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食後中性脂肪と急性膵炎との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
中性脂肪と膵炎JAMA.jpg
今月のJAMA Internal Medicine誌にウェブ掲載された、
食後の中性脂肪の数値と急性膵炎の関連についての論文です。

コレステロールの高値が心筋梗塞など、
動脈硬化性疾患のリスクであることは、
世界的に認知された事実ですが、
中性脂肪の高値がどのくらい健康に悪影響を与えるのか、
という点については、
色々な見解があって一定はしていません。

特に中性脂肪の高値を薬物で治療することの基準は、
その効果が明確には示されていないこともあって、
コレステロールのような積極的な介入は、
行われていないのが実際です。

中性脂肪が増加することで、
明らかにそのリスクが増加する疾患として知られているのは、
急性膵炎です。

ただ、明確に急性膵炎の誘因となる中性脂肪の数値は、
885から1000mg/dLを超えるような場合です。

従って、885を超える中性脂肪は、
急性膵炎の予防のために、
治療を行う必要がある、
というガイドラインはあるのですが、
それより低い数値で治療を行うべきか、
という点については、
その裏打ちとなるデータは不足しています。

そこで今回の研究では、
デンマークの大規模な疫学研究のデータを活用して、
食後の中性脂肪の数値と、
急性膵炎のリスク、
そして心筋梗塞のリスクとの関連を検証しています。

116550人の成人のデータを解析した結果として、
食後の中性脂肪の数値が89mg/dL未満の時の急性膵炎の発症リスクが、
年間1万人当たり2.7件であるのに対して、
89から176mg/dLでは4.3件となり、
177から265mg/dLでは5.5件、
266から353mg/dLでは6.3件、
354から442mg/dLでは7.5件、
443mg/dL以上では12件と、
500mg/dL未満という中等度までの中性脂肪においても、
急性膵炎のリスクが中性脂肪濃度に伴い増加していることが確認されました。
89mg/dL未満をコントロールとした時、
他の膵炎に関連のある因子を補正した上で、
中性脂肪が177mg/dL以上では、
有意に急性膵炎のリスクは増加している、
という結果になりました。
443mg/dL以上の群では、
コントロールの8.5倍のリスク増加を認めていました。

一方で心筋梗塞のリスクについては、
同じく中性脂肪が89mg/dL未満をコントロールとした時、
89以上の時点からそのリスクは有意に増加を認めていましたが、
高値でもそのリスクは頭打ちとなり、
443mg/dL以上の群でも3.5倍にとどまっていました。

このように、中性脂肪は比較的軽度の上昇の段階から、
急性膵炎のリスクの増加に結び付いているので、
現時点でも生活指導については、
そのレベルからしっかりと行うべきですし、
薬物治療による急性膵炎の予防効果は、
まだ確立されたものはないと思いますが、
今後の検証を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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