スマートフォン視力障害とそのメカニズム [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
これは先月のthe New England Journal of Medicien誌のレターですが、
最新のスマートフォンによる、
一時的な視力障害についての報告です。
小ネタですが、
ちょっと面白いのでご紹介します。
片方の目が急に全く見えなくなり、
またしばらくして元に戻る、
というような症状から、
どのような原因が想定されるでしょうか?
通常病気としては、
視神経の血管が一時的に閉塞し、
それがまた開通したような場合が考えられます。
しかし、実はそうした器質的な疾患ではなしに、
スマートフォンの使用との関連で、
同様の症状が出現したという事例が報告されています。
上記のレターに紹介されている1例目の事例は、
22歳の右利きの女性で、
夜ベッドに横になっている時に限って、
右目が一時的に見えなくなる、
という症状で眼科のクリニックを受診しています。
そこで眼科的な精査が行われましたが、
特に異常は認められませんでした。
詳細な聞き取りの結果、
右目の見えなくなるという症状は、
寝る前に片目でスマートフォンを、
しばらく見てそれを消した時に、
起こっていることが確認されました。
彼女は左を下にした姿勢で寝ていて、
左目は枕に隠れた状態のまま、
電気を消した部屋の中で、
右目だけでスマートフォンを見ていたのです。
スマートフォンを消した瞬間、
右目が殆ど見えなくなり、
物の輪郭さえ分からない状態となりました。
彼女はいつもそのまま寝てしまったため、
症状の持続期間は明確ではありません。
翌日起きた時には、
症状は消失していました。
そこでスマートフォンで片目だけに光刺激を与えたことが、
この一時的な視力障害の原因ではないかと考えて、
同じ状況で両目でスマートフォンを見て、
それから消した場合と、
右目と左目と入れ替えて、
同じことをした場合を比較しました。
すると、
両目でスマートフォンを見ると、
視力障害は生じず、
左目と右目を入れ替えると、
今度は左目の視力障害が生じました。
紹介されている2例目の事例は、
40歳の女性で、
朝散歩をしている時に、
15分くらいの右目の視力障害が生じていました。
彼女は朝の散歩に出掛ける前に、
時間や天気を確認するために、
夜明け前にスマートフォンを見る習慣があり、
その時に左を下にして寝ていたため、
右目のみでスマートフォンを見ていました。
そのために、
外に散歩に出た時に、
右目の視力障害が一時的に生じていたのです。
それでは、
何故このような症状が出現するのでしょうか?
人間の目は暗い場所では、
暗順応と言って暗い環境に適応し、
明るい場所では明順応と言って、
明るい環境に適応する能力があります。
しかし、暗い環境に目が慣れた状態で、
片側の目のみに強い光が照射されると、
その目が再び暗い環境に適応するまでに、
反対側と比べて数分以上の時間差が生じます。
この時に、
一時的に片側の目の視力が、
ほぼない状態が生じるのです。
これまであまりこうした事例が問題にならなかったのは、
現在のスマートフォンの画面の光が、
従来とは比較にならないような、
強い刺激を目に与えるためであるようです。
上記報告の2例目の患者さんは、
一過性脳虚血発作が疑われ、
アスピリンなどの投薬が行われ、
MRIなどの不要な検査も沢山施行されました。
幾つかの偶然が重ならないと、
生じない症状ではありますが、
こうしたことがあるという知識だけは、
一応持っておいて損はないように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
これは先月のthe New England Journal of Medicien誌のレターですが、
最新のスマートフォンによる、
一時的な視力障害についての報告です。
小ネタですが、
ちょっと面白いのでご紹介します。
片方の目が急に全く見えなくなり、
またしばらくして元に戻る、
というような症状から、
どのような原因が想定されるでしょうか?
通常病気としては、
視神経の血管が一時的に閉塞し、
それがまた開通したような場合が考えられます。
しかし、実はそうした器質的な疾患ではなしに、
スマートフォンの使用との関連で、
同様の症状が出現したという事例が報告されています。
上記のレターに紹介されている1例目の事例は、
22歳の右利きの女性で、
夜ベッドに横になっている時に限って、
右目が一時的に見えなくなる、
という症状で眼科のクリニックを受診しています。
そこで眼科的な精査が行われましたが、
特に異常は認められませんでした。
詳細な聞き取りの結果、
右目の見えなくなるという症状は、
寝る前に片目でスマートフォンを、
しばらく見てそれを消した時に、
起こっていることが確認されました。
彼女は左を下にした姿勢で寝ていて、
左目は枕に隠れた状態のまま、
電気を消した部屋の中で、
右目だけでスマートフォンを見ていたのです。
スマートフォンを消した瞬間、
右目が殆ど見えなくなり、
物の輪郭さえ分からない状態となりました。
彼女はいつもそのまま寝てしまったため、
症状の持続期間は明確ではありません。
翌日起きた時には、
症状は消失していました。
そこでスマートフォンで片目だけに光刺激を与えたことが、
この一時的な視力障害の原因ではないかと考えて、
同じ状況で両目でスマートフォンを見て、
それから消した場合と、
右目と左目と入れ替えて、
同じことをした場合を比較しました。
すると、
両目でスマートフォンを見ると、
視力障害は生じず、
左目と右目を入れ替えると、
今度は左目の視力障害が生じました。
紹介されている2例目の事例は、
40歳の女性で、
朝散歩をしている時に、
15分くらいの右目の視力障害が生じていました。
彼女は朝の散歩に出掛ける前に、
時間や天気を確認するために、
夜明け前にスマートフォンを見る習慣があり、
その時に左を下にして寝ていたため、
右目のみでスマートフォンを見ていました。
そのために、
外に散歩に出た時に、
右目の視力障害が一時的に生じていたのです。
それでは、
何故このような症状が出現するのでしょうか?
人間の目は暗い場所では、
暗順応と言って暗い環境に適応し、
明るい場所では明順応と言って、
明るい環境に適応する能力があります。
しかし、暗い環境に目が慣れた状態で、
片側の目のみに強い光が照射されると、
その目が再び暗い環境に適応するまでに、
反対側と比べて数分以上の時間差が生じます。
この時に、
一時的に片側の目の視力が、
ほぼない状態が生じるのです。
これまであまりこうした事例が問題にならなかったのは、
現在のスマートフォンの画面の光が、
従来とは比較にならないような、
強い刺激を目に与えるためであるようです。
上記報告の2例目の患者さんは、
一過性脳虚血発作が疑われ、
アスピリンなどの投薬が行われ、
MRIなどの不要な検査も沢山施行されました。
幾つかの偶然が重ならないと、
生じない症状ではありますが、
こうしたことがあるという知識だけは、
一応持っておいて損はないように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2016-07-05 08:34
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