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小児喘息に対する長期作用型β2刺激剤の安全生(2016年VESTRI試験結果) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
LABAと吸入ステロイドの小児併用療法.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
小児の喘息治療についての論文です。

β2刺激剤は喘息治療において、
議論になることの多い薬です。

非常に強力な気管支拡張剤として、
発作時には力強い武器になります。
その急性発作時の治療の効果と意義については、
否定する意見はありません。

しかし、吸入すればすぐ呼吸が楽になるので、
患者さんはどうしてもその吸入に頼って、
使いすぎるようになります。
その過剰使用は心臓に負担を掛け、
喘息に関連する死亡のリスクを高めることが知られています。

その後長期作用型のβ2刺激剤が開発されました。
短期作用型の吸入薬と比較すると、
気管支への作用により選択性が高く、
安定した気管支拡張作用が持続するので、
短期作用型の吸入薬より、
生命予後を含めた安全生は改善すると考えられました。

ところが…

2008年にアメリカFDAの主導で行われたメタ解析では
成人喘息においてこの長期作用型のβ2刺激剤の使用者は、
非使用者と比較して、
喘息に関連する死亡や入院、人工呼吸器の使用などが、
有意に多いという結果が得られました。

2010年にもう1つ同様のメタ解析の結果が報告され、
長期作用型のβ2刺激剤の安全生についての懸念は高まることになりました。

ただ、問題のあるとされたデータは、
これまでのデータの寄せ集めで単独のものではなかったので、
AUSTRI試験と呼ばれる大規模な介入試験が行われ、
その結果が2016年5月のNew England…誌に掲載されました。

その結果は以前記事にしています。

フルチカゾンという吸入ステロイドの単独と、
それに長期作用型β2刺激剤であるサルメテロールを上乗せした場合の、
比較を行ったところ、
有害事象には有意な差はなく、
重篤な喘息の急性増悪のリスクは、
サルメテロールの上乗せによって有意に低下していました。
(使用している合剤はアドエアのことです)

ただ、これは成人のデータなので、
小児喘息においても同様のことが成り立つかどうかは定かでありません。

そこで今回の研究では、
小児喘息においても同様のことが成り立つかどうかを検証しています。

対象となっているのは、
過去1年間に急性増悪の既往のある、
4歳から11歳の小児喘息患者トータル6208例で、
本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分け、
一方は吸入ステロイドのフルチカゾンを吸入し、
もう一方はフルチカゾンに長期作用型β2刺激剤のサルメテロールを上乗せして、
26週間の経過観察を行なっています。

病状経過により、
フルチカゾンの用量は、
100μgと250μgが振り分けられています。

その結果…

フルチカゾンの単独でも、
そこにサルメテロールを上乗せしても、
お子さんの喘息の転機には、
死亡、入院、人工呼吸器使用のトータルで、
有意な差は認められませんでした。
(非劣性を確認)

この研究は病状の変動に関わらず、
吸入薬は振り分け後は固定されていて、
重篤な発作を起こしたような事例は外されているので、
全てのお子さんに対して、
サルメテロールの上乗せが安全であるとは言い切れません。

実際に別個の上乗せ試験においても、
予後の悪化は認められていない一方で、
成人喘息のような予後の改善も確認はされていません。

従って、
小児喘息においてもフルチカゾンとサルメテロールの併用は、
一定の安全生が確認されたと言って良いのですが、
成人喘息と比較して、
長期作用型β2刺激剤の継続使用は、
より慎重に考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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