ルメートル「その女アレックス」とフランス・ミステリーの世界 [ミステリー]
あけましておめでとうございます。
北品川藤クリニックの石原です。
今年もよろしくお願いします。
例年通りで今日から3日まで奈良に出掛ける予定です。
あまりお正月向きの話題ではないのですが、
今日はこちら。
一昨年に最も注目を集めた翻訳ミステリー、
ピエール・ルメートルの「その女アレックス」を、
遅ればせながら読みました。
ルメートルはフランスのミステリー作家で、
これまでに3つの長編ミステリーと、
1つの普通小説が翻訳されています。
長編ミステリーを発表順で言うと、
「悲しみのイレーヌ」、
「死のドレスを花婿に」、
そしてこの「その女アレックス」ということになります。
このうち、
「悲しみのイレーヌ」の続編が「その女アレックス」で、
この2作はシリーズものですが、
「死のドレスを花婿に」は独立したノンシリーズです。
僕は年代順に3作品を読みましたが、
矢張り「その女アレックス」が抜群で、
この作品は警察小説やサスペンスの色々な要素を、
うまく1つにまとめていて、
一見水と油のような要素が、
巧みに結び付いて、
それが意外性となって読む者を魅了するのです。
特にラストの趣向は、
シリーズ物の警察小説の定番のものなのですが、
前半を読んでいる限り、
とてもこんな趣向に結び付くとは思えないので、
ある種のカタルシスがあるのです。
ただ、正直それ以外の2作品は、
標準的なフランス産ミステリーという感じで、
意外性も不発に終わっていると思いますし、
悪趣味で悪乗りの割に、
辻褄が合わないところが多いので、
あまり感心はしませんでした。
週間文春のミステリーのベスト10では、
「その女アレックス」に続いて、
今年は「悲しみのイレーヌ」がベスト1に輝いているのですが、
これは明らかに前年の作品に引きずられた結果で、
アンケート集計形式のベスト10の、
悪いところが出ていると思います。
とても、1位になるような作品ではないからです。
フランスのミステリーは、
かなり昔から欧米のミステリーに、
影響されているようなところがあるのですが、
それでも独特の屈折した感じや、
倒錯的なエロスの描写、
意外にトリッキーな部分などがあって、
僕は昔から大好きな世界です。
黄金時代のトリッキーなステーマンもいいですし、
ダークなノワールのシムノン、
絶望感満載のサスペンスのアルレーやモンテイエ、
トリックや叙述ミステリーとサスペンスを融合させた、
ボアロー&ナルスジャックやジャプリゾ、
コミカルな技巧派エクスブライヤ、
カーを敬愛する新本格派のアルテなど、
多士済々なのです。
そのフランスミステリーの名人の列に加わるには、
まだ何となく未知数の感じもあるのですが、
今後も翻訳紹介の継続をお願いしたいと思います。
これから読まれる方には、
どちらかと言えば「その女アレックス」のみを、
最初から読まれることをお勧めします。
それではそろそろ出掛けます。
今年が皆さんにとって良い年でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今年もよろしくお願いします。
例年通りで今日から3日まで奈良に出掛ける予定です。
あまりお正月向きの話題ではないのですが、
今日はこちら。
一昨年に最も注目を集めた翻訳ミステリー、
ピエール・ルメートルの「その女アレックス」を、
遅ればせながら読みました。
ルメートルはフランスのミステリー作家で、
これまでに3つの長編ミステリーと、
1つの普通小説が翻訳されています。
長編ミステリーを発表順で言うと、
「悲しみのイレーヌ」、
「死のドレスを花婿に」、
そしてこの「その女アレックス」ということになります。
このうち、
「悲しみのイレーヌ」の続編が「その女アレックス」で、
この2作はシリーズものですが、
「死のドレスを花婿に」は独立したノンシリーズです。
僕は年代順に3作品を読みましたが、
矢張り「その女アレックス」が抜群で、
この作品は警察小説やサスペンスの色々な要素を、
うまく1つにまとめていて、
一見水と油のような要素が、
巧みに結び付いて、
それが意外性となって読む者を魅了するのです。
特にラストの趣向は、
シリーズ物の警察小説の定番のものなのですが、
前半を読んでいる限り、
とてもこんな趣向に結び付くとは思えないので、
ある種のカタルシスがあるのです。
ただ、正直それ以外の2作品は、
標準的なフランス産ミステリーという感じで、
意外性も不発に終わっていると思いますし、
悪趣味で悪乗りの割に、
辻褄が合わないところが多いので、
あまり感心はしませんでした。
週間文春のミステリーのベスト10では、
「その女アレックス」に続いて、
今年は「悲しみのイレーヌ」がベスト1に輝いているのですが、
これは明らかに前年の作品に引きずられた結果で、
アンケート集計形式のベスト10の、
悪いところが出ていると思います。
とても、1位になるような作品ではないからです。
フランスのミステリーは、
かなり昔から欧米のミステリーに、
影響されているようなところがあるのですが、
それでも独特の屈折した感じや、
倒錯的なエロスの描写、
意外にトリッキーな部分などがあって、
僕は昔から大好きな世界です。
黄金時代のトリッキーなステーマンもいいですし、
ダークなノワールのシムノン、
絶望感満載のサスペンスのアルレーやモンテイエ、
トリックや叙述ミステリーとサスペンスを融合させた、
ボアロー&ナルスジャックやジャプリゾ、
コミカルな技巧派エクスブライヤ、
カーを敬愛する新本格派のアルテなど、
多士済々なのです。
そのフランスミステリーの名人の列に加わるには、
まだ何となく未知数の感じもあるのですが、
今後も翻訳紹介の継続をお願いしたいと思います。
これから読まれる方には、
どちらかと言えば「その女アレックス」のみを、
最初から読まれることをお勧めします。
それではそろそろ出掛けます。
今年が皆さんにとって良い年でありますように。
石原がお送りしました。
2016-01-01 05:57
nice!(24)
コメント(4)
トラックバック(0)
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
わたしも最近読みました。フランスのミステリ、ポップなのにねとっと人間を描くいているのが楽しいです。
RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2016-01-01 08:22)
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
by ちょんまげ侍金四郎 (2016-01-02 16:07)
あけましておめでとうございやす!
昨年はずいぶんたくさんの舞台を鑑賞されたのでやすね!
今年もいっぱい楽しまれてくださいでやす\(◎o◎)/
by ぼんぼちぼちぼち (2016-01-03 19:15)
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願い致します(^^)
by (。・_・。)2k (2016-01-05 12:31)