アガリスクエンターテイメント「時をかける稽古場2.0」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
討論型のシチュエーションコメディに異彩を放つ、
アガリスクエンターテイメントの公演に足を運びました。
今回は2014年に好評であった作品の再演で、
僕は初演は映像でしか見ていません。
人物設定などが少し異なっていましたが、
基本的な内容は初演と同じだったと思います。
小劇場の劇団が、
公演の2週間前になっても台本が全く出来ていない、
という状況で、
公演前日と入れ替わることが出来るという、
一種のタイムマシンが出現して、
如何に次の公演を実現するかというその一点で、
劇団員が大騒ぎを繰り広げるという2時間10分のドラマです。
アガリスクエンターテイメントという劇団が、
今のメンバーで上演する芝居としては、
一番無理のない設定であり内容だったと思います。
海外を舞台にしたシチュエーションコメディなども、
上演はされているのですが、
このキャストでは厳しいなあ、
と正直思うことが多く、
その点今回の作品はほぼ等身大の自分自身を演じているので、
違和感なく観ることが出来ますし、
作品世界にも入り込みやすいのです。
話し合いやエチュードを重ねながら、
丁寧に作品世界を構成したいったことが分かる内容で、
個々の役者さんの台詞は皆自分のものになっていて、
実際に稽古場に居合わせているように、
その遣り取りをリアルに感じることが出来ます。
正直なところ、
後半に少し失速する感じがあり、
トータルな完成度は後半で盛り上がりを見せる、
「紅白旗合戦」辺りと比べると落ちると思うのですが、
スタッフワークを含めたトータルな舞台の質としては、
僕が観た作品の中では、
これまでで最も高いものだったと思います。
一見の価値はある舞台としてお勧めです。
以下ネタバレを含む感想です。
発想の元ネタは、
ドラえもんの続きが描けなくなった人気漫画家のエピソードで、
タイムマシンで未来に行き、
次回の連載の載った雑誌を買って来て、
それを元にして続きを描くのですが、
それを実際に描いたのは誰なのかが分からなくなるという、
タイムパラドックスを扱った話です。
それ以外に藤子不二雄の短編の、
色々な年代の自分が会議をする話も、
参考にされているという気がします。
それを、戯曲が書けなくて本番2週間前になった、
小劇場の話に置き換えて、
台本がギリギリで出来上がった、
本番1日前と人物だけが入れ替わる、という話にして、
ちょっとひねった「ショー・マスト・ゴー・オン」の、
シチュエーションコメディに仕立てています。
前半は軽快に物語は進み、
公演直前に代役が立っているのは何故、
というようなミステリアスな部分を作って、
そこから未来の人間に現在の人間が、
次々と乗っ取られるような、
「ボディ・スナッチャー」テーマに移行する辺りが冴えていて、
これは素晴らしいじゃないか、
と感心しながら舞台を見つめました。
ここまでは最高です。
ただ、それ以降でより未来の人間が現れたりする辺りから、
少し物語が失速する感じになり、
インフルエンザで公演中止という展開には、
オヤオヤという感じで元気がなくなり、
最後もあまりキチンと物語に決着が付く、
というようにはならないので、
何かモヤモヤした終演となりました。
中段までは抜群の破壊力だっただけに、
個人的にはとても残念です。
結果的に「好きな時間を念じるとそこに行ける」
というようなご都合主義の話になっていて、
最初の公演直前と2週間前のみが入れ替わる、
という設定から、
大きく逸脱してしまったのが、
作品の求心力を弱めてしまったような気がします。
「それならもう、何でもありじゃん」
と思ってしまって、
舞台上の理屈っぽい遣り取りに、
あまり興味が持てなくなってしまうのです。
ここは矢張りワーム・ホールが1か所だけ開いている、
ということにして、
その枠組みの中で物語を展開させた方が、
より求心力のある作品に仕上がったのではないでしょうか?
作品の前半と後半とで、
この作品はテーマが変わるのですが、
そこが観客の生理と上手く一致していないという気がするのです。
台本がないから舞台が開かない、
という話が、
劇団員がインフルエンザで休んだので公演が中止になった、
という話になってしまって、
台本はどうとでもなるかのように、
後半には感じられてしまうので、
台本が出来ないというハラハラドキドキが、
消滅してしまうのが良くないと思うのです。
どちらかにテーマを絞った方が、
良かったのではないでしょうか?
この作品の良さは全編に横溢する熱気のようなもので、
ほぼ等身大の自分を演じている役者さんが皆生き生きと躍動し、
冷静に考えれば詰まらないことに、
必死で向かう姿は感動すら覚えます。
役者さんは皆好演で、
僕のひいきは凛々しい熊谷有芳さんですが、
台詞がないと悲しむ姿も楽しく、
大倉孝二さんそっくりの突っ込みボケをする津和野諒さんは、
今回に関しては抜群の脇でした。
セットもこれまでの舞台と比べると、
カッチリプロ仕様で出来ていましたし、
演出も綺麗で洒落ていました。
それだけに内容の求心力の不足には、
少し残念な思いもあったのです。
いずれにしても、
主宰の冨坂友さんが、
シチュエーション・コメディの、
稀有の書き手であることは間違いなく、
今後も期待をしつつ公演を待ちたいと思います。
頑張って下さい。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
討論型のシチュエーションコメディに異彩を放つ、
アガリスクエンターテイメントの公演に足を運びました。
今回は2014年に好評であった作品の再演で、
僕は初演は映像でしか見ていません。
人物設定などが少し異なっていましたが、
基本的な内容は初演と同じだったと思います。
小劇場の劇団が、
公演の2週間前になっても台本が全く出来ていない、
という状況で、
公演前日と入れ替わることが出来るという、
一種のタイムマシンが出現して、
如何に次の公演を実現するかというその一点で、
劇団員が大騒ぎを繰り広げるという2時間10分のドラマです。
アガリスクエンターテイメントという劇団が、
今のメンバーで上演する芝居としては、
一番無理のない設定であり内容だったと思います。
海外を舞台にしたシチュエーションコメディなども、
上演はされているのですが、
このキャストでは厳しいなあ、
と正直思うことが多く、
その点今回の作品はほぼ等身大の自分自身を演じているので、
違和感なく観ることが出来ますし、
作品世界にも入り込みやすいのです。
話し合いやエチュードを重ねながら、
丁寧に作品世界を構成したいったことが分かる内容で、
個々の役者さんの台詞は皆自分のものになっていて、
実際に稽古場に居合わせているように、
その遣り取りをリアルに感じることが出来ます。
正直なところ、
後半に少し失速する感じがあり、
トータルな完成度は後半で盛り上がりを見せる、
「紅白旗合戦」辺りと比べると落ちると思うのですが、
スタッフワークを含めたトータルな舞台の質としては、
僕が観た作品の中では、
これまでで最も高いものだったと思います。
一見の価値はある舞台としてお勧めです。
以下ネタバレを含む感想です。
発想の元ネタは、
ドラえもんの続きが描けなくなった人気漫画家のエピソードで、
タイムマシンで未来に行き、
次回の連載の載った雑誌を買って来て、
それを元にして続きを描くのですが、
それを実際に描いたのは誰なのかが分からなくなるという、
タイムパラドックスを扱った話です。
それ以外に藤子不二雄の短編の、
色々な年代の自分が会議をする話も、
参考にされているという気がします。
それを、戯曲が書けなくて本番2週間前になった、
小劇場の話に置き換えて、
台本がギリギリで出来上がった、
本番1日前と人物だけが入れ替わる、という話にして、
ちょっとひねった「ショー・マスト・ゴー・オン」の、
シチュエーションコメディに仕立てています。
前半は軽快に物語は進み、
公演直前に代役が立っているのは何故、
というようなミステリアスな部分を作って、
そこから未来の人間に現在の人間が、
次々と乗っ取られるような、
「ボディ・スナッチャー」テーマに移行する辺りが冴えていて、
これは素晴らしいじゃないか、
と感心しながら舞台を見つめました。
ここまでは最高です。
ただ、それ以降でより未来の人間が現れたりする辺りから、
少し物語が失速する感じになり、
インフルエンザで公演中止という展開には、
オヤオヤという感じで元気がなくなり、
最後もあまりキチンと物語に決着が付く、
というようにはならないので、
何かモヤモヤした終演となりました。
中段までは抜群の破壊力だっただけに、
個人的にはとても残念です。
結果的に「好きな時間を念じるとそこに行ける」
というようなご都合主義の話になっていて、
最初の公演直前と2週間前のみが入れ替わる、
という設定から、
大きく逸脱してしまったのが、
作品の求心力を弱めてしまったような気がします。
「それならもう、何でもありじゃん」
と思ってしまって、
舞台上の理屈っぽい遣り取りに、
あまり興味が持てなくなってしまうのです。
ここは矢張りワーム・ホールが1か所だけ開いている、
ということにして、
その枠組みの中で物語を展開させた方が、
より求心力のある作品に仕上がったのではないでしょうか?
作品の前半と後半とで、
この作品はテーマが変わるのですが、
そこが観客の生理と上手く一致していないという気がするのです。
台本がないから舞台が開かない、
という話が、
劇団員がインフルエンザで休んだので公演が中止になった、
という話になってしまって、
台本はどうとでもなるかのように、
後半には感じられてしまうので、
台本が出来ないというハラハラドキドキが、
消滅してしまうのが良くないと思うのです。
どちらかにテーマを絞った方が、
良かったのではないでしょうか?
この作品の良さは全編に横溢する熱気のようなもので、
ほぼ等身大の自分を演じている役者さんが皆生き生きと躍動し、
冷静に考えれば詰まらないことに、
必死で向かう姿は感動すら覚えます。
役者さんは皆好演で、
僕のひいきは凛々しい熊谷有芳さんですが、
台詞がないと悲しむ姿も楽しく、
大倉孝二さんそっくりの突っ込みボケをする津和野諒さんは、
今回に関しては抜群の脇でした。
セットもこれまでの舞台と比べると、
カッチリプロ仕様で出来ていましたし、
演出も綺麗で洒落ていました。
それだけに内容の求心力の不足には、
少し残念な思いもあったのです。
いずれにしても、
主宰の冨坂友さんが、
シチュエーション・コメディの、
稀有の書き手であることは間違いなく、
今後も期待をしつつ公演を待ちたいと思います。
頑張って下さい。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2017-03-26 12:40
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