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薬剤溶出性ステント挿入時の抗血小板剤併用療法持続期間について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ステント挿入後の抗血小板剤の併用.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
冠動脈疾患の治療時の抗血小板療法の継続期間についての論文です。

心臓の筋肉を栄養する血管の枝が、
閉塞したり高度に狭窄した場合に、
カテーテルにより閉塞や狭窄した血管の血流を、
再開するための治療が行われます。

そこで重要な役割をしているのが、
ステントという金属の管で、
閉塞や狭窄した部位をまずバルーンで広げた上で、
この管を挿入してその部分の血流を確保するのです。

ステントはそれ自体がつぶれたりすることはないのですが、
身体にとっては異物なので、
その部位の血管の内側の細胞が増殖して狭窄したり、
そこに血栓などが形成されてステントの部位が閉塞することがあります。
こうした血栓形成の予防のために、
ステント挿入後は一定期間、
2種類の抗血小板剤という薬が使用されます。

ただ、問題はその継続期間です。

ステント挿入部位の閉塞は、
挿入からある程度の時間が経てば少なくなります。
特に薬剤溶出性ステントと言って、
細胞増殖を抑えるような薬が染み出すような工夫がされた製品では、
細胞の増殖による狭窄はかなり減少しています。

その一方で糖尿病は血栓症のリスクを増加させることが知られていて、
糖尿病の患者さんではそうでない患者さんより、
抗血小板剤の併用期間を長くする必要があるのではないか、
という意見がありますが、
実際にはそうした検証はあまりされていません。

抗血小板剤を併用することは、
単剤で使用するよりも血栓の予防効果を高めますが、
その一方で出血などの合併症のリスクも高めます。
従って血栓症のリスクがあるからと言って、
使用期間を長く取ればそれだけ患者さんのためになるとも言えないのです。

今回の研究は、
これまでの6種類の介入試験のデータをまとめて解析することで、
薬剤溶出性ステント挿入後、
2種類の抗血小板剤の併用を、
半年間継続した場合と1年継続した場合との間で、
その有効性と安全性の違いを検証しています。

その結果、確かに糖尿病があると、
ステント挿入後の血栓症や閉塞のリスクは増えるのですが、
糖尿病のあるなしに関わらず、
半年の抗血小板剤併用使用期間を1年に延長しても、
その間の心血管疾患のリスクは増加せず、
その間の出血系の合併症は増加しました。

従って、今回の検証においては、
ステント挿入後の2種類の抗血小板剤の併用期間は、
半年を超える必然性は高いとは言えないようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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