長塚圭史「はたらくおとこ」(2016年再演版) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後ともいつも通りの診療になります。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
阿佐ヶ谷スパイダースの20周年として、
長塚圭史の代表作「はたらくおとこ」が、
12年ぶりに初演と同じ本多劇場で、
女性1人以外は同一キャストで奇跡的に再演されました。
長塚さんは最近ではかなり演劇的傾向が変わっていて、
抽象的でスタイリッシュな舞台が多いのですが、
12年前はもっと泥臭く、
暴力と濃厚な狂気に満ちた舞台を次々と発表していました。
僕は長塚さんの舞台は初見はそれほど早くはなくて、
「はたらくおとこ」と同年の「真昼のビッチ」が最初でした。
これは何か中途半端な舞台で、
その時は松尾スズキさんの作品の、
不出来な物まねのようにしか感じませんでした。
「はたらくおとこ」は初演は実見はしていなくて、
スカパーの録画で観たのですが、
これがビックリするほど素晴らしくて、
非常な感銘を受けました。
その後はほぼ全作品に足を運んでいますが、
矢張り「はたらくおとこ」が抜群で、
次に河原雅彦さんが演出した「テキサス」かと思っています。
後は正直トータルな構成力に難があり、
設定は面白くても、
後半はダラダラしてモタモタして着地もヨロヨロ、
という感じの舞台が多かったのです。
この作品は長塚さんとしては奇跡的に、
ストーリーが極めて緻密に構成されていて、
休憩なしの2時間20分余りの上演時間が、
一瞬も緩むことがありませんし、
長いと感じることもありません。
ラストなどは、
長い悪夢から覚めたような不快感がありながら、
終わってしまうことが心底残念に思えるほどです。
暴力的でヒリヒリするようなタッチの物語ですが、
残酷さを突き抜けたような感じ、
人間の本質に迫るような凄みがあって、
かつラストには地獄の中に一筋の光を見るような、
深い感動の一瞬が待っています。
しかもこの作品は非常に予見的で、
12年前より今の世界にマッチしています。
今回最初に御覧になった方は、
震災と原発事故を想定して書かれたように思われるかも知れませんが、
実際には事故よりずっと前に書かれた作品なのです。
藝術家が冴えている時というのは、
得てしてこういうものなのかも知れません。
この作品は演出も良く、
キャストも絶妙です。
長塚さんの劇作と演出のスタイルは、
この10年で随分と変わりましたから、
旧作を全く別個のスタイルで演出するという、
野田秀樹さんのような手法を危惧したのですが、
実際にはキャストも女性1人を除いては、
初演と全く同じで、
演出も基本的には初演を踏襲したものでした。
そればかりか、
前回登場した役者さんの演技は、
皆より円熟味を増していて磨きが掛かり、
初演を乗り越えたと感じる部分も多く見られました。
こんな興奮はざらにあることではありません。
キャストは皆素晴らしかったのですが、
今回は特に普段おちゃらけた役の多い池田成志さんが、
その落ち味は活かしながらも、
秘密を抱えた中年男の悲哀を見事に感じさせて、
ラストの感動の中心にいたのには素直に良かったと思いました。
上演はまだ続いていますので、
「これぞ小劇場!」という芝居を体験したい方は、
是非劇場に足をお運び下さい。
その期待は、
まず裏切られることはないと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で午前午後ともいつも通りの診療になります。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
阿佐ヶ谷スパイダースの20周年として、
長塚圭史の代表作「はたらくおとこ」が、
12年ぶりに初演と同じ本多劇場で、
女性1人以外は同一キャストで奇跡的に再演されました。
長塚さんは最近ではかなり演劇的傾向が変わっていて、
抽象的でスタイリッシュな舞台が多いのですが、
12年前はもっと泥臭く、
暴力と濃厚な狂気に満ちた舞台を次々と発表していました。
僕は長塚さんの舞台は初見はそれほど早くはなくて、
「はたらくおとこ」と同年の「真昼のビッチ」が最初でした。
これは何か中途半端な舞台で、
その時は松尾スズキさんの作品の、
不出来な物まねのようにしか感じませんでした。
「はたらくおとこ」は初演は実見はしていなくて、
スカパーの録画で観たのですが、
これがビックリするほど素晴らしくて、
非常な感銘を受けました。
その後はほぼ全作品に足を運んでいますが、
矢張り「はたらくおとこ」が抜群で、
次に河原雅彦さんが演出した「テキサス」かと思っています。
後は正直トータルな構成力に難があり、
設定は面白くても、
後半はダラダラしてモタモタして着地もヨロヨロ、
という感じの舞台が多かったのです。
この作品は長塚さんとしては奇跡的に、
ストーリーが極めて緻密に構成されていて、
休憩なしの2時間20分余りの上演時間が、
一瞬も緩むことがありませんし、
長いと感じることもありません。
ラストなどは、
長い悪夢から覚めたような不快感がありながら、
終わってしまうことが心底残念に思えるほどです。
暴力的でヒリヒリするようなタッチの物語ですが、
残酷さを突き抜けたような感じ、
人間の本質に迫るような凄みがあって、
かつラストには地獄の中に一筋の光を見るような、
深い感動の一瞬が待っています。
しかもこの作品は非常に予見的で、
12年前より今の世界にマッチしています。
今回最初に御覧になった方は、
震災と原発事故を想定して書かれたように思われるかも知れませんが、
実際には事故よりずっと前に書かれた作品なのです。
藝術家が冴えている時というのは、
得てしてこういうものなのかも知れません。
この作品は演出も良く、
キャストも絶妙です。
長塚さんの劇作と演出のスタイルは、
この10年で随分と変わりましたから、
旧作を全く別個のスタイルで演出するという、
野田秀樹さんのような手法を危惧したのですが、
実際にはキャストも女性1人を除いては、
初演と全く同じで、
演出も基本的には初演を踏襲したものでした。
そればかりか、
前回登場した役者さんの演技は、
皆より円熟味を増していて磨きが掛かり、
初演を乗り越えたと感じる部分も多く見られました。
こんな興奮はざらにあることではありません。
キャストは皆素晴らしかったのですが、
今回は特に普段おちゃらけた役の多い池田成志さんが、
その落ち味は活かしながらも、
秘密を抱えた中年男の悲哀を見事に感じさせて、
ラストの感動の中心にいたのには素直に良かったと思いました。
上演はまだ続いていますので、
「これぞ小劇場!」という芝居を体験したい方は、
是非劇場に足をお運び下さい。
その期待は、
まず裏切られることはないと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2016-11-12 17:11
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ホントに面白いです!この間から映画・演劇のblogはほぼ拝読!自分がその場で観たような気分になります説明・感想がリアル感いっぱい!!blog読むだけで大満足 ~動かぬ旅人より~
メトロポリス!はたらくおとこ!も読ませていただきました、で、満足してます。
by お名前(必須) (2016-11-19 12:57)