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血圧の変動と予後との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも、
いつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
血圧の変動と予後.jpg
今月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
血圧の変動と予後との関連についての論文です。

今多くの方が血圧を自分で測定していると思います。

健診などで血圧が高めであれば、
まずは自動血圧計で血圧を測定してみて、
体重の管理や食生活の改善などの生活改善を行い、
それでも高値であれば、
降圧剤による治療を検討する、
というのが通常のプロセスですし、
スポーツクラブやジムや健康教室、
薬局などにも血圧計があって、
気軽に測定することが出来ます。

一旦降圧剤による治療を開始すれば、
それがプレッシャーになって却って…
というような方を除けば、
自己測定も行なうことが多いと思います。

さて、血圧測定が健康の上で、
非常に重要な指標の1つであることは、
間違いがありません。

ただ、血圧の数値が、たとえば肝機能の血液の数値と同じように、
安定しているかと言うとそうではなく、
いつも血圧で受診をされている患者さんからは、
毎日測っても血圧が変動する、とか、
同じ日でも測る度に血圧が変わる、
というような話はよく聞きます。

確かに血圧の測定値は安定した数値ではありません。

血圧計が普及したような時期には、
測定のやり方により誤差が出るという考え方や、
血圧計によってもその精度にかなり差がある、
という考え方がありました。

その一方で血圧の変動が大きい人は、
同じ高血圧でも重篤な病気になり易いのではないか、
という見解も古くからありました。

臨床的に患者さんを診ていて感じることは、
特に動脈硬化が進行して腎機能も低下しているような方では、
朝は200を超えるような血圧であったのに、
ちょっと立っただけでそれが90くらいに急降下する、
というような大きな変動を起こすケースが、
しばしばあるということです。

そうした方は確かに脳卒中や心筋梗塞も起こし易く、
降圧剤による治療も困難であることは間違いがありません。

こうしたことから、
血圧の変動の大きい人は、
それだけ心血管疾患などの予後も悪いのではないか、
という推測は可能なのですが、
それを実証することはなかなか困難です。

血圧の変動というものを、
どのように定義するのかがまず難問です。

日本では24時間血圧計をお好きな先生がいて、
24時間血圧から変動幅を設定することも可能なのですが、
同じ条件で多数例を検査することは難しく、
また24時間血圧計の血圧値と、
通常の方法による血圧値が、
本当に同一であると言えるのか、
という問題もあり、
この結果のみをもって一般化することは困難だと思います。

比較的簡単に検証可能な方法としては、
外来に通院されている患者さんの外来での血圧値を、
長期間で平均してその変動を見る、というやり方があります。

それ以外に救急病棟に入院しているような患者さんでは、
24時間の血圧は常にモニターされているので、
その短期間の変動幅と病気の予後を見る、
というような方法は可能ですし、論文にもなっています。

更には患者さんが自動血圧計で自己測定した血圧値を、
記録してその変動を見る、というような臨床試験も、
行なわれています。

今回の論文においては、
これまでに行なわれた主な血圧変動の試験を、
救急病棟などの短期のものと、
自己測定による中期のもの、
そして外来血圧による長期のものに分類し、
それをまとめて解析することにより、
血糖の変動と心血管疾患との関連について、
システマティックレビューとメタ解析という手法により、
検証を行なっています。

実際には血圧変動を見るだけの目的で、
厳密に行われたような臨床試験は殆どなく、
後から血圧のデータを解析したようなものが、
その殆どなのです。

41の論文のデータを解析した結果として、
長期の外来血圧から得られたデータをまとめてみると、
血圧変動が大きい場合の総死亡のリスクは、
最大で1.15倍(1.09から1.22)増加し、
心血管疾患による死亡のリスクは1.18倍(1.09から1.28)、
心血管疾患の発症リスクは1.18倍(1.07から1.30)、
虚血性心疾患のリスクは1.10倍(1.04から1.16)、
脳卒中のリスクは1.15倍(1.04から1.27)、
それぞれ有意に増加していました。

一方で短期及び中期の血圧変動についても、
日中の収縮期血圧の変動は総死亡のリスクと相関をしていました。

実際にどのくらいの血圧変動にリスクがあるかと言うと、
標準偏差(SD)が10程度であれば変動は少なく、
15を超えているとやや変動が大きい、
というくらいの理解で良いようです。
ただ、これは研究によってかなり変動幅の定義には差があります。

収縮期血圧自体にはその上昇と共に、
心血管疾患のリスクが増加する訳ですが、
その血圧値には関わりなく、
変動幅が大きいこともまた、
心血管疾患や死亡の独立したリスクになり、
血圧を測定する場合には、
長期的なそうした変動にも、
より心を配る必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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