「ムーンライト」 [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
昨年の米アカデミー作品賞を受賞した、
「ムーンライト」を封切り初日に観て来ました。
最近のアカデミー作品賞の受賞作は、
あまり好みに合わないことが多いのですが、
この作品は繊細で詩情に溢れた素敵な映画で、
最近の受賞作の中では個人的には一番好きです。
黒人でゲイで麻薬の売人で、
唯一の肉親の母親は麻薬中毒という、
かなり凄まじい設定の主人公の、
少年期と思春期と青年期とを、
それぞれ別の俳優が演じて、
3つのオムニバスのように構成されています。
話はかなり殺伐としてドロドロした部分があるのですが、
一番暴力的な部分は、
3つのエピソードの間の時間にあって、
語られていないという構成がユニークで、
それでいて物足りなさは不思議と感じません。
それは語るべきことがしっかりと語られているからで、
むしろ省略の部分に、
「取返しのつかない何かが終わったしまった」
という情感が滲み出て、
それが観客の心に深い余韻を残すのです。
これまでのアメリカ映画の感動のさせ方とは、
ちょっと違う感じがあり、
ウォン・カーウェイにも似た感じがありますし、
初期の北野武映画に近いような感じもあります。
そうした映画がお好きな方には、
是非観て頂きたいと思います。
主な舞台はマイアミですが、
その乾いた空気感のようなものが、
リアルに肌触りとして感じられます。
それに対比されているのが、
主人公が恋焦がれる象徴としての「海」で、
少年時代の主人公が、
薬の売人の男と一緒に海に入る場面が、
観客まで一緒に水に触れているような、
体感的な描写で素晴らしく、
その後は洗面台の冷水でしか、
主人公は水と触れることがないのですが、
最後に恋人の胸の中で、
少年時代の姿の主人公は、
静かに月光の輝く海に帰って来るのです。
とても素敵なラストでした。
主人公を演じた3人はいずれも素晴らしく、
決して似たビジュアルではないのですが、
巧みな編集は観客を混乱させることがありませんし、
ちょっとした仕草や表情が、
確かに同一人物であることを感じさせるのが上手いと思います。
少年時代の主人公の庇護者であった薬の売人を演じた、
マハーシャラ・アリがアカデミーの助演男優賞を取っていて、
出番は短いのですが、
確かに印象的な演技です。
どうしようもない母親を3つの時代全てで演じたナオミ・ハリスも、
マハーシャラ・アリに劣らぬ名演でした。
映像はシネスコの画面を活かした、
体感的な描写や空気感が素晴らしく、
技巧的なワンカットや、
MV的なカットもあるのですが、
正攻法の描写と遊びの部分が綺麗に融合しています。
如何にも黒人映画という感じの音効も素敵でした。
そんな訳で非常にクオリティの高い、
繊細で情感に溢れた素敵な映画で、
それほど長くもありませんし、
是非にお勧めしたいと思います。
清涼感のあるスッキリとした後味は、
最近の映画ではあまり感じられない性質のものだと思います。
それでは次の記事に続きます。
もう1本映画、それから演劇です。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
昨年の米アカデミー作品賞を受賞した、
「ムーンライト」を封切り初日に観て来ました。
最近のアカデミー作品賞の受賞作は、
あまり好みに合わないことが多いのですが、
この作品は繊細で詩情に溢れた素敵な映画で、
最近の受賞作の中では個人的には一番好きです。
黒人でゲイで麻薬の売人で、
唯一の肉親の母親は麻薬中毒という、
かなり凄まじい設定の主人公の、
少年期と思春期と青年期とを、
それぞれ別の俳優が演じて、
3つのオムニバスのように構成されています。
話はかなり殺伐としてドロドロした部分があるのですが、
一番暴力的な部分は、
3つのエピソードの間の時間にあって、
語られていないという構成がユニークで、
それでいて物足りなさは不思議と感じません。
それは語るべきことがしっかりと語られているからで、
むしろ省略の部分に、
「取返しのつかない何かが終わったしまった」
という情感が滲み出て、
それが観客の心に深い余韻を残すのです。
これまでのアメリカ映画の感動のさせ方とは、
ちょっと違う感じがあり、
ウォン・カーウェイにも似た感じがありますし、
初期の北野武映画に近いような感じもあります。
そうした映画がお好きな方には、
是非観て頂きたいと思います。
主な舞台はマイアミですが、
その乾いた空気感のようなものが、
リアルに肌触りとして感じられます。
それに対比されているのが、
主人公が恋焦がれる象徴としての「海」で、
少年時代の主人公が、
薬の売人の男と一緒に海に入る場面が、
観客まで一緒に水に触れているような、
体感的な描写で素晴らしく、
その後は洗面台の冷水でしか、
主人公は水と触れることがないのですが、
最後に恋人の胸の中で、
少年時代の姿の主人公は、
静かに月光の輝く海に帰って来るのです。
とても素敵なラストでした。
主人公を演じた3人はいずれも素晴らしく、
決して似たビジュアルではないのですが、
巧みな編集は観客を混乱させることがありませんし、
ちょっとした仕草や表情が、
確かに同一人物であることを感じさせるのが上手いと思います。
少年時代の主人公の庇護者であった薬の売人を演じた、
マハーシャラ・アリがアカデミーの助演男優賞を取っていて、
出番は短いのですが、
確かに印象的な演技です。
どうしようもない母親を3つの時代全てで演じたナオミ・ハリスも、
マハーシャラ・アリに劣らぬ名演でした。
映像はシネスコの画面を活かした、
体感的な描写や空気感が素晴らしく、
技巧的なワンカットや、
MV的なカットもあるのですが、
正攻法の描写と遊びの部分が綺麗に融合しています。
如何にも黒人映画という感じの音効も素敵でした。
そんな訳で非常にクオリティの高い、
繊細で情感に溢れた素敵な映画で、
それほど長くもありませんし、
是非にお勧めしたいと思います。
清涼感のあるスッキリとした後味は、
最近の映画ではあまり感じられない性質のものだと思います。
それでは次の記事に続きます。
もう1本映画、それから演劇です。
2017-04-02 13:56
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