおり,「カロリー0だから安心!」というプロモーションを清涼飲料水メーカーはしがちなので,重要な点と存じます。
これまで「健康によくない」ということに終始しておりましたので,ご指摘通り,水やお茶などの方が,のどの渇きを癒しやすい,という説明に置き換えてみようかと思います。
どうも,水は味がなくて,用意してもあまり飲もうとしないので,お茶や無糖の炭酸水を,これからもせっせと買い続けて行こうと思います。
健康の上でも経済的にも500mL入りの缶ジュースを毎日何本も買うことは,適切ではないと思っていますので,今後も根気よく是正を続けていきたいと思います。
ご多用の折,ご助言賜り誠にありがとうございました。
by 心配性の姉 (2017-04-27 09:39)