アメリカにおける甲状腺癌の頻度(1974年から2013年の解析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は
午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
アメリカにおける甲状腺癌の頻度の傾向についての論文です。
皆さんも良くご存じのように、
甲状腺癌が診断される頻度は、
最近世界的に増加しています。
アメリカの統計においては、
1975年から2013年の間に、
甲状腺癌の診断される頻度は211%増加しています。
ただ、この間に甲状腺の超音波診断が非常に進歩し、
それまでは発見されなかったような小さな甲状腺癌が、
多く発見されるようになったので、
そのことが甲状腺癌の増加の、
主な要因になっているという考え方があり、
実際に甲状腺癌の超音波検診を積極的に行なった韓国では、
20年弱でその診断数が15倍以上増加していて、
その多くが過剰診断であることは、
ほぼ確実と考えられています。
ただその一方で、
甲状腺癌の発症頻度自体も最近増えていて、
特に悪性度の高い甲状腺癌が増加しているのではないか、
という意見もあります。
そのどちらが正しいのでしょうか?
今回の検証はアメリカにおいて、
SEERという地域癌登録データを活用して、
その診断時点での腫瘍の大きさや組織型進行度と、
時代毎の頻度との関連を詳細に検証しています。
その結果…
1974年から2013年の登録において、
77276名の甲状腺癌の患者さんが診断されています。
75%は女性です。
そのうちの64625件は乳頭癌です。
同じ時期に甲状腺癌での死亡者は2371名です。
この間に毎年平均で3.6%増加しており、
1974年から1977年には、
年間10万人当たり4.56件であったものが、
2010年から2013年には、
年間10万人当たり14.42件に増加していました。
甲状腺乳頭癌の罹患率を、
癌の進行度毎に比較すると、
甲状腺内の留まる状態で診断された癌が、
年間4.6%の増加であるのに対して、
周辺組織への浸潤はあるものの遠隔転移のない癌は、
年間4.3%の増加、
遠隔転移のある癌が年間2.4%の増加となっていました。
つまり、進行癌も増加しているという結果で、
これは診断法の進歩によって、
早期癌が発見されるようになったので、
見かけ上癌の罹患率が増えた、
という見解に疑義を呈するものです。
また、癌と診断された事例における死亡率は、
毎年1.1%の増加を示していて、
遠隔転移の事例に限ると、
年間2.9%の増加を示していました。
つまり、
診断法の進歩により修飾されていることは事実ですが、
それでも進行癌自体もこの40年に渡り増加していて、
その死亡率自体も増加している、
言い換えれば、
悪性度の高い甲状腺癌の罹患率が増え、
治療の進歩にも関わらず、
その死亡率も増加している、
ということが確認されました。
それでは何故、
甲状腺癌は悪性度を増して増加しているのでしょうか?
上記文献の著者らの見解としては、
何等かの環境因子が影響しているのではないか、
と推論しています。
肥満によるインスリン抵抗性は甲状腺癌のリスクになり、
一方で喫煙は甲状腺癌のリスクを低下させます。
診断のために多用されている、
医療放射線被ばくの影響も皆無とは言えません。
ただ、これ以上は推測の域を得ず、
今後のさらなる検証が必要な事項であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は
午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
アメリカにおける甲状腺癌の頻度の傾向についての論文です。
皆さんも良くご存じのように、
甲状腺癌が診断される頻度は、
最近世界的に増加しています。
アメリカの統計においては、
1975年から2013年の間に、
甲状腺癌の診断される頻度は211%増加しています。
ただ、この間に甲状腺の超音波診断が非常に進歩し、
それまでは発見されなかったような小さな甲状腺癌が、
多く発見されるようになったので、
そのことが甲状腺癌の増加の、
主な要因になっているという考え方があり、
実際に甲状腺癌の超音波検診を積極的に行なった韓国では、
20年弱でその診断数が15倍以上増加していて、
その多くが過剰診断であることは、
ほぼ確実と考えられています。
ただその一方で、
甲状腺癌の発症頻度自体も最近増えていて、
特に悪性度の高い甲状腺癌が増加しているのではないか、
という意見もあります。
そのどちらが正しいのでしょうか?
今回の検証はアメリカにおいて、
SEERという地域癌登録データを活用して、
その診断時点での腫瘍の大きさや組織型進行度と、
時代毎の頻度との関連を詳細に検証しています。
その結果…
1974年から2013年の登録において、
77276名の甲状腺癌の患者さんが診断されています。
75%は女性です。
そのうちの64625件は乳頭癌です。
同じ時期に甲状腺癌での死亡者は2371名です。
この間に毎年平均で3.6%増加しており、
1974年から1977年には、
年間10万人当たり4.56件であったものが、
2010年から2013年には、
年間10万人当たり14.42件に増加していました。
甲状腺乳頭癌の罹患率を、
癌の進行度毎に比較すると、
甲状腺内の留まる状態で診断された癌が、
年間4.6%の増加であるのに対して、
周辺組織への浸潤はあるものの遠隔転移のない癌は、
年間4.3%の増加、
遠隔転移のある癌が年間2.4%の増加となっていました。
つまり、進行癌も増加しているという結果で、
これは診断法の進歩によって、
早期癌が発見されるようになったので、
見かけ上癌の罹患率が増えた、
という見解に疑義を呈するものです。
また、癌と診断された事例における死亡率は、
毎年1.1%の増加を示していて、
遠隔転移の事例に限ると、
年間2.9%の増加を示していました。
つまり、
診断法の進歩により修飾されていることは事実ですが、
それでも進行癌自体もこの40年に渡り増加していて、
その死亡率自体も増加している、
言い換えれば、
悪性度の高い甲状腺癌の罹患率が増え、
治療の進歩にも関わらず、
その死亡率も増加している、
ということが確認されました。
それでは何故、
甲状腺癌は悪性度を増して増加しているのでしょうか?
上記文献の著者らの見解としては、
何等かの環境因子が影響しているのではないか、
と推論しています。
肥満によるインスリン抵抗性は甲状腺癌のリスクになり、
一方で喫煙は甲状腺癌のリスクを低下させます。
診断のために多用されている、
医療放射線被ばくの影響も皆無とは言えません。
ただ、これ以上は推測の域を得ず、
今後のさらなる検証が必要な事項であるようです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2017-04-04 09:11
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