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低尿酸値症の腎障害リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談などに廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
低尿酸値症と急性腎障害との関係.jpg
2016年のClin Exp Nephrol誌の論文ですが、
高知医科大学において、
入院患者の急性腎障害の発症と、
尿酸値との関連を検証したものです。

今年日本痛風・核酸代謝学会は、
腎性低尿酸血症の診療ガイドラインを発表する予定で、
その概要が公表されています。

要するに低尿酸血症のガイドラインです。

尿酸が高いと足の指の付け根が腫れて痛む、
痛風発作が起こりやすくなることは皆さんも良くご存じだと思います。

そのために、
尿酸の数値が高いと食事のプリン体を減らすように、
食事は注意を受けますし、
尿酸を下げる薬も処方されます。

その一方で尿酸が低くて良くない、
というような話はあまり聞きません。

それでは、尿酸が低いと一体どのような問題があるのでしょうか?

上記文献で取り上げられているのは、
急性の腎機能障害です。

尿酸が高いことも腎障害や心血管疾患のリスクになりますが、
その一方で尿酸が低いことも急性の腎障害のリスクになると報告されています。

体質的な低尿酸血症のある人で、
運動をした後に急性腎不全になることがあり、
運動後急性腎不全などと言われています。

それでは具体的にどのくらいの尿酸値が、
急性の腎障害のリスクになるのでしょうか?

上記文献は高知医科大学において、
64506名の入院患者のデータを解析し、
入院中の急性腎障害の発症と、
尿酸値との関連を検証しています。
このうち10382名に急性腎障害が発症しています。
かなりの高率です。
そのうち最終的には尿酸降下剤が使用されていた患者さんや、
腎障害発症前30日以内の尿酸値が測定されていない事例などを除外して、
最終的には腎障害を起こした7491名と、
腎障害を起こさなかった51728名が比較されています。

その結果はこちらをご覧ください。
尿酸値と急性腎障害.jpg
縦軸が入院中の急性腎障害の発症リスクで、
横軸が尿酸値、青が男性で、赤が女性のデータを示しています。

尿酸値が7mg/dLを超えると、
確かに急性腎障害のリスクは増加していますが、
2㎎/dL未満という低尿酸値症においても、
高尿酸値症をしのぐような、
急性腎障害のリスク増加が認められています。

この2㎎/dL以下というのは、
間違いなく体質的な尿酸の低下を示すもので、
今年発表される予定のガイドラインにおいても、
この数値が基準になるようです。

低尿酸値症で何故腎障害のリスクが高まるのかについては、
尿酸の過剰排泄による尿細管障害など、
推測はありますが、
まだ確定した知見はないようです。

尿酸値は高いことも低いことも腎障害のリスクになり、
尿酸値の異常のある方では、
消炎鎮痛剤の使用や脱水は、
その発症の危険性を増すということは、
情報として知っていて損はないように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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