ナタリー・デセイ&フィリップ・カサール デュオ・リサイタル(2017年都民劇場公演) [コロラトゥーラ]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日は声楽が1つと映画が1本です。
最初がこちら。
ナタリー・デセイ様がピアニストのカサールさんと、
2014年に続いてデュオ・リサイタルに来日されました。
4月12日が都民劇場のリサイタル、
それから1日福岡での公演があって、
今週の19日にはもう1回、
新宿のオペラシティでの公演があります。
デセイ様は僕にとっては絶対の藝術神で、
永遠の女神です。
2004年に日本で最初のリサイタルを開き、
東京でのその2回の公演に2回とも足を運びました。
このリサイタルは本当に本当に素晴らしくて、
聴き終わった後はしばらく呆然としていて、
公演は9月にあったのですが、
その年の終わりくらいまでは、
デセイ様のこと以外は殆ど考えられない状態でした。
彼女が目の前で僕のために1曲歌ってくれたら、
その場で咽喉を掻き切って死んでも構わないと、
本当にそのくらいに思いました。
その直後に体調不良で舞台を降板し、
休養に入ったというニュースを聞いた時などは、
フランスまで飛んで行って看病したいような思いにとらわれました。
翌年にメトロポリタン・オペラの「ロミオとジュリエット」で復帰、
というニュースが流れた時は、
真面目にアメリカまで聴きに行くことを考えました。
デセイ様の絶頂期は1998年から2002年くらいまでだと思いますが、
その時にどうして真の藝術を求めて、
何故ヨーロッパやアメリカに足を運ばなかったのかと、
それなしで空しく生きていても何の喜びがあろうかと、
そんなことを毎日悔いるような日々が続きました。
次の来日は2007年のことで、
日本でのデセイ様の人気は、
この時がピークであったと思います。
オペラシティのコンサートホールで、
3日間のリサイタルが行われ、
3日ともほぼ満席でした。
こんなことはあまりソプラノ歌手ではないことでした。
ただ、この時のデセイ様の調子はあまり良くなくて、
咽喉が何度も引っかかるように声が途切れ、
高音もあまり出ず、
ピアニシモの持続も困難でした。
3日のうち1日くらいはいいだろうと思い、
3日とも聴きに行きましたが、
結果としては3日とも同じ状態でした。
次の来日は何とオペラで、
2010年に「椿姫」の舞台に3回立ちました。
これも勿論全日程に足を運びました。
これはこれで素晴らしい舞台でしたが、
デセイ様にベルカントはあまり似合わないと、
そんな思いは抜けませんでした。
出来はまあまあというレベルだったと思います。
それから2012年にマリインスキー管弦楽団の演奏会に参加し、
「ルチア」のタイトルロールを演奏会形式で全幕歌いました。
この公演は1回きりでしたが、
素晴らしいもので、
奇跡的に声は持続され、
いつもの声帯のエンストのような引っかかりもありませんでした。
全盛期のような超高音はありませんでしたが、
歌い回しには間違いのない天才が宿っていました。
デセイ様の「ルチア」にようやく間に合い、
本当に幸せでした。
しかし、真の代表作であった、
「ラクメ」や「ハムレット」には間に合いませんでした。
その翌年の秋にデセイ様はオペラを引退しました。
そして、2014年にはカサールさんと歌曲主体のリサイタルに来日しました。
この公演はプログラムは意欲的なものでしたが、
デセイ様の声は絶不調で、
まともに歌えた曲は、
正直2回の公演で通算しても1曲もない惨状に終わりました。
絶えず声は突っかかって途切れ、
ピアニシモは持続せず、
高音もまるで出ないという無残な状態でした。
そして、今回同じカサールさんとのリサイタルで、
デセイ様は来日されました。
僕は正直あまり期待はせずに劇場に足を運びました。
それでも、彼女が出て来る直前には、
思春期のようにドキドキしましたし、
第一声を発する直前には心臓が止まりました。
4月12日の公演は2014年とはくらべものにならない良い出来で、
まだデセイ様は終わっていない、
という思いに胸が熱くなりました。
歌の技術自体は矢張り全盛期の完璧さとは程遠いのですが、
歌い回しにはかつての軽快さがかなり復活していて、
何より歌芝居のような、
情感を込めた歌い回しが魅力です。
一時期ベルカントにレパートリーを広げて、
無理に重い歌い回しをしていたのですが、
今回のリサイタルで、
初期の軽やかなコロラトゥーラの華やかさが、
戻っていたことをうれしく思いました。
後半は少し咽喉の調子が悪くなってきて、
エンスト気味の声の引っかかりも増えてしまいましたが、
それでも歌のフォルムはそう崩れることなく、
最後まで持続はされていました。
アンコールのシュトラウスで、
ちょっと当てるという感じの軽い出し方でしたが、
最近は出さない超高音を1回出していて、
19日にはもう少し踏ん張ってくれるかな、
とその点はとても楽しみです。
改めて思いますが、
たとえばグノーの「ファウスト」の宝石の歌を、
このように軽やかかつドラマチックに歌えるコロラトゥーラは、
デセイ様の他にはいません。
もう1日4月19日に公演があります。
今度は絶不調ということもないとは言えないので、
生物の舞台は予測は不能ですが、
12日と同じ調子でしたら、
間違いなく素晴らしい体験になることは確実なので、
ご興味のある方は是非足をお運び下さい。
僕も勿論駆けつけます。
フライングの拍手だけはしないでくださいね。
それでは映画の記事に移ります。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日は声楽が1つと映画が1本です。
最初がこちら。
ナタリー・デセイ様がピアニストのカサールさんと、
2014年に続いてデュオ・リサイタルに来日されました。
4月12日が都民劇場のリサイタル、
それから1日福岡での公演があって、
今週の19日にはもう1回、
新宿のオペラシティでの公演があります。
デセイ様は僕にとっては絶対の藝術神で、
永遠の女神です。
2004年に日本で最初のリサイタルを開き、
東京でのその2回の公演に2回とも足を運びました。
このリサイタルは本当に本当に素晴らしくて、
聴き終わった後はしばらく呆然としていて、
公演は9月にあったのですが、
その年の終わりくらいまでは、
デセイ様のこと以外は殆ど考えられない状態でした。
彼女が目の前で僕のために1曲歌ってくれたら、
その場で咽喉を掻き切って死んでも構わないと、
本当にそのくらいに思いました。
その直後に体調不良で舞台を降板し、
休養に入ったというニュースを聞いた時などは、
フランスまで飛んで行って看病したいような思いにとらわれました。
翌年にメトロポリタン・オペラの「ロミオとジュリエット」で復帰、
というニュースが流れた時は、
真面目にアメリカまで聴きに行くことを考えました。
デセイ様の絶頂期は1998年から2002年くらいまでだと思いますが、
その時にどうして真の藝術を求めて、
何故ヨーロッパやアメリカに足を運ばなかったのかと、
それなしで空しく生きていても何の喜びがあろうかと、
そんなことを毎日悔いるような日々が続きました。
次の来日は2007年のことで、
日本でのデセイ様の人気は、
この時がピークであったと思います。
オペラシティのコンサートホールで、
3日間のリサイタルが行われ、
3日ともほぼ満席でした。
こんなことはあまりソプラノ歌手ではないことでした。
ただ、この時のデセイ様の調子はあまり良くなくて、
咽喉が何度も引っかかるように声が途切れ、
高音もあまり出ず、
ピアニシモの持続も困難でした。
3日のうち1日くらいはいいだろうと思い、
3日とも聴きに行きましたが、
結果としては3日とも同じ状態でした。
次の来日は何とオペラで、
2010年に「椿姫」の舞台に3回立ちました。
これも勿論全日程に足を運びました。
これはこれで素晴らしい舞台でしたが、
デセイ様にベルカントはあまり似合わないと、
そんな思いは抜けませんでした。
出来はまあまあというレベルだったと思います。
それから2012年にマリインスキー管弦楽団の演奏会に参加し、
「ルチア」のタイトルロールを演奏会形式で全幕歌いました。
この公演は1回きりでしたが、
素晴らしいもので、
奇跡的に声は持続され、
いつもの声帯のエンストのような引っかかりもありませんでした。
全盛期のような超高音はありませんでしたが、
歌い回しには間違いのない天才が宿っていました。
デセイ様の「ルチア」にようやく間に合い、
本当に幸せでした。
しかし、真の代表作であった、
「ラクメ」や「ハムレット」には間に合いませんでした。
その翌年の秋にデセイ様はオペラを引退しました。
そして、2014年にはカサールさんと歌曲主体のリサイタルに来日しました。
この公演はプログラムは意欲的なものでしたが、
デセイ様の声は絶不調で、
まともに歌えた曲は、
正直2回の公演で通算しても1曲もない惨状に終わりました。
絶えず声は突っかかって途切れ、
ピアニシモは持続せず、
高音もまるで出ないという無残な状態でした。
そして、今回同じカサールさんとのリサイタルで、
デセイ様は来日されました。
僕は正直あまり期待はせずに劇場に足を運びました。
それでも、彼女が出て来る直前には、
思春期のようにドキドキしましたし、
第一声を発する直前には心臓が止まりました。
4月12日の公演は2014年とはくらべものにならない良い出来で、
まだデセイ様は終わっていない、
という思いに胸が熱くなりました。
歌の技術自体は矢張り全盛期の完璧さとは程遠いのですが、
歌い回しにはかつての軽快さがかなり復活していて、
何より歌芝居のような、
情感を込めた歌い回しが魅力です。
一時期ベルカントにレパートリーを広げて、
無理に重い歌い回しをしていたのですが、
今回のリサイタルで、
初期の軽やかなコロラトゥーラの華やかさが、
戻っていたことをうれしく思いました。
後半は少し咽喉の調子が悪くなってきて、
エンスト気味の声の引っかかりも増えてしまいましたが、
それでも歌のフォルムはそう崩れることなく、
最後まで持続はされていました。
アンコールのシュトラウスで、
ちょっと当てるという感じの軽い出し方でしたが、
最近は出さない超高音を1回出していて、
19日にはもう少し踏ん張ってくれるかな、
とその点はとても楽しみです。
改めて思いますが、
たとえばグノーの「ファウスト」の宝石の歌を、
このように軽やかかつドラマチックに歌えるコロラトゥーラは、
デセイ様の他にはいません。
もう1日4月19日に公演があります。
今度は絶不調ということもないとは言えないので、
生物の舞台は予測は不能ですが、
12日と同じ調子でしたら、
間違いなく素晴らしい体験になることは確実なので、
ご興味のある方は是非足をお運び下さい。
僕も勿論駆けつけます。
フライングの拍手だけはしないでくださいね。
それでは映画の記事に移ります。
2017-04-16 09:37
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コメント(2)
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こんにちは。たったいま、福岡公演を聴いてきました。ほんの数回だけ声がかすれたり、引っかかる場面がありましたが、全体として本当に素晴らしい演奏でした。ただ、少し風邪ぎみなのか、ときどき鼻水をすすっていたのが気になりました。私はデセイの生の歌を聴くのはじめてでしたので、(サインまでいただいて)とても感動しました。
by Naru (2017-04-16 18:08)
Naruさんへ
そうですか。
まずまずの出来だったようで良かったです。
私も以前はデセイ様が咳をしたり鼻をすする仕草をするのを、
風邪を引いているのかと思ったのですが、
ここ数年は毎回そうなので、
どうもそうではなさそうです。
声がひっかかりそうになる時に、
何かそれを修正するために、
そうした仕草をしているように最近は思います。
咳込みは間違いなくそうですが、
鼻をすするのはアレルギーなのかも知れません。
by fujiki (2017-04-16 19:02)