SSブログ

突然の心停止は予測出来るのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻った後、
レセプト作業をする予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
心臓突然死の予測.jpg
昨年のAnnals of Internal Medicine誌に掲載された、
突然の心停止が予測出来るのかを検証した論文です。

高齢者でなくても、
突然死というのは少なからず起こることがあります。

若年から中年層での突然死の多くは、
突然心臓が停止することにより起こります。

こうした突然死の多くは、
日常生活の中で、
また睡眠中に、
運動をしている時やその後など、
時と所を選ばずに起こるので、
その原因は多くの場合不明で、
対処は遅れることが多く、
アメリカのデータでは、
その救命率は7%にとどまっているそうです。

原因は推測でしかない場合が多いのですが、
生まれつき血管に弱い部分があって、
そこが裂けて心臓の血管が詰まったり、
何等かの理由により、
血液の中に血栓が出来て、
それが心臓の血管に詰まったり、
心臓の筋肉に病気があって、
重症の不整脈が起こることなどが、
可能性としては想定されています。

それでは、この突然の心停止を、
予測することは出来ないのでしょうか?

もし何等かの予兆のようなものが、
心停止の前の存在しているのだとすれば、
それをチェックすることにより、
突然の心停止を予測して予防することも、
不可能ではないかも知れません。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
35歳から65歳の年齢で突然の心停止を来した、
839名の患者さんの病歴を検証し、
その発作の前4週間以内に、
何等かの兆候と思われるような症状があったかどうかと、
もしあればそれにどのように対応したのかを、
比較検証しています。
登録された患者さんの平均年齢は52.6歳で、
75%が男性でした。

その結果…

発作の前4週間以内に、
何等かの症状のあった患者さんは、
全体の51%に当たる430名で、
症状に男女差は認められませんでした。
症状として多かったのは、胸部痛で、
症状のあった患者さんの46.3%に認められ、
続いて呼吸困難、動悸や意識消失の順でした。

こうした症状の93%は、
その後の心停止の24時間以内には、
一旦改善していました。

多くの症状のある患者さんが、
その症状を放置していて、
救急の電話を利用したのは、
19%に過ぎませんでした。
そして、症状のあった時点で救急コールをした患者さんの生存率が、
32.1%であったのに対して、
症状を放置した患者さんの生存率は6.0%で明確な差が認められました。

つまり、
突然の心停止が起こる前には、
胸部痛のような症状が起こることが、
ほぼ半数には認められていて、
それが一旦改善した後で発作が起こるので、
症状の時点でまずは救急受診を行った方が、
発作時の救命率は上がる可能性が高い、
ということになります。

ただ、そうは言っても、
多くの胸部痛の症状は、
放置しても問題のないものなので、
胸部痛があれば常に救急車を呼んだ方がいい、
という方針は、
医療コスト的な面や、
医療の効率性の面では問題があります。

問題はどのような症状の絞り込みを行ない、
どのような患者さんに対して、
どのような検査や対処を行なうべきか、
という指針が作成される必要がある、
ということです。

現状はそうしたものは存在していないので、
個々の事例において、
個別の判断するしかない、
ということになります。

ただ、
今後スマートフォンなどを活用した、
脈拍や血圧などのモニタリングが、
普及するようになると、
症状にそうしたデータを活用しての予測が、
将来的には可能になるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(23)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 23

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0