三谷幸喜「不信~彼女が嘘をつく理由」 [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日2本目の記事は演劇の話題です。
それがこちら。
三谷幸喜さんの新作が、
今池袋の東京芸術劇場シアターイーストで、
ほぼ2か月のロングラン上演中です。
これは段田安則さん、優香さん、戸田恵子さん、栗原英雄さんの、
完全な4人芝居で、
2組の夫婦のサスペンス仕立てのやりとりを、
シンプルな中央舞台で鑑賞する、と言う趣向です。
前半が1時間、後半も1時間あって、
その間に15分の休憩が入ります。
これは推理劇を作ろうとしたのだと思うのです。
トマなどのフランス産の推理台詞劇のパターンです。
三谷さんはドラマでは言わずと知れた古畑任三郎という、
推理ドラマの傑作を作っていますが、
演劇においてはミステリー色のある作品は多くても、
本格的な推理劇はあまりなく、
これまでに成功した舞台もないように思います。
今回の舞台はなかなかソツなくまとめていたと思うのですが、
推理劇としてはかなり凡庸な仕上がりで、
コロンボでさんざん使い古しのトリック(オリジナルはガーヴ)、
などが出て来て脱力する感じになりますし、
内容の意外性的なものが、
ほぼ全て先読みが出来るレベルのものなので、
観ていて少し意識レベルが低下してしまいました。
4人のキャストはいずれ劣らぬ手練れなので、
その意味では安定して観ることが出来ました。
今回は特に優香さんが良かったと思います。
役柄も一番丁寧に振幅大きく描けていましたし、
その期待に応える芝居を見せてくれたと思います。
段田安則さんと戸田恵子さんは、
相変わらず上手いのですが、
役柄に作者の熱意があまり感じられない気がするのが、
少し残念でした。
以下ネタバレを含む感想です。
段田安則さんは高校教師で、
その妻の優香さんもOLをしています。
この2人が隣人の夫婦を訪れるところから物語は始まります。
隣人は公務員と名乗る栗原英雄さんと、
専業主婦の戸田恵子さんの夫婦です。
2人は交流するようになるのですが、
優香さんが隣町の高級スーパーで、
戸田恵子さんが万引きをする現場を見てしまいます。
その秘密を夫の栗原さんに段田さんが話すと、
口止め料として200万円が渡され、
それを段田さんが妻には言わずに、
着服して愛人への手切れ金に使ったところから、
話は入り組んだ格好になり、
ついには殺人事件に発展します。
この段取りを4人の俳優の会話だけで、
軽快かつスピーディに進めてゆきます。
舞台上には6つの直方体の椅子があって、
それが自由自在に移動して、
幾つもの構図を表現する装置が洒落ています。
ただ、あまりにスムースに話が進むので、
淡々として盛り上がりには欠けます。
推理劇としては最初に書いたように、
筋立ては凡庸ですぐに先が読めてしまう感じなので、
次がどうなるのだろうと、
ワクワクする感じがないのです。
得意の言葉や人物のすれ違いによるギャグも、
今回はくすぐり程度に終わっていました。
役者は皆本当に上手いのですが、
役柄の振幅がそれほど大きくはなく、
この人の見せ場はここ、
と言う感じがあまりないので、
優香さん以外は、
それほど印象に残ることなく終わってしまいました。
特に戸田恵子さんは、
最近あまりエネルギー全開、
というような芝居に恵まれていないのが残念です。
「エノケソ一代記」でも感じましたが、
最近の三谷さんは長台詞が面白くなく、
淡々として内容がないので、
舞台が沈んでしまう感じになります。
今回も殺人の後の独白などがあるのですが、
大変詰まらなくてガッカリしました。
そんな訳でちょっとモヤモヤする感じの芝居でしたが、
きちんと帳尻は合わせて、
最低限見せるべきものは見せている、
と言う点はさすがにプロの仕事で、
ちょっとお芝居でも、
という向きにはそこそこお勧めの舞台にはなっていました。
三谷さんには、
また、「絶対これが描きたい」
というようなテーマが訪れることを、
期待しつつ、
これからも劇場には足を運びたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日2本目の記事は演劇の話題です。
それがこちら。
三谷幸喜さんの新作が、
今池袋の東京芸術劇場シアターイーストで、
ほぼ2か月のロングラン上演中です。
これは段田安則さん、優香さん、戸田恵子さん、栗原英雄さんの、
完全な4人芝居で、
2組の夫婦のサスペンス仕立てのやりとりを、
シンプルな中央舞台で鑑賞する、と言う趣向です。
前半が1時間、後半も1時間あって、
その間に15分の休憩が入ります。
これは推理劇を作ろうとしたのだと思うのです。
トマなどのフランス産の推理台詞劇のパターンです。
三谷さんはドラマでは言わずと知れた古畑任三郎という、
推理ドラマの傑作を作っていますが、
演劇においてはミステリー色のある作品は多くても、
本格的な推理劇はあまりなく、
これまでに成功した舞台もないように思います。
今回の舞台はなかなかソツなくまとめていたと思うのですが、
推理劇としてはかなり凡庸な仕上がりで、
コロンボでさんざん使い古しのトリック(オリジナルはガーヴ)、
などが出て来て脱力する感じになりますし、
内容の意外性的なものが、
ほぼ全て先読みが出来るレベルのものなので、
観ていて少し意識レベルが低下してしまいました。
4人のキャストはいずれ劣らぬ手練れなので、
その意味では安定して観ることが出来ました。
今回は特に優香さんが良かったと思います。
役柄も一番丁寧に振幅大きく描けていましたし、
その期待に応える芝居を見せてくれたと思います。
段田安則さんと戸田恵子さんは、
相変わらず上手いのですが、
役柄に作者の熱意があまり感じられない気がするのが、
少し残念でした。
以下ネタバレを含む感想です。
段田安則さんは高校教師で、
その妻の優香さんもOLをしています。
この2人が隣人の夫婦を訪れるところから物語は始まります。
隣人は公務員と名乗る栗原英雄さんと、
専業主婦の戸田恵子さんの夫婦です。
2人は交流するようになるのですが、
優香さんが隣町の高級スーパーで、
戸田恵子さんが万引きをする現場を見てしまいます。
その秘密を夫の栗原さんに段田さんが話すと、
口止め料として200万円が渡され、
それを段田さんが妻には言わずに、
着服して愛人への手切れ金に使ったところから、
話は入り組んだ格好になり、
ついには殺人事件に発展します。
この段取りを4人の俳優の会話だけで、
軽快かつスピーディに進めてゆきます。
舞台上には6つの直方体の椅子があって、
それが自由自在に移動して、
幾つもの構図を表現する装置が洒落ています。
ただ、あまりにスムースに話が進むので、
淡々として盛り上がりには欠けます。
推理劇としては最初に書いたように、
筋立ては凡庸ですぐに先が読めてしまう感じなので、
次がどうなるのだろうと、
ワクワクする感じがないのです。
得意の言葉や人物のすれ違いによるギャグも、
今回はくすぐり程度に終わっていました。
役者は皆本当に上手いのですが、
役柄の振幅がそれほど大きくはなく、
この人の見せ場はここ、
と言う感じがあまりないので、
優香さん以外は、
それほど印象に残ることなく終わってしまいました。
特に戸田恵子さんは、
最近あまりエネルギー全開、
というような芝居に恵まれていないのが残念です。
「エノケソ一代記」でも感じましたが、
最近の三谷さんは長台詞が面白くなく、
淡々として内容がないので、
舞台が沈んでしまう感じになります。
今回も殺人の後の独白などがあるのですが、
大変詰まらなくてガッカリしました。
そんな訳でちょっとモヤモヤする感じの芝居でしたが、
きちんと帳尻は合わせて、
最低限見せるべきものは見せている、
と言う点はさすがにプロの仕事で、
ちょっとお芝居でも、
という向きにはそこそこお勧めの舞台にはなっていました。
三谷さんには、
また、「絶対これが描きたい」
というようなテーマが訪れることを、
期待しつつ、
これからも劇場には足を運びたいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2017-03-20 10:13
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