アントニーノ・シラグーザ テノール・リサイタル(2016年10月) [コロラトゥーラ]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
人気者シラグーザの、
多分2013年以来となるリサイタルが、
紀尾井ホールで行われました。
アントニーノ・シラグーザは、
イタリアの軽い声の高音域を得意とするテノールで、
イタリアはオペラの母国の1つですが、
現在ではテノールの名歌手と言える現役歌手は、
それほど多くはないので、
その中では抜群の美声と技術とを兼ね備え、
誰でも一度その生の歌い姿に接すれば、
何よりもその暖かい人柄の魅力に虜になる、
本当に貴重な存在です。
ご覧のようなスキンヘッドで背も高くはありませんが、
その澄み切った歌声は、
1音でも聞けば特別だということが分かります。
彼は1998年以降何度も来日し、
日本でもその歌声を聴かせてくれています。
僕が聴いた中で最高に良かったのは、
2009年の新国立劇場での、
ロッシーニの「チェネレントラ」の舞台で、
アドリブを交えて自在にコロラトゥーラの技巧を駆使し、
難アリアをアンコールも含めて歌い上げた姿は、
今も目と耳に焼き付いています。
あんな公演は、
もう新国立劇場で実現することはないのだろうな、
と思うと、
切ない気分になりますが、
仕方がありません。
彼はサービス満点でちょっと無理をするタイプなので、
その声の調子には結構ムラがあります。
アジリタの技巧自体は安定しているのですが、
超高音は本当に軽々と出る時もあり、
オヤオヤと思うほど出ない時もあります。
彼の超高音は、
車のギアチェンジのような感じで、
それまでの音階から、
出し方を変える感じなのですが、
そのギアチェンジが鮮やかに決まると、
ちょっとカタルシスのような興奮があります。
ギアチェンジの出来ない時は、
通常のテノールのように、
そのままの出し方で、
完全にファラセットではないのですが、
声帯を絞って音階を上げるような感じになります。
これは正直あまりグッと来ないのです。
2011年以降の日本での舞台は、
体調が明らかに悪いという時もありましたし、
高音に伸びがなく、声も荒れていて、
「ああ、これはもう限界なのかしら」
と思うようなこともありました。
正直2009年以前の舞台のイメージでいると、
裏切られることが多かったのです。
軽い声のテノールに多いことですが、
次第に中音域で声を張り上げるように強く出すことが多くなり、
声が荒れて、
声の軽さもなくなって高音も消えてしまうことがあります。
シラグーザももうそうした時期に達してしまったのかな、
とガッカリする思いもあったのです。
それが今回のリサイタルはかなりの絶好調で、
高音もハイDくらいまでバッチリ前に飛んでいて、
ギアチェンジもしっかり掛かっていました。
アジリタの精度や速さは、
矢張り以前と比べると落ちている感はあるのですが、
披露した「チェネレントラ」のアリアでも、
かつてのワクワクするような高揚感が漲っていました。
後半はちょっと荒れた感じはあったのですが、
何より澄み切った声が戻って来ていて、
ピアニシモからアクートまで、
幅の広い美声を聞かせてくれました。
本人も楽しそうに歌っていたと思いますし、
得意のサービス精神もバッチリで、
ラストは客席も大いに盛り上がりました。
シラグーザ復活を印象付けた一夜で、
非常に堪能しましたし、
ひと時コロラトゥーラの至福に酔う思いがしたのです。
最高でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍予約受付中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後2時以降は石原が担当する予定です。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
人気者シラグーザの、
多分2013年以来となるリサイタルが、
紀尾井ホールで行われました。
アントニーノ・シラグーザは、
イタリアの軽い声の高音域を得意とするテノールで、
イタリアはオペラの母国の1つですが、
現在ではテノールの名歌手と言える現役歌手は、
それほど多くはないので、
その中では抜群の美声と技術とを兼ね備え、
誰でも一度その生の歌い姿に接すれば、
何よりもその暖かい人柄の魅力に虜になる、
本当に貴重な存在です。
ご覧のようなスキンヘッドで背も高くはありませんが、
その澄み切った歌声は、
1音でも聞けば特別だということが分かります。
彼は1998年以降何度も来日し、
日本でもその歌声を聴かせてくれています。
僕が聴いた中で最高に良かったのは、
2009年の新国立劇場での、
ロッシーニの「チェネレントラ」の舞台で、
アドリブを交えて自在にコロラトゥーラの技巧を駆使し、
難アリアをアンコールも含めて歌い上げた姿は、
今も目と耳に焼き付いています。
あんな公演は、
もう新国立劇場で実現することはないのだろうな、
と思うと、
切ない気分になりますが、
仕方がありません。
彼はサービス満点でちょっと無理をするタイプなので、
その声の調子には結構ムラがあります。
アジリタの技巧自体は安定しているのですが、
超高音は本当に軽々と出る時もあり、
オヤオヤと思うほど出ない時もあります。
彼の超高音は、
車のギアチェンジのような感じで、
それまでの音階から、
出し方を変える感じなのですが、
そのギアチェンジが鮮やかに決まると、
ちょっとカタルシスのような興奮があります。
ギアチェンジの出来ない時は、
通常のテノールのように、
そのままの出し方で、
完全にファラセットではないのですが、
声帯を絞って音階を上げるような感じになります。
これは正直あまりグッと来ないのです。
2011年以降の日本での舞台は、
体調が明らかに悪いという時もありましたし、
高音に伸びがなく、声も荒れていて、
「ああ、これはもう限界なのかしら」
と思うようなこともありました。
正直2009年以前の舞台のイメージでいると、
裏切られることが多かったのです。
軽い声のテノールに多いことですが、
次第に中音域で声を張り上げるように強く出すことが多くなり、
声が荒れて、
声の軽さもなくなって高音も消えてしまうことがあります。
シラグーザももうそうした時期に達してしまったのかな、
とガッカリする思いもあったのです。
それが今回のリサイタルはかなりの絶好調で、
高音もハイDくらいまでバッチリ前に飛んでいて、
ギアチェンジもしっかり掛かっていました。
アジリタの精度や速さは、
矢張り以前と比べると落ちている感はあるのですが、
披露した「チェネレントラ」のアリアでも、
かつてのワクワクするような高揚感が漲っていました。
後半はちょっと荒れた感じはあったのですが、
何より澄み切った声が戻って来ていて、
ピアニシモからアクートまで、
幅の広い美声を聞かせてくれました。
本人も楽しそうに歌っていたと思いますし、
得意のサービス精神もバッチリで、
ラストは客席も大いに盛り上がりました。
シラグーザ復活を印象付けた一夜で、
非常に堪能しましたし、
ひと時コロラトゥーラの至福に酔う思いがしたのです。
最高でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍予約受付中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2016-10-15 07:49
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コメント(2)
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毎日興味深く、拝見しております。いつもエビデンスのある論文を紹介していただき、目から鱗の落ちる思いをしています。
私もシラグーザのファンで、今回も聞きにいきました。確かにアジリタの正確さはやや怪しかったものの、あの力強いハイCには圧倒されました。あのチャーミングな人柄とともに、貴重なテノール歌手だと思います。
びわ湖ホールで、ドンパスクァーレにも出演するというので日帰りで観てきます。また素敵な記事を楽しみにしています。
by 松原百合子 (2016-10-16 17:13)
松原さんへ
コメントありがとうございます。
ドン・バスクァーレは行けません。
とても羨ましいです。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2016-10-16 19:21)