5年間のスタチン治療のその後の影響について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のCirculation誌に掲載された、
5年間のスタチンの治療が、
その後の20年間の患者さんの予後に、
与える影響についての論文です。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の高値が、
心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の大きなリスクであり、
そのリスクの高い方に限定して治療を行えば、
スタチンというコレステロール降下剤により、
心筋梗塞などの予防効果のあることは、
多くの精度の高い臨床試験で実証された事実です。
ただ、実際の治療効果は、
概ね5年から10年程度の期間で検討されていて、
それを超える長期間の患者さんの予後については、
そのデータはまだ不足しています。
今回の研究はスコットランドにおいて、
45から64歳で心筋梗塞の既往がなく、
血液のLDLコレステロールの数値が平均で190mg/dL程度の、
トータル6595名の男性に対して、
くじ引きで2つの群に分け、
一方はプラバスタチン(商品名メバロチンなど)という、
スタチンを1日40ミリグラム使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
平均で4.9年の経過観察を行なったデータが元です。
その試験が終了後、
15年を超える経過観察を行い、
結果として治療期間を含め、
20年を超える経過観察を行われています。
これは5年間は治療群はプラバスタチンが使用されていますが、
その後は使用が継続されているケースもあり、
そうでないケースも混在しています。
その結果…
20年間を超える観察において、
5年間のプラバスタチンによる治療は、
総死亡のリスクを13%、
心血管疾患による死亡のリスクを21%、
それぞれ有意に低下させていました。
一方で癌による死亡リスクや、
心血管疾患以外による死亡リスクについては、
両群で有意な差はありませんでした。
観察期間の累積の冠動脈疾患による入院は18%、
心筋梗塞による入院は24%、
心不全による入院は35%、
こちらもプラバスタチン群で有意に低下していました。
つまり、
スタチンの治療を5年間行なった効果は、
20年に渡り心血管疾患による予後の改善に寄与する、
ということになります。
こうしたデータは実際には大規模なものは殆ど存在していないので、
非常に貴重なものだと思います。
スタチンの治療が心血管疾患の予防に有益であることは、
ほぼ間違いのない事実ですが、
問題はこの治療を一生続けるべきなのか、
それとも一定期間の治療の後に、
中止しても問題のないものなのか、
と言う点にあると思います。
今回のデータなどを見る限り、
最も必要性の高い時期に、
5から10年を目安に治療を行ない、
その間に病気の発症が認められなければ、
中止して様子を見るのも、
1つの考え方であるように思います。
病気を起こした場合の再発予防としては、
原則期限は決めずに継続の方針で良いと思いますが、
まだ病気を起こしていない場合の、
いわゆる一次予防としては、
どの程度の期間、どのタイミングで治療を行うことが、
最も効率的であるのかの検証が、
もっと行われるべきではないでしょうか。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のCirculation誌に掲載された、
5年間のスタチンの治療が、
その後の20年間の患者さんの予後に、
与える影響についての論文です。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の高値が、
心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の大きなリスクであり、
そのリスクの高い方に限定して治療を行えば、
スタチンというコレステロール降下剤により、
心筋梗塞などの予防効果のあることは、
多くの精度の高い臨床試験で実証された事実です。
ただ、実際の治療効果は、
概ね5年から10年程度の期間で検討されていて、
それを超える長期間の患者さんの予後については、
そのデータはまだ不足しています。
今回の研究はスコットランドにおいて、
45から64歳で心筋梗塞の既往がなく、
血液のLDLコレステロールの数値が平均で190mg/dL程度の、
トータル6595名の男性に対して、
くじ引きで2つの群に分け、
一方はプラバスタチン(商品名メバロチンなど)という、
スタチンを1日40ミリグラム使用し、
もう一方は偽薬を使用して、
平均で4.9年の経過観察を行なったデータが元です。
その試験が終了後、
15年を超える経過観察を行い、
結果として治療期間を含め、
20年を超える経過観察を行われています。
これは5年間は治療群はプラバスタチンが使用されていますが、
その後は使用が継続されているケースもあり、
そうでないケースも混在しています。
その結果…
20年間を超える観察において、
5年間のプラバスタチンによる治療は、
総死亡のリスクを13%、
心血管疾患による死亡のリスクを21%、
それぞれ有意に低下させていました。
一方で癌による死亡リスクや、
心血管疾患以外による死亡リスクについては、
両群で有意な差はありませんでした。
観察期間の累積の冠動脈疾患による入院は18%、
心筋梗塞による入院は24%、
心不全による入院は35%、
こちらもプラバスタチン群で有意に低下していました。
つまり、
スタチンの治療を5年間行なった効果は、
20年に渡り心血管疾患による予後の改善に寄与する、
ということになります。
こうしたデータは実際には大規模なものは殆ど存在していないので、
非常に貴重なものだと思います。
スタチンの治療が心血管疾患の予防に有益であることは、
ほぼ間違いのない事実ですが、
問題はこの治療を一生続けるべきなのか、
それとも一定期間の治療の後に、
中止しても問題のないものなのか、
と言う点にあると思います。
今回のデータなどを見る限り、
最も必要性の高い時期に、
5から10年を目安に治療を行ない、
その間に病気の発症が認められなければ、
中止して様子を見るのも、
1つの考え方であるように思います。
病気を起こした場合の再発予防としては、
原則期限は決めずに継続の方針で良いと思いますが、
まだ病気を起こしていない場合の、
いわゆる一次予防としては、
どの程度の期間、どのタイミングで治療を行うことが、
最も効率的であるのかの検証が、
もっと行われるべきではないでしょうか。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2016-04-19 08:22
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・心血管疾患による死亡のリスクを21%低下、
・心筋梗塞による入院は24%低下、
といったデータは、%だけでなく、
何名中何名と何名中何名といった数値を示さないと
不安をあおるだけだと思います。
極端な話をしますと、
2000名を1000名ずつ2群に分けて調査した結果、
心血管疾患による死亡者数は、2名と1名であったとします。
これで、薬の効果により死亡リスクが50%低下といわれたら
いかが思われるでしょうか。
by 永合 達生 (2016-10-23 17:38)
もう2点気づいたことがあります。
第1点:
LDLコレステロールの数値が平均で190mg/dL程度ということは、FH(家族性高コレステロール血症)の人が相当含まれている可能性が高いと考えられます。
それをもって『LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の高値が、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の大きなリスクであり、』と一般論に展開するのは科学的に無理があると考えます。
第2点:
動脈硬化を進める強い要因である喫煙者が含まれていると記載されていますが、スタチングループとプラセボグループとで何人ずつに分かれたのかの説明がなされていないようです。
これでは、科学的に分析されているとはいえないと考えます。
動脈硬化の要因として、
FH、喫煙、高血糖、腎疾患、高中性脂肪、内臓肥満、
と考えられるている現在、FHの人を除くと、LDLコレステロールが高いことを第一要因とする科学的根拠があるのでしょうか。
by 永合 達生 (2016-11-19 21:35)